影勇者は護衛する
翌朝、俺はグレイと『グロウヴィル帝国』へ行く。寝る前に簡単に『グロウヴィル帝国』についておさらいしよう。
『グロウヴィル帝国』は軍事国家だった。魔王が現れてからは戦争は起こしていない。起こせないほどの魔王が『グロウヴィル帝国』に現れた。そこで召喚された勇者の手によって魔王に対抗できるようになったらしい。聞き込みからの知識だ。
『グロウヴィル帝国』は機械をよく使う。魔術は使える人が少ないらしい。というよりこの国以外まともに魔術を使える国はない。国それぞれで発展しているものは違うのだ。
機皇帝ゾーラという人物が納めている。配下には剣の腕はほぼ世界一といっていいほどの実力者、カイン・ルミブル、唯一の魔術師で魔術師ランキング6位のナギ・バルディオス、大事な時にしか知恵を貸さない。だけども圧倒的な知略はない平均以上な策士エリス・マルディオらを筆頭に結構強い人がいるみたいだ。ほぼとか6位とか平均以上とか、微妙。
三ヶ月前に戻ってきた偵察部隊からの報告が以上。さて、三ヶ月の間にどうなっているのか。その情報を少しだけあの捕虜から聞いた。あの捕虜も一ヶ月間あの場にいたらしいから正確には二ヶ月間だ。
魔王軍は大人しくなったらしい。捕虜も向こうの勇者がどんなか知らないみたいだ。以上。他はグレイに報告した。
「何が起きるかは知らんがなんとかなるだろう。レイティアは連れていった方がいいだろうか。だがレイティアがいれば目立つだろう。どうするべきか…」
まあなんとかなる。そう思って今日は寝た。もちろんグレイが用意してくれた俺の部屋でだ。ギルドで働いていた一週間は宿だったからかなり気持ちいい
俺はすぐに意識が落ちた。
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「朝か………」
今日は面倒な移動か。移動方法は途中まで馬車、その後は徒歩だ。なぜ途中から徒歩になるかは浸入できないからだ。
「本当に私を連れていかないの?」
起き上がるとレイティアが立っていた。
「レイティアがいたら目立ってしまう。だから連れていけない」
「目立たない方法はあるわ。ずっとシュウヤが魔装するの」
「あんな状態になったら魔力の量からして怪しまれる」
「そこはシュウヤが魔力を抑えて」
「正直に言うがエリナもレイティアは残っていてほしい。もし魔王軍が攻めてきたら対応してほしいんだ。そして、俺に何かあったら分かるしな」
「……分かった。残っておく」
「わかればよろしい。着替えるから出ていけ」
俺の言葉を聞いて出ていってくれた。いつも通りの服(制服は消し炭となったので新たに買った服)を着、背に魔力を喰らう剣を差し、魔力強化をして準備を終える。
「さて、行くか」
グレイの執務室へと向かった。
……………………………
「王様が自ら行かなくてもいいでしょう!」
「もう決めたことだしの。護衛には信頼でき、強力な人物を雇っているから大丈夫だ」
「ですが!」
何やら揉めているな。仕方ない。揉めている相手を気絶させるか。
『絶歩』で近づき、思いきり溝撃ちをした。
「ガハッ」
被害者の意識が落ちた。
「おお、いたのか。まあいい。早速行こうか。書き置きは置いておいたしの」
あまり驚かないところを見ると『絶歩』を使う前の気配を察知していたようだ。
「もう一度確認するが俺の任務はグレイの護衛。これで間違いないな?」
「ない」
「ならいい。行こうか」
そうして俺とグレイは、厄介事に巻き込まれに行くのだった。
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「《イクス・フレイム》」
魔方陣を描き、詠唱する。すると、炎の柱が噴き乱れる。
「ぐああああ! 熱ぃ!」
盗賊どもが騒ぐ。これで何回目の襲撃だろうか。馬車での移動は先程から何回も盗賊に襲撃されている。理由は簡単だ。馬車が二人しかいないのに結構大きい。これでもある馬車の中で一番小さいらしい。まあそのせいで格好の的となっているのだ。
「なあ、そろそろ馬車を捨てないか? もうすぐ着くし、この人数を潰すには二回ぐらい魔方陣を描いて、詠唱しないとダメっぽい。だがそれは面倒だ」
「仕方ない。なら行こうかの。だが、今から気を引き締めんといかんからな」
当たり前だろう。これから不法浸入するのだ。見つかれば殺られる可能性が出てくる。だから気を引き締めて気配を殺す。
「グレイ、本当にあの魔法陣を描けばいいんだな。いいなら十分後だぞ。十分後に詠唱しろ」
「分かった。ほら、ワシの魔力じゃ」
小瓶を渡してきた。小瓶の中にはグレイの魔力が詰められている。
「じゃあまた十分後」
