影勇者は試験する
「《ダーク・トリニティ》」
戦略級大規模魔法を発動した。三つの黒い塊が集束し、放たれた。ギルドマスターは同じ魔法を発動し、さらに違う魔法も発動した。それに俺も瞬時に同じ魔法陣を描いた。
「「《メテオ・ストライク》」」
同時に言い、同じ魔法が激突した。魔法は互いに打ち消しあって消えた。その瞬間もギルドマスターは魔法陣を描いている。ギルドマスターが描いた魔法陣全てを描いていき、発動させていく。互いの魔法は全て打ち消しあう。俺はどんどん新たな魔法を覚えれる。初めてみる魔法陣もなぜか描いている途中なのに完成が見え、名前も分かってしまう。これが才能というやつなのだろう。だが、正直余裕があるわけではない。だからレイティアとヴァイスの勝負を見れない。
「これじゃあ僕の魔力がどんどん減っちゃう。仕方ない。ヴァイス、きてくれないかな。魔装をする」
ギルドマスターが余所見をした。ち、余裕って訳か。てかしゃべり方変わってるし……ま、上等だ。魔装するならこちらも…
「え゛、こっちは手一杯なんだけど。って、もう! この精霊は厄介だわ。」
「ふん、それはこっちの台詞よ。悪魔は厄介ね。ほら消えてよ」
「く、何で精霊がその魔刀を持ってんのよ。それ、ある程度食らわされたら私消えちゃうんだけど」
「知ってる。私、魔族大っ嫌いだから全員消すの。それとなぜ持っているかは城の武器庫から取ってきたのよ。」
「もう魔族じゃないのに……っく、あなたのその魔法、気味が悪いわ。魔刀と血の剣の二刀流じゃあ足りないの? さっきから違う魔法も使ってさあ」
「ふ、結局はシュウヤにあんたを全力で倒せと言われたからね。シュウヤのためよ。」
「でもそのシュウヤってのもどんどん魔法使ってるし、あなたも自分の魔力を使わずシュウヤってやつのを使ってる。魔力切れるよ?」
「残念だけどそれはないわ。シュウヤの魔力が切れる前に終わるもの」
などという会話が聞こえてきた。うん、若干無限魔力をばらしてしまわないかハラハラしたが大丈夫みたいだな。
「レイティア、魔装だ。魔装でマスターを倒す。あっちが意地でも倒すらしいからな」
「なんとでも言えばいい。それと、腕一本飛んだらすまん」
「こっちこそ額に風穴空いたらすまんな。ほら、レイティア早く」
「うん。分かってる」
レイティアが答えるとすぐに漆黒のコートに包まれ、二つの銃が握られていた
「あれ、まさかヴァイスがこんなに勝とうとするなんて」
と前方にいる20歳くらいの男性。両手に鎌を持っている。てか誰だこいつ。
「誰だこいつとか思ってるかな? 魔装したから若い僕になったんだよ。ちゃんと一人称も僕になってるだろ?」
ギルドマスターか……なんというか、ただならぬ気配が漂ってるな。あと、戦ってる最中にも僕とか言ってたぞ
「おっと、早く決着つけようか? 早くしないとどんどん寿命が減るから。じゃあ、《プロミネンス・テイル》」
魔法陣が描かれていないのに魔法が発動された。
「ち、消えろ」
十発撃った。十発全て当たったにも関わらず火の鞭は迫ってくる。
『あれを耐えればいいの? だったら簡単よ。何もせずにいなさい』
レイティアの声が頭に流れた。テレパシーの一種だろう。
レイティアの指示通り何もせずにいると眼前まで迫ってきた。が、シールドのように魔法陣が展開し、防いだ。
「なんだこれは?」
『シールドよ。これ、網状にしたりもできるし反射させることもできる。まあ万能だけどシュウヤには使いにくいと思うわ。』
「俺が指示出したらすぐに出せるか?」
『もちろん。魔力の消費は激しいけどシュウヤの魔力に底がないしできるわ。』
「あそことあそことあそことあそことあそことこことこことあそことここにシールドを作ってくれ。」
『できたわ』
いろんな角度からシールドへ向けて撃った。40発は撃っただろう。撃った炎が全てが反射する。そしてギルドマスターを囲った。
「ほう全方位からか。考えたものだ。でも無駄だよ。全てを落とす。その妙な武器には驚いたけど、この程度か」
「装填・銀」
そう言うと銀弾が銃に装填された。これは普通の銃だ。狙うのは鎌だ。悪魔は銀が弱点らしい。
「終わりだ」
