3 勇者、面接中。裏切りの記録
面接室の空気が、ふと変わった。
ヴァルシアが腕を組み、得意げに語り始める。
〈ヴァルシア〉
「しかしレイセルよ。
おぬし、父上──ヴァルザードに挑んだのは無謀じゃったが……
その心意気だけは感服したぞ」
意外な言葉だった。
褒められるとは思っていなかった。
〈ヴァルシア〉
「最後は一人で戦っておったしな。
あれはなかなかの根性じゃ」
〈レイセル〉
「……一人?
いや、俺には仲間がいた。
僧侶、魔法使い、戦士……三人いたはずだ」
ヴァルシアとセレナが、同時に首を傾げた。
〈ヴァルシア〉
「……気づいておらんかったのか?」
〈レイセル〉
「何をだ?」
〈ヴァルシア〉
「途中で逃げ出したぞ。
父上に恐れをなしてな」
魂が凍りついた。
言葉が出ない。
〈レイセル〉
「……嘘だろ」
〈セレナ〉
「事実です。
魔王城の記録にも残っています」
胸の奥が、じわりと黒く染まる。
裏切り。
恐怖。
怒り。
殺意──。
その瞬間、セレナが静かに告げた。
〈セレナ〉
「ですが、叶いませんよ」
〈レイセル〉
「……何がだ」
〈セレナ〉
「百年の時が経っています。
あなたが死んでから、もう一世紀です」
百年。
仲間はもう、とっくに──。
〈レイセル〉
「……そうか。
俺は……百年も……」
魂が震えた。
怒りも、悲しみも、行き場を失う。
だが、セレナは続けた。
〈セレナ〉
「ただ──子孫は生きています」
〈レイセル〉
「……子孫?」
〈セレナ〉
「はい。
ですが……あまり良い噂は聞きません」
セレナは淡々と、しかしどこか申し訳なさそうに言った。
〈セレナ〉
「僧侶の子孫は、怪しい宗教団体の教祖に」
〈レイセル〉
「……は?」
〈セレナ〉
「魔法使いの子孫は、生物実験、毒薬や禁止薬物の売買に手を染め」
〈レイセル〉
「……嘘だろ」
〈セレナ〉
「戦士の子孫は、獣人や珍しい魔物の売買を行っています」
魂なのに、胃が痛くなるような感覚がした。
〈ヴァルシア〉
「まあ、そういうことじゃ。
おぬしの仲間の血筋は、ろくでもない方向に進んでおる」
〈レイセル〉
「…………」
怒りでも悲しみでもない。
もっと静かで、もっと深い感情が湧き上がる。
〈レイセル〉
「……なら、俺の当面の目的は決まった」
ヴァルシアとセレナが、同時にこちらを見る。
〈レイセル〉
「仲間の子孫の悪事を──止める」
静かに、しかし確かな決意だった。
〈ヴァルシア〉
「ほう……よいではないか。
魔物として働く理由としては十分じゃ」
〈セレナ〉
「ではレイセル様。
その目的を果たすためにも……
まずは“魔物としての身体”を得ていただきます」
いよいよ──
俺の第二の人生が、本格的に動き出す。