別れて『絶歩』を使い木々の中を駆け抜けた。途中で断末魔がグレイの方向から聞こえたが気にしないことにした。
なんやかんやで無事門に辿り着いた。だがこれからが大変だと、気を引き締めた。が、それは無駄だった。
「どういうことだ………?」
なぜ門番がいない。首都なのに門番がいない。おかしい。この異常はどうとればいいだろうか。
1つ、誘われている。
2つ、ただ交代の間である。
3つ、門番に人員を出せないような何かが起きている。
どれだろうとすることには関係ない。むしろ好都合だ。
「罠でも壊せばいいしな」
気配、息、足音、心拍音も消して入る。一分だけしか心拍音は消せないが効果はあるだろう。ここまでしないでいいとは思うが念には念をだ。
「…………」
門を通過した。通過すると人が大勢いた。さすがは首都、人が多い。
「結局なぜ門番がいないのかは分からない。まあどうでもいいがな。それより早く魔法陣を描いてやるか」
人気の少ない……というか人気が全くない路地裏へ走った。
そして、指定された魔法陣を描いた。今思えばまだ2分前だ。その間に誰か来たらどうしようか。ま、来ないか。
「お、考え事してたら、いつの間にか2分経ったか」
魔法陣が赤く輝いている。これはきっとグレイが詠唱したからだろう。この魔法は《テレポート》だ。文献で見たがかなり難しいらしい。ま、俺は使えるけどな。とにかく魔法陣からグレイが現れた。
「ご苦労じゃったな。さて、シューヤのことを話してもらいながら移動するかの。行こうか」
「行くのはいいが俺のことなんか話さない」
「つれないのう。そんなのだから好きな人もできないんじゃよ。ソーマが言っておったぞ。シューヤは恋をしたことないから冷たいとかの」
「………………行くぞ」
グレイほって歩いていった。それにグレイは小走りで俺の隣まで来て普通に歩き出した。
「さっきの話だが……」
「さっき……? ソーマが言っていたことか?」
「違う。少しだけ昔話をしてやる」
「ふむ。暇だし頼む」
少し回りを見渡して間を開け、喋り出す
「俺がまだ5歳くらいの頃だ。まだちょっとした組織で殺しの腕を磨いていた。もちろんそん時は全く感情のない殺戮人形だ。決して裏切らない組織の殺戮人形。まあそれから約二ヶ月後にその組織を殺戮したんだが………その過程で俺はある感情を知った。今はもう消し去ったがな。その感情がさっきお前も言っていた『恋』だ」
「ほう、相手は誰だ?」
「相手は依頼された殺す対象だ。名前はアリスという。ちなみに16歳位だったと思う。そいつが強かったんだ。どんなに攻めても勝てない。そして捕まった」
懐かしい。いつ思い出してもそう感じる。あの時初めて殺し損ねた……そして感情を知った。
「ほう、それでどうなった? 今ここにいるということは死ななかったのだろう」
「ん? まあ牢獄でアリスとかなり話されたんだ。いや、俺はほぼ無視したがアリスが話続けたんだよ。で、それが一ヶ月ずっとだ。さすがにきつくて会話してしまった。そこで俺の負けだったんだろうな。2週間話したら感情がかなりついた。そのうちの1つが『恋』だ」
「アリスとは何者なんだ? そこが気になる。殺す対象だったのにぬけぬけと話す。少し不気味じゃ」
「アリスはアリスとしか言いようがない。改造されてる俺が勝てない強さに、あり得ないほど整った顔。話しているとどんどん惹き付ける話術。人外」
「続きは?」
「あー、なんかアリスが牢獄から出してくれたんだ。そん時の俺は組織の俺への扱いにイライラしててな、とりあえず未練がなくなるように殺戮した。そしてアリスの護衛となるためにもう一度アリスの元へ行ったんだが、いなくてさ。ああもういないんだなー。って主ってあっさり『恋』が終わり、機能しなくなった」
「いなくなった? ふむどこかの国に召喚されたのかの?」
「かもしれないな。まあ結局一人になったところで、師匠に拾われたんだ。『一度殺したことのある人間が普通の生活ができるわけないだろ。俺と来い。お前は今日から馬鹿弟子だ』とか言われて仕方なくだ。それからも殺しを続けて今に至る。実にいい話だ」
「苦労したんじゃの………」
「は、別に苦労したと思ってない」
いや、別に誉められた気がして照れた訳じゃない。顔が赤くなっている様に感じるが決して照れた訳じゃないぞ。
「さて、面白いことをやっておるぞ。ほれ」
「?」
グレイが指を指しその方向を向くとそこには『武技大会練習! 勝てれば1000ギル!』
と書かれた看板が闘技場の前にある。何か嫌な予感がする……
「シューヤ、ちょっと軽くあしらってこい。なあに、護衛のついでだ。暴れよ……」
嫌な予感は的中した。さて、どうなることやら……
テスト勉強のため、二週間ほど開けると思います。
何卒ご容赦くださいm(__)m




