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父2
この日まで俺は父の事ばかり考えていた。 優しかった父。怒った父。そして泣いていた父。父は酒を飲むと「おまえが伊舞を守ってやれ」と泣いた。「オレは伊舞の家族を守ってやれなかった。だから伊舞には幸せになって欲しい…。」と言った父。「父はこうなる事を知っていたのだろうか。」と俺はふと呟く。 「お兄ちゃん大丈夫?」と俺の隣りにいる伊舞に声をかけられ気がついた俺は泣いていた。
俺は父が死んでからは伊舞の前では泣いていない。伊舞に心配をかけたくなかったからだ。俺は涙を拭いて答え伊舞を抱きしめた。「大丈夫だ」と。
そしてついに携帯電話を使う時がきた。