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コミュ障★戦記。  作者: 巡理 圍
始まりの章
3/11

動き出す物語。

「ど...どうぞ」


我が身可愛さに土下座を繰り出した俺を見て渡瀬はポカーンと口を開けていた。

そこから推測するに、彼女は俺のことを覚えていない。ならば、俺も堂々と面接をして、適当な理由をつけて不採用にすれば良い。

そう思い、面接を開始した。


「失礼しま~す」


ーーーや、やる気あんのか?コイツ...


人のことどうこう言う資格はないが、如何せん目の前の美少女は緩すぎる。

一応、俺が声を掛けてからソファーに座っているが、それでも、なんか緩い。


「え~と...名前は知ってるし。

もういいや、何故 うちに面接に来たんですか?」


「人に関心が無いって言われるので...

人と関われるバイトをしようかなーって」


俺が淹れてやった珈琲を飲みながら、アホみたいな顔で呟く渡瀬に、若干の怒りが沸いてくる。


窓から外を見れば、静かに町を夕焼けが染めている。その光景にこの世の終わりを連想してしまうが、案外 世界はしぶとく、カスみたいな存在の俺が願っても終幕へは向かわない。


世界の終わりを願うことも、現実逃避も出来ないなら、今ある目の前の現状に立ち向かう以外 選択肢など残っておらず、取り合えず適当に理由をでっち上げて不採用だと伝えようと思った瞬間。


事務所の扉が開けられた。

もの凄い勢いで...


「た、助けて下さい!!!!」


Ⅹ Ⅹ Ⅹ


いきなりの来客の名は知らない...

着ている制服は近所にある名門校のもので、彼自身の見た目もガリ勉っぽいので、秀才君と呼ぶことを心の奥で誓った。


「な、なんか用すか?」


恐る恐る尋ねる俺の顔を見ると、歩み寄って来て一言。


「助けて下さい!!」


「だから、何なんだよ。

秀才君の事情なんて俺知らねぇし...」


「僕の名前は田中 太郎です」


「よく秀才君がお前だってわかったな!」


「エリートですから(キリッ」


重く辛い沈黙が室内を支配する。

太郎もとい、秀才君の登場以来ボーっとしている渡瀬も気にはなるが、今は目の前の男をどう追い返そうかで頭が一杯になっている。


「萎えそうだ...マジ鬱」


「実はですね...」


俺のあからさまな拒絶をものともせずに秀才君が語り出す。空気の読めないことで定評のある俺でさえ驚愕してしまった彼の行動に、この後紡がれる言葉を容易に想像できた。


「ら、ラブレターを貰ってですね!!

どどど、どうすれば良いかなーなんて思っちゃって...相談に来たんですよ!!」


「は?ふざけんなよ。自慢か?あ?

帰れよ。本当にふざけんなよ...苛々するわ~。

久々に本気で人のこと殴りたくなったわ~」


予想外の展開に本気で、激オコスティックファイナリアリティぷんぷんドリームを発動しそうになるが、戦闘力5のゴミ相手に大人げ無いかな~なんて、心の広く、キリストの様に深い愛を持つ俺は思い止まる。

その変わりに、速攻 排除にかかるが...


「わかった、もう帰「解導さん!」


試合を終わらせる為に、心に突き刺さる言葉の豪速球を投げようとした俺に、沈黙を守っていた渡瀬が声を掛ける。もはや、デッドボールだ。


「なんだよ...爆乳女」


「爆乳女って酷くないですか?

あ、それよりですね、これはお仕事ですよ!

この事件 私も協力するんで、それで使えると思ったら採用してください!」


余り喋らないのかと思ってた奴が怒濤の勢いで喋り出すと、精神的に凄いダメージを受ける。

まさに、ヒットを打たれた様な感覚...


「それは良いですね!

事情はわかりかねますけど、困った時はお互い様ですし」


この状況を好機と見たのか、秀才君が渡瀬と結託しようとする。

が、俺もそこまで甘くはない。

秀才君を叩き潰すべく、直球ストレートを投げる。


「うちはボランティアじゃねぇんだよ。

然るべき報酬払えんのか?お?」


学生に此の質問は堪えるだろう。

まず、うちの料金プランを知らない時点で、しり込みしてしまうはずだ。


俺も適当に入った寿司屋が時価だけの時は半泣きになった。勿論、ガリを食いまくって帰ったが...


「無料で迷える学生を助けたってなれば、イメージアップになると思いますけど...最近 ここ評判良くないみたいですし」


「なっ!?」


秀才君と勝負をしている間に、一塁の渡瀬が盗塁していた。ランナー二塁で四番の秀才君を相手にするとなると俺のプレッシャーはうなぎ登りだ。


しかし、俺も此処で試合を捨てる様なことはしない。百戦錬磨の俺だからこそ、焦ってうろ覚えの変化球なんて投げない...ストレートで勝負だ。


唸れ...そして、勝ちをもぎ取れ!!

俺のストレートォォオオオ!!!!


「イメージだけじゃ食えねぇんだよぉおおお」


決まった。


と、思っていた時期が俺にもありました。


「前金でこれだけ...残りは成功報酬として、この倍出します」


渡されたのは一枚の御札。

ハッ...千円ごときで俺が動くとでも?成功さしたところで三千円なんて...


小バカにした様に睨み付けた札には、一人の男が勇ましい佇まいで鎮座していた。


そう、福沢 諭吉だ。


「ゆ、諭吉先輩だと!?」


「受けていただけますか?」


「受けます。よろしくお願いします。

それじゃあ、まず、そちらにお座り下さい。


おい、爆乳女!珈琲持ってこい!

何してんだよ。お客様だぞ?ったくよ...使えねぇのな?すいません、お客様。使えないバイトで...


それより、相談内容の話しですが...」


いつの間にか試合は終わっていた。

そして、現金を前にすると、俺はコミュ障が治るらしい。

感想、お気に入り登録、Twitterのフォローお待ちしております。


@ittoot123


よろしくお願いします!

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