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何でも屋は女神に頼まれました  作者: 神代零
1章 始まりの街にて
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第1話 始まりの街

 


「痛っ!!」


 哲也は尻から落ちてしまい、痛みに震える。落ちた高さはそれ程に高くはなかったから、大きな怪我にはならなかった。


「あの女、覚えていろよ…………む、横に何か置いてあるな?」


 周りを見てみたら、哲也の隣に何かが置いてあるのがわかった。その中から1枚の紙を取り出した。紙にはーーーー



 器用貧乏の哲也さん。



 その一文だけで破りそうになったが、グッと我慢をして続きを読んでいく。



 無事に異世界へ着いたなら、隣には初期装備とお金と身分証明書カードに、補足説明の紙がある筈です。



 ん、補足説明の紙はこれか?


 手に持っている紙が補足説明を書かれた紙のようだ。裏面にも続きが書いており、それを読んでいく。



 この世界の身分証明書カードを作って置きました。街に入る時に必要なので、決して無くさないように!

 その身分証明書カードには自分のステータスも保存されています。ちなみに、ステータスは名前、レベル、職業、スキル、スキルポイントが出ます。



 ほぅほぅ、このカードか。俺のステータスはどうだろう…………は? スキルが出ない? 職業には『何でも屋』と書いてあるんだが!?


 もう一回、補足説明を読んでみるが、ステータスに出るのは五つあるのに、何故かスキル欄には一つもなかった。

 更に、職業も『何でも屋』と出ていて、何をする職業かわからない。説明はないのかと職業の部分を押してみたら、文字が変わった。説明が出たようで、読んでみた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーー


『何でも屋』


 全職業のスキルを使える職業である。


 ーーーーーーーーーーーーーーーー



 マジか!? チートじゃん…………む、小さな文字があるな。その小さな文字には何がーーーー



 スキルを登録したい場合は、数回同じスキルを身に受けるか、何十回も見る必要がある。そして、スキル取得欄に登録されるようになる。

 スキル取得欄から新たなスキルを得る時、他の職業よりも2倍のスキルポイントが必要になる。




「…………無理だろ!? スキルを取得する条件が厳しくないか!!」


 スキルポイントを押してみるが、その数字は0、更にスキル取得欄はーー何も無かった。


「どうやって生きていけと言うんだ!? スキル無しでショートソードを使って戦えと言うのか!?」


 哲也は剣の心得は全くない。ストーカー撃退のために、喧嘩が起きた時にバットを使うこともあるが、殆どは拳で戦う。

 ただ、ここは魔物がいて、さっき見たドラゴンまでもいる。なのに、素人がスキル無しの状態で化け物と戦うのは厳しすぎる。

 ショートソードを振ってみると、身体能力は地球にいたよりは少しだけ強化されているのがわかる。


 ここら辺にいる魔物がどれぐらいの強さかわからんが、すぐ街に向かった方が良いな。


 補足説明から知り得る情報は頭の中へ保存し、置いてあった胸当てを着け、すぐ街が見える方向へ向かう。勿論、周りに魔物がいないか確認しながらだ。少しだけ早歩きで進んでいきーーーー









「ふぅ、着いたか」


 ここまで魔物に出会わなかったのはラッキーだった。1体ぐらいは会うと覚悟していたが、ここの近くには魔物がいなかったようで助かった。

 街の中へ入る前に、門番に身分証明書を見せて、中へ入らせて貰った。


 街の中は壁に守られており、平和な様子が見取れた。門番にギルドはあるか聞いてみたら、街の中心にあると言う。あと、この街は初心者が冒険者になろうと集まっており、ルアード街と言う名らしい。

 まず、ギルドでお金を稼がないと、魔王以前に生きていくことが出来ない。今は金に余裕があるといえ、いつかは無くなるのだから宿と食事の死活問題である。

 早速、教えてもらったギルドへ向かう。


 なんか、こっちの方を見ているな。この服装が珍しいかもしれんな。


 今の哲也はワイシャツ、ジーパンの姿で異世界の服装とはかけ離れている。更に、黒髪に黒眼も珍しいかもしれない。周りを見ても、自分と同じような黒髪に黒眼の人はいなかった。

