〔六‐1〕 戦地、望む
正午過ぎ。
富士山より北東、神奈川県と山梨県との県境の山間に、一台の大型トラックが停車している。荷台の長さは九六メートル、最大積載量はおよそ一五トン、国内で運用される中でも最大級の貨物自動車だ。
鄙びた集落からも隔離した山道にその車は隠されている。異邦人達は、黒く巨大な布で白いボディを隠しきると、布に取り付けた装置を起動させた。するとトラックはその巨体を瞬く間に消し、辺りの景色と同化させてしまった。
「〈DEM〉、正常に機能しました」
敬礼する少年ディアベスの頭を撫でてやったのは赤毛の男ドレートだ。褒められた少年は姉の下に走っていくと、姉が捕まえたカブトムシによる嫌がらせを受けた。
ドレートは向かいの山腹のほとりに見える湖を双眼鏡で眺めた。まるで天体望遠鏡のようにいくらでも任意の場所を拡大できるその光学カメラを通せば、砂粒にも満たない小さな点にか見えないその湖をはっきりと確認できた。地図と照らし合わせると、それは山中湖という湖のようだ。そしてその先には、ジュカイがある。
ドレート達は至極安全にここまで辿り着くことができた。高速道路でクロジャイが運転するMPVをぴったりとマークしていた〈ドレッド・ゴースト〉の仲間の車両も、MPVがドレートの指示に従って厚木ICに降りるとしばらく後を追いかけていたが、やがてその足を止めて姿を消してしまった。ディオラが作った3Dマップ上では、追跡者は厚木ICに引き返すと、東名高速道路の下りルートに入り〈ドレッド・ゴースト〉が姿を消したジュカイを目指していった。
その後まもなくして、クロジャイは厚木市内にてドレートが走らせる大型トラックと落ち合った。MPVの荷物を全てトラックに載せ、髪の毛一本すら残さないよう慎重に車内を掃除すると、人気のない廃工場にMPVを乗り捨てた。五人はトラックに乗ると、山道に入り、夜を徹して走り続け、ようやくこの場所で息をついた。
「ドレート、次はどうする」
親友クロジャイの問いに、「もう考えてある」とドレートは答えた。
「お前のことだ、そうだろうとは思う。しかしパーラは……」
「私がどうかして、クロジャイ?」
声がして振り返ると、パーラが助手席から降りてきた。その表情は全快とまでは言えないものの、昨日から明け方までの病に侵されたような青白さからは快方に向かっているようだった。
「やれるのか」
「一日休んだのよ、ノープロブレム」
クロジャイの心配をよそに、パーラは肩をすくめて答えた。
彼女の復活を知り、じゃれ合っていた姉弟が駆け寄ってきた。彼女は母親のように姉弟を抱き寄せると、ドレートに頷いてみせた。
ドレートは彼女から視線を外すと、すぐそばの切り立った崖の上まで歩き、遥か南西に霞がかって見える密林地帯を望んだ。
「作戦について説明する」




