5 骨、聖剣を継ぐ
スケルトンになった俺を前に、
ヴァルシアとセレナはまだ混乱していた。
だがセレナが、ふと思い出したように手を叩く。
〈セレナ〉
「……あ、そういえば。
レイセル様の“武器”が残っていましたね」
〈レイセル〉
「武器……?」
セレナは魔法陣を展開し、
古びた布に包まれた長い物を取り出した。
布を外すと──
そこには、見覚えのある剣があった。
俺が勇者だった頃、最後まで握っていた剣。
〈レイセル〉
「……これは……!
聖剣ブレイブソード!」
〈ヴァルシア〉
「父上が残しておったのじゃ。
敵とはいえ、一人で戦い抜いたおぬしを“好敵手”と認めてな」
ヴァルザードが──俺を?
胸の奥が熱くなる。
〈セレナ〉
「魔王ヴァルザード様は、
“勇者の武器は勇者の魂が持つべきだ”と仰っていました」
スケルトンの手で柄を握る。
骨の指なのに、確かに馴染む感覚があった。
そのまま──ゆっくりと、剣を持ち上げる。
ぎこちない動き。
だが、それでも。
かつてと同じように、天へ掲げた。
……その瞬間。
パキッ。
〈レイセル〉
「……あ」
腕の骨に、うっすらとヒビが入った。
〈ヴァルシア〉
「折れかけておるぞ!?」
〈セレナ〉
「無理はなさらないでください!」
……様にならない。
だが、それでもいい。
それでも俺は──
もう一度、立ち上がると決めたのだから。
〈ヴァルシア〉
「しかし……スケルトンに勇者の剣とは……
なんとも不釣り合いな魔物が誕生したのじゃ」
〈セレナ〉
「ええ……見た目のギャップがすごいですね……」
二人は複雑な表情をしている。
だが、俺は少しだけ誇らしかった。
〈セレナ〉
「では、レイセル様のステータスを確認しましょう」
魔法陣が展開され、数値が浮かび上がる。
〈ヴァルシア〉
「おお、どれほど弱いのか楽しみじゃ!」
〈レイセル〉
「楽しむな」
数値が表示され──
三人は同時に固まった。
〈セレナ〉
「……え?」
〈ヴァルシア〉
「……は?」
〈レイセル〉
「……なんだこれ」
ステータスはこうだった。
レベル:1
魔力:0
体力:100
敏捷:50
知力:100
力:測定不能
〈ヴァルシア〉
「力が……測定不能……?」
〈セレナ〉
「通常は“規格外に強い”場合に出ますが……」
一瞬の沈黙。
〈セレナ〉
「……いえ、今回は例外でしょう」
〈レイセル〉
「今ちょっと期待しただろ」
〈ヴァルシア〉
「おぬし……
冒険者どころか、村人にも殺されるのじゃ……」
〈レイセル〉
「村人に……?」
すでに心が折れそうだ。
〈セレナ〉
「……まずは安全な場所で鍛える必要がありますね。
出来るだけ弱い人間が多く、
魔族支配地から遠い、平和な村が良いでしょう」
〈ヴァルシア〉
「そうじゃ!
弱い者しかおらぬ村なら、おぬしでも死なんじゃろ!」
〈レイセル〉
「励まし方が雑すぎる……」
だが、確かに今の俺は弱すぎる。
まずは鍛えるしかない。
〈セレナ〉
「ではレイセル様。
最初の目的地は──“平和な村”です」
こうして、
最弱スケルトンにして勇者の剣を持つという
奇妙な魔物が誕生した。
俺の再出発は、
平和な村から始まるらしい。




