魔王と勇者の決着
小柄で、醜く、不潔で、欲求に忠実なクサイ生物。それが、この世界のゴブリンだ。
背丈は人間の子供ていど。緑の皮膚に出来損ないのイモみたいな頭。意外と力持ちで、雄は雌を大切に扱う。猿よりは頭が良いが、やはり畜生。馬鹿は馬鹿である。
この世界には魔法が存在し、魔物もいる。クソ強い勇者がいれば、アホみたいに強い魔王もいる。ゴブリン達は、そんなハチャメチャワールドの底辺を卑しくも逞しく生きていた。
人間と魔物の争いが終末を迎えようとしていた頃の、とある大陸。とある森。さらにさらに、とあるゴブリンの集落。そこに住む一匹のゴブリンを、ド級の災難が襲う。
雌のゴブリン。群で唯一の女だ。
男共は狩りに出ている。彼女は洞穴住居のなかで、彼らの帰りを待っていた。
雌である彼女の役目は、雄の慰安である。種族としての役目がそうなのだ。食べて、抱かれて、子を産む。
今日だって、そうなるはずだった。使い古された武器の手入れをしながら雄の帰りを待ち、帰ってきたら順々に相手をする。優しく、優しく、求められる。気持ちいいことをする。子供を産む。成長した我が子を送りだす。
その繰り返し。何の不満もない。メスである自分に依存するしかない雄達が少しだけ哀れでもあり、それ以上に愛しかった。
さあ、今夜は誰から相手をしよう。やはりボスからだろうか。それとも
世界が、光った。
いきなりだった。
大きな音。爆発したような、そんな感じ。
なんだろう。ニンゲンかな?
小さなこん棒を手に、洞穴の外に出る。
世界は相変わらず光っている。真昼なのに、もっと眩しい。
光が、もっと強くなった。 何かが起きている。
ふと、空を見上げた。
不思議だ。太陽が二つある。
片方の太陽が、さらに眩しくなった。どんどん大きくなる。
大きく、大きく。違う。
こっちにくる。
落ちて。
落