少年時代。なう!!
人は何故 考え続けるのか。
それは、問われ続けているからではないだろうか。例えば、今日の予定は?何を食べる?
そんなことを無意識のうちに考えて、普通ならこうだ。とか、こういうのがカッコ良い、勝っている。などと想い、結局 少数派の勝ち組を気取った一つのステレオタイプへと型がはまる。
ほとんどの人は用意された解答を選ぶことしかできない。
「...」
俺も例外ではなく。
クラスの総意で黙っている。
彼等は俺と馴れ合うつもりはない、何故なら俺は空気が読めず、空気を壊す。
高校生にとって、いや、人間にとって致命傷とも言える欠陥を抱えているからだ。
治す気なんかねぇけど...
しかし、クラスの喧騒というのは腐海の様なもので、息を吸い込むだけで毒されそうになる。
昼休みは案外 長い。
俺は思いきって外へと出ることにした。
目指す場所は保健室。我が聖地だ。
Ⅹ Ⅹ Ⅹ
「おはよーっす」
気だるげな声で、ゆっくりとドアを開ける。
靴を脱いで一歩踏み込んだ保健室は、普段と少し様子が違った。
「ら...ラッキースケベだと?」
目の前には金髪の生徒が居た。
脱色されたであろう髪は、それでも艶を保っており、長く伸びる足に視線を釘付けにされる。
見た目は些か不良のそれに見えるが、化粧は必要以上されていなく、目の下のホクロがエロかった。それにYシャツを半分脱いでいると来た。
正直 辛抱たまらん。
「な、な、な?」
彼女は、俺の存在に気付いた様だ。
しかし、最近はテンプレの様なイベントばかりだな。
「見るなぁぁああああ...!!!!」
「ぐおっ...」
この後はビンタされるんだろうな...とか楽観視していると、アッパーされた。
痛い、マジ痛い。何この子?
「は、早くどっか行け!!
ボコすぞ!」
「も、もう、殴られてます...」
「うぅぅ!」
「痛っ!?わ、かった...行くから!!」
背中や顔を叩きながら、声にならない声で抗議された俺はたまらず保健室を飛び出した。
暴力系のヒロインは最近 人気無いって聞いて居たんだが...まさか、我が校に居るとか...
気が付くと、『生活向上促進部』と書かれた教室の前まで来ていた。
「ん?解導か?久々だな」
声のした方へ振り向くと黒髪をワックスでツンツンにしている少年が立っていた。
俺は彼を知っている...
名前は榎本 涼。
俺と同級生で、確か1組だったと思う。
「よぉ...」
「相変わらずみたいだな」
「お陰様でな」
「入ってくか?アイツ等も居るし」
「いや、止めておく...じゃあな」
それだけ言うと歩き出す。
榎本はそれを悲しそうな目で見るが、顔を何時ものポーカーフェイスに戻すと一言。
「あぁ、また」
榎本は秋風高校の中で唯一 俺と積極的に関わりを持とうとする人間だ。俺と対照的で空気が読める、それに空気を作るのも上手い。
クールで寡黙なのは同じだが、何故かアイツばかりモテる。つまり敵だ。俺達が相容れることはないだろう。マジ、萎えそうだ。
Ⅹ Ⅹ Ⅹ
「で、人生諦めちまったのか?お?」
担任の鬼瓦が憤慨している。
理由は簡単で、俺の生活態度が問題らしい。
「その歳で諦めるなんて終わってんな」
彼を前に俺に残された選択は4つだ。
・謝る。
・戦う。
・逃げる。
・告白、鬼瓦ルートへ。
ーーーおい、鬼瓦ルートってなんだよ。
さすがに、厳しすぎる。アブノーマルにアブノーマルを足すとか俺の思考チャレンジャー過ぎる。
放課後になり夕焼けに染まる校舎。
職員室も例外ではなく、窓から射し込んだ光に俺と鬼瓦が照らされる。
「綺麗ですね」
開かれた窓から冷たい風が入ってくる。
今は冬口だが、これも一つの風あざみ。なのかもしれない。そう思うと陽水さんの曲はただ良いだけではなく、少年に考える問いをくれ、大人になった時に少年時代を思い出させてくれる機会を作る。本当の名曲なのだろう。
冬休みは未だ先で、夏休みはまだまだ先だが、鬼瓦の説教の中 ふとそんなことを考えてしまう。
「あぁ、確かに綺麗だな」
ポツリと鬼瓦が呟いた。
こういうところで共感してくれる辺り、彼も少年の心を忘れない。良い大人なんだろう。
「でも、それとこれとは別だ...
意味はわかるな?解導?
俺はテメェのそういうところが気にくわないんだ!!」
「こ、こ、殺さないで!!」
職員室をスタートにゴールの見えない持久走が今日も始まった。
問い-人は何故、考え続けるのか...
その問いに、俺は未だ満足な解答を持ち合わせてはいない。
だが、それは、テンプレ以外の解答をいつか手に入れることが出来る可能性があるのかも...と、いう希望になるのかもしれない。
鬼瓦に追いかけられながら、そんなことを考えていた。
きっと、こういう所が怒られる原因なのかもしれないなぁ...反省、反省。
大好きな井上 陽水さんの少年時代を少し織り混ぜてます。
解導の少年時代に幸あれ!!
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