 ギルドで登録をして、服を買っておかないとなーと考えながら歩いていたら、ピロリィ♪ とカードが鳴ってた。


「なんだ……?」


 カードを取り出して、調べてみたらスキル取得欄が光っていることに気付いた。


「百里眼……? なんで、このスキルが取得可能になってーーッ!?」


 哲也は思い出した。『何でも屋』のスキル取得条件のことを。

 数回は身に受ければ、スキル取得ランに登録される効果がある。つまり、さっきから誰かに『百里眼』のスキルでずっと見られていたことになる。

 服が珍しいとかならいいが、面倒事は勘弁してほしいと思いつつ、さっきより早歩きで歩いていく。






 何も起こらず、ギルドに着いて安堵する哲也。すぐ中に入って、受付を探す。周りから好奇心の視線に晒されているが、無視をして受付へ向かっていく。幾つかある受付の中で、迷うこともなく、美人の受付嬢を選んでいた。


「こんにちは。此方のギルドは初めてですか?」

「あ、はい。冒険者志望ですが、登録はここでいいんですよね?」

「そうです。では、身分証明書カードをお預かりさせても宜しいでしょうか?」


 言われた通りに身分証明書カードを渡すと、受付嬢の側にあった丸い水晶へカードが吸い込まれていく。

 その様子に驚いていると、受付嬢が説明してくれた。


「これは魔導具で、カードの内容を保存したり新しい機能を付け加える事が出来ます」

「へぇ、カードがスマホで新しいアプリをダウンロードしているようなものか……」

「え?」

「あ、なんでもないです」


 うっかりと地球の知識を口にしてしまう。受付嬢から気になる視線を向けてきたが、冒険者の登録が終わってカードが出てきたため、その視線は消えた。


「はい。これで討伐の記録とクエストを受理することが出来るようになりました。ちなみに、クエストを受理出来る条件は色々あり、わかりやすいのは何レベル以上なら受けられるとかです。報酬が高いクエストや難易度が高いクエストを受けたい場合は、自分のレベルを上げるのが一番良いでしょうね」

