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影勇者の魔王殺し  作者: 勇者
神話魔術覚醒
22/25

影勇者は坊っちゃんと話した

 初日は何ともなかった。まあ何かあっても困るがな。ただノイル坊っちゃんやノーラお嬢様のことを敬っている人もいるが妬んでいる人もいる。そういうところがこの世界も元の世界も同じだなと思った。有能な人間は苦労する。まあ二人が学校で一番魔力が高いというわけではなかったのが驚きだった。一人だがかなりのやつがいた。そいつ以外は大体二人未満。で、今は勉強部屋で二人の勉強を見ている。そして先程ノルマをこなしたノーラお嬢様が俺に聞きにきた。内容は『精霊魔法を教えて』とのことだ。


「精霊魔法を教わりたい? そうですね。精霊文字書けます?」


 で、今は屋敷に戻り二人の勉強を見ている最中に先に終わったノーラお嬢様に言われた。


「え、いえ書けないです。それも含めて教えてください」


 確かに時間が余るというのも元帥に怒られる。だがノーラお嬢様ばかりの相手をしていても怒られる。実に面倒だ。まあ教えても害はないだろう。


「分かりました。少々待っていてください。本を取ってきます」


「は、はい。お願いします」


 勉強部屋から出ていく。そして書斎へ。この屋敷の書斎にあるのだろうか。俺が精霊魔法を教わった本。なかったら面倒だな。


「あ、アルトさん。精霊魔法についての本は書斎のどの辺りにあるのでしょうか」


「精霊魔法についての本ですか………確か奥から二番目の右側。上から三段目の辺りにあった気がします」


「ありがとうございます。ではまた」


 そう言い、アルトさんに頭を下げて書斎の奥へいく。正直この書斎はかなり本が多い。小さな図書館くらいだろうか。その中には戦術論といったものが多く含まれており、魔法についてなども多くある。


「………ないな。なんだこの『精霊魔法の全て! これを読めば貴方も宮廷魔導師に!』バカじゃないのか? こんな本買うやつ全くいないだろ。いや、元帥か。仕方ない。これ少し読んでみるか」


 取って読むと初めの段階で気付くべきだったあることに気付いた。この本の著者はエリナだった。あいつ精霊魔法使えないし……詐欺じゃないか。見なかったことにしよう。初めのページだけを見て戻した。


「で、どれがいいだろうか。流し読みして詳しいのを持っていくか」


 流し読みタイムが始まった。ペラペラとページを流す。それを全ての本にしたとき、一番分かりやすく詳しいのはエリナの本だった。意外と簡潔にまとめてあり、使えないなりの方法を書いてあった。


「さっき詐欺とか思ったがこれ、かなり良いやつだぞ。俺が読んだものに負けずとも劣らない。題名があれだがこれにするか」


 エリナの書いた本を持ち、勉強部屋へ戻る。ちなみに今エリナとレイティアは別室で休憩中だ。初めは一緒にいたが邪魔だと判断したから休憩という名の隔離をした。


「ノーラお嬢様こちらが精霊魔法の本です。ふざけた名前ですが内容はしっかりしているのでご安心を」


 腰を低くしてノーラお嬢様の目線に合わせて渡す。


「ありがとうございます」


「一度読んでみてわからなければ自分に聞いてください。精霊魔法も光属性以外は使えますので」


「あ、はい。その時はお願いします」


 礼をしてノーラお嬢様は机に戻り、読み始めた。一方ノイル坊っちゃんはいまだにノルマが終わっていないみたいだ。まあノーラお嬢様が早すぎるだけかもしれないが。


「ノイル坊っちゃん。わかりますか? わからないのであれば教えますよ」


「む、言ったな! その言葉忘れるなよ! 全部わからない!」


 ………嘘だろ……………?

 見た感じノートにはちゃんと書いてある。つまり全部と言うのは嘘だ。


「なるほどノイル坊っちゃんは全部わからないのですか。では僭越ながら書いてある場所も完璧に長々と自由の時間を削りながら説明いたしましょう。お礼はいいですよ。仕事ですから」


 笑みを浮かべていってやった。ただでさえ少ない自由の時間。いつも何しているのか知らないがかなり大事だろう。それを削られるとなれば慌てて訂正する。

 そう思っていたがそんなことなかった。向こうも笑みを浮かべた。


「じゃあよろしくお願いします。終わるまで夕食は食べれませんよ師匠。僕に書いてある場所も完璧に長々と夕食を食べる時間を削りながら教えてください」


 はめた方と思っていたがはめられたようだ。まさかこう来るとは………。まあ、臨むところじゃあないか。忍耐力の勝負を俺に吹っ掛けてくるとは馬鹿だ。


「わかりました。では初めから」


 そうして、長い夜は始まった。






………………………………………………





「おや? どうかしましたかノイル坊っちゃん。まだ終わってませんよ。ですので寝かせません」


 ノーラお嬢様がいなくなった頃、とうとうノイル坊っちゃんの目が眠いと言い出した。


「ぐ、師匠。性格悪いって言われません? 言われていないのなら貴方のまわりはおかしいです」


「覚えていませんね。で、どうしますか」


「続ける」


「わかりました」


 たいしたもんだまだ頑張れるのか。





………………………………………



 真夜中、とうとうノイル坊っちゃんは寝てしまった。だが残念ながら起こすことはできない。なぜなら全てを教えきってしまったからだ。何時間したかはわからないが全てやりきった。それだけは評価する。だがここで寝るのは評価できない。


「仕方がない」


 そういってノイル坊っちゃんを抱える。そして部屋へ送る。


「あ、シュウヤ終わったの? お疲れ様。寝ていいよ」


 運び終わり戻る道中エリナが出てきた。


「いや、この護衛期間は寝ない。別に眠くもないしな。2週間は睡眠がなくとも俺は活動できる」


「そうなんだー。でも睡眠をとると体が軽いよー」


「魔力で補強するから大丈夫だ。今回の依頼は少し注意が必要だからな。睡眠してられない」


「ふーん。そこまで気を張るんだ。体は壊さないようにね」


「壊れないから大丈夫だ」


「そ」


 エリナが去っていくところを見るとどうやら自分の仕事を再開するみたいだ。俺とエリナとレイティアは一応役割を分担している。エリナは屋敷内を歩き回りいざという時のために魔法陣を描いてある。レイティアは屋敷周辺の警戒。そして俺は二人の護衛と屋敷内の警戒。


「おかしい。アルトさんの気配がない。アルトさんって一体何者だよ。まあ敵ではないだろうから放置するけど」


 いや、おかしくなんかないな。確か元Aランク冒険者って言ってたしこれくらい普通だろう。魔導師でない分魔法は弱いけど体術とかは一流だろう。


「にしても暇だ。何もすることがない」


 はぁ、とため息をつきつつエリナの魔法陣のチェックをしながら歩く。そうして時が過ぎていく。






 この時の俺は気付いていなかった。脅威がじわじわと迫りつつあること。そしてこの護衛が今まで受けた依頼の中でダントツに危険であったことに。




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