2 勇者、面接中
光の中に浮かぶ魂のまま、俺は椅子のようなものに座らされた。
座っている感覚はないが、そういう“扱い”らしい。
〈セレナ〉
「では、面接を始めさせていただきます。
まずは──意欲について伺います」
〈レイセル〉
「意欲……?」
〈セレナ〉
「はい。魔物として働く意欲です。
具体的には……人間を殺せますか?」
唐突すぎて、魂が震えた。
〈レイセル〉
「……俺は、元は人間だぞ。
そんな簡単に“殺せる”とは……」
〈セレナ〉
「悩まれるのは当然です。
ですが魔物として働く以上、避けられない場面もございます」
セレナは淡々としているが、責める気配はない。
〈レイセル〉
「……正直、すぐに答えは出ない」
〈セレナ〉
「では、魔物としての“メリット”を説明いたしますね」
セレナは眼鏡を軽く押し上げた。
〈セレナ〉
「魔物は、人間と違い──
専用魔法で“自分の強さを数字で確認できます”」
〈レイセル〉
「数字で……?」
〈セレナ〉
「はい。戦闘力、魔力量、耐久、成長率……
すべてが数値化されます。
自分の身の程を、正確に把握できるのです」
その言葉に、ヴァルシアが勢いよく割り込んできた。
〈ヴァルシア〉
「そうじゃそうじゃ! 数字が見えれば身の程がわかるのじゃ!」
胸を張っているが、見た目は十二歳の少女だ。
〈ヴァルシア〉
「おぬしが父上──ヴァルザードと戦った時、
あまりに戦力差が離れすぎておってな。
魔物達からネタにされておったわ!」
……刺さる。
魂なのに胸が痛い。
〈レイセル〉
「……そんなに、かけ離れていたのか」
〈セレナ〉
「ええ。数字で見れば、一目瞭然でしたね」
セレナは淡々と告げるが、悪意はない。
ただの事実なのだろう。
〈セレナ〉
「続けます。
魔物は“人間を倒すことで、その者の魔力を吸収できます”」
〈レイセル〉
「魔力を……吸収?」
〈セレナ〉
「はい。吸収した魔力は──
レベルアップ、進化、スキル獲得に使用できます」
〈レイセル〉
「進化……?」
〈セレナ〉
「ええ。スケルトンからスカルナイトへ、
さらにデスナイト、ヴァンパイア……
魔力次第で、いくらでも強くなれます」
それは、人間には絶対にない成長の仕組みだった。
〈セレナ〉
「さらに魔力を使えば、仲間を生み出すこともできます。
群れを作り、組織を作り、国を作ることだって可能です」
〈レイセル〉
「国まで……?」
〈セレナ〉
「はい。魔物は“魔力”がすべての基盤ですから」
少しだけ、胸がざわついた。
勇者としては敗れた俺でも──
魔物としてなら、何かを築けるのかもしれない。
そんな時だった。
〈ヴァルシア〉
「それにな! 今の魔王城は財政難なのじゃ!」
〈レイセル〉
「……え?」
〈セレナ〉
「はい。人材不足も深刻でして。
魔王軍は常に人手が足りません」
〈ヴァルシア〉
「だから働くのじゃ! わらわのために!」
……魔王軍、思ったより切実だな。
〈セレナ〉
「以上が、魔物として働く上での基本情報です。
レイセル様──いかがでしょうか?」
魂の奥で、何かが揺れた。
勇者としては敗れた。
だが、魔物としてなら……
もう一度、立ち上がれるのかもしれない。