二発撃った。銀弾は二つとも別々の鎌に当り、鎌が砕け、ヴァイスがもとに戻った。だがギルドマスターは若いままだ。
「何!? ヴァイスが狙っ……く」
ギルドマスターが防御体制に入った。始めに撃った炎の弾を耐えるきだろう。耐えたとしてもヴァイスは戦闘不能、耐えて傷を負ったギルドマスターは若いとしてもすぐに押さえ込める。
「チェックメイトだギルドマスター」
「そのようだね。いや、さすがだよ。グレイ王が認めるだけある。ま、規定だし君のような実力でもEランクから…………」
ドドドドド
炎弾がギルドマスターに当り、言葉が続かなかった。
「俺が勇者……まあ颯天の片割れって知っていたみたいだな。まあいいか。レイティア、戻っていいが、ヴァイスに止めとかはするなよ。」
『……わかった』
何か不満気だったが了承してくれた。
「さて、ギルドマスターには勝ったが明らかに手加減されていたよな。あっちから攻めてこなかったし、なんか気持ち悪い。やっぱり殺そうか」
気絶しているギルドマスターに殺気を向ける。すると勢いよく起き上がり、距離を取られた。
「気絶している人間になんて殺気を向けるんだ。全く、ってあれ? 魔装は解けてるのに若いままだね。」
「自分のことなんだし分からないのか?」
「ま、若いに越したことはないし深く考えないでおこう。ヴァイス、気絶した振りせずに起きたらどうだい。ていうか消えたらどうだい」
ギルドマスターの声に「ちぇ、バレてたか…」と言いながらムクリとヴァイスが立ち上がった。
「で、何で若いままなの?」
ヴァイスがギルドマスターを睨みながら言った
「分からない。ギルドマスター何てしてなかったら研究に没頭してたんだけどなぁ。」
「そんなことどうでもいいがどうせEランクならなぜ試験みたいなことをした。」
「だって、相手が宮廷魔導師と勇者の片割れだと実力が見たいと思うよ。それのお陰で若く戻ったし一件落着ってことで」
「何も落着してない上、謎が増えたと思うのに何が一件落着なのだろうか……」
俺の右隣にいるレイティアが的確にツッコミを入れた。それに「確かに…」といつの間にか左隣にいたエリナが同意した。
「細かいことは気にしないってことで、シュウヤ君にエリナちゃん、二人ともこれからよろしく。自己紹介するよ。クラウドだ。ギルドマスターをしている。メンバーからはクソウドと呼ばれているよ。シュウヤ君とエリナちゃんはクラウドと呼んでくれ。たまに魔王の手先が攻めてくることがあるだろ? その時は一応行かなきゃならないからよろしく。まあ騒がしくて楽しいギルドだから楽しくやってくれ。はい、ギルドカード。無くしたら再発行代が請求される。じゃ、戻ろうか」
ギルドマスター……クラウドの長い話を聞き流して戻った。とりあえず、目的であったギルドに入った。次は資金稼ぎをしつつランクを上げる。せめてAにならなくちゃ意味がない。ランクAから行ける場所に行かなきゃならないからな。
「そういえば、なぜギルドに入ったの? シュウヤのような勇者位だったらお金くらい経費として払われるよ?」
エリナから妥当な質問がきた。いくらエリナでも言えることと言えないことがある。
「ちゃんとは言えないが、まあ魔王を殺すためと言っておく。俺はそのためにギルドに入ってランクをあげなきゃいけない。急いで上げるぞ」
「はぁーい。私はシュウヤの言うことを聞くし、何処までも付いていく。」
気持ち悪いな。ヘドが出そうだ。
「へー、やっぱりシュウヤ君も勇者を全うするんだね。ソウマ君だっけ? 本当の勇者より勇者として素質あるよ。」
「は、むしろ俺には魔王の方が性にあってるな。クラウド、言っておくが魔王側になれば簡単に元の世界に帰れるってなったら魔王側になる。そういう合理的な考えなんだ。俺は」
「その時は大変だね。高位の精霊も殺さなくちゃならなくなる」
クラウドが薄ら笑いを浮かべ、レイティアを見る。やはり誰が見てもレイティアは高位の精霊なのか
「ま、ないと思うがな…」
「そんなことより、この若返り、どう説明しようか……本当の姿より若返ったよ。これで風俗店に入れる。そうだシュウヤ君今度一緒にどうだい?」
「どうでもいい…」
クラウドの変な話を無関心に聞き流しながら歩を進めた