「成る程」


 よく知っている小説の話では、ランクみたいな階級があったけど、ここの世界はレベルや依頼人が設定した条件でクエストを受理出来るか決まるようだ。


「あ、私は昼間の担当させて頂いているメルと申します」

「僕は哲也と言います」

「テツヤ様ですね。クエストはそこの掲示板にありますので、受けたいクエストがあれば、紙を持って受付に来てください」


 そう言われて、掲示板に向かっていく。そこには大量の紙が貼っており、クエスト紙を見通していく。

 一番簡単そうな採取クエストを取ろうとした時、声を掛けられる。


「それは止めとけ」

「え?」


 後ろから声が聞こえ、振り向いてみると熊みたいな男がいた。その熊みたいな男は哲也が驚いているのをよそに、話を続けていた。


「その薬草は季節によって繁盛するんだが、今の季節ではなかなか見つからないぞ。ほら、隅に取りやすい季節が書いてあるだろう」

「あ、採取しやすい季節は冬、春と書いてありますね」

「そうだ。今は夏だから、採取するのは大変ってわけだ。今の季節なら……」


 熊みたいな男は掲示板を見て、一枚の紙を手に取った。


「これが一番やりやすいだろうな。ここから近い森にあるし、魔物も弱いのしかいないからな」

「そうなんですか。教えて頂きありがとうございます」

「ガハハッ、構わねぇよ。初心者を引っ張っていくのはベテランの役目だからな。もし、わからないことがあったら聞いて来い。俺はバロンと言う」

「あ、はい。俺は哲也と言います」


 自己紹介を終わらせたら、バロンは手を振って自分のパーティへ戻っていった。それを見て感心しながらメルがいる場所に向かう。


「ほぇー、想像していたのと違うなぁ」

「ふふっ、『レックス』のバロン様は初心者に優しいベテランの方なんですよ。テツヤ様はどんな想像していたのかしら?」

「んー、お前には冒険者は相応しくねぇ! と絡まれるとか」

「確かに、そういう輩もいるにはいますが、ここの街ではあまりありませんのでご安心を」

「へぇ、この街は治安が良いんだな」

「はい。領主が優秀で朗らかな方であり、街の治安を維持できるように努めている素晴らしい方です。あ、クエストの紙を持ってきたのですね」


 メルは世間話をそこそこに、仕事に戻った。採取する種類がわからないので、絵が書いてある図鑑を見せて貰った。見せて貰った哲也は陽が落ちる前に終わらせたいと思い、依頼を受理したらすぐにギルドを出た。


 武器はショートソードしかねぇけど、仕方がないか。魔物が出ると聞いたが、どんな魔物がいるんだ? ギルドで聞いておけば良かったか。


 もうギルドを出たので、そのまま門を通って森へ向かった。森はそれ程に広くはないので、迷う心配はないらしい。森の中へ進んで行き…………


「1体だけだったら、戦ってみるか?」


 魔物が1体だけで、強くなさそうだったら戦ってみようと決める。既にクエスト品を入手し終わっており、陽もまだ高いので、適当に魔物を探してみるーーーーと、叫び声が聞こえた。


「何が? …………ゲッ」


 哲也の眼に入ったのは…………






「助けてぇぇぇぇぇ~!!」






 森の中を叫びながら走っていたのは、白いローブを着ていて、金髪ロールをした女性だった。その後ろから5体の魔物が女性を追っていた。その魔物は哲也もよく知っている姿をしていた。


 ゴブリン


 緑色の身体をした人型の魔物。その魔物が5体もいて、哲也はーーーー






 その場から逃げた。






「ちょっ!? なんで、逃げるのですか!? 助けてよぉぉぉぉぉ!!」

「馬鹿言うなッ! 俺は冒険者になったばかりの素人だ!! いきなり5体相手に出来るかよ!!」

「なっ、その腰の剣は飾りですの!!」

「俺は勝てない戦いはしないーーーーむ?」


 森の様子が変わり、木の上につたが見えていた。それを見て、哲也は思いついた。小説通りにゴブリンが馬鹿なら、やりようはある。




「おい! 金髪ロール!! ゴブリンは知能が低いんだったよな!?」

「き、金髪ロール!? 私にはカレル・エージェントと立派な名がありますの!!」

「そんなことはいいから、質問の答えは!?」

「そんなこと!? ッ、ゴブリンは馬鹿ですわッ!!」


 それを聞いた哲也は、手に届く蔦を引っ張って、木と木を伝っていた蔦がピンと伸びていく。哲也はデタラメに走り出して…………




 ブギィ!?





 全てのゴブリンは蔦に引っかかって、倒れた。その隙に1体だけ、首を刺して殺す。


「よし、次はお前もやれ! その姿は魔法使いだよな!?」

「え、えぇ。でも…………」


 カレルは躊躇する様子だったが、やらないとこっちがやられると理解している。

 4体が起き上がったのを見て、また哲也はこの場から逃げ出す。それにカレルもついて行く。ゴブリンは仲間が1人やられた怒りから何も考えずに突っ込んでくるだけ。

 哲也はまた蔦を使って、ゴブリンを転ばせる。カレルは覚悟を決めたように、手に持っていた杖を向けて詠唱をした。




「死神に魅入られよ…………『呪死』!!」




 杖に向けられたゴブリンは、ウッ!と胸を押さえて転がった。そして、動きが緩慢になって…………死んだ。

 哲也はショートソードでゴブリンを始末して、驚愕した表情を浮かべていた。


「ま、まだ倒れているから、そのまま続けてやるわよ!!」

「お、おぅ!」


 変死したゴブリンに驚きで固まっている残った2体は隙だらけだった。少なくとも、剣の素人である哲也でも袈裟斬りで首を刈り取れるぐらいに。カレルも確実に『呪死』で最後のゴブリンの息絶えさせた。


 テツヤの初めてだった魔物討伐は、金髪ロールで白いフードを着た少女と一緒によって達されたのだった。







まだ続きます!

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