14 骨、騎士になる
魔王城の静かな一室に、淡い魔力の光が満ちていく。
〈セレナ〉
「ではレイセル様。魔力の使い方について説明します」
淡々とした声が響く。
〈セレナ〉
「魔力は“進化”“スキル獲得”“仲間生成”の三つに使用できます。
まずは……最も効果が分かりやすい“進化”から試すべきでしょう」
〈ヴァルシア〉
「そうじゃそうじゃ! まずは進化して、まともな魔物になるのじゃ!」
まともって言うな。
だが──
確かに今の俺は弱すぎる。
進化できるなら、しておきたい。
〈レイセル〉
「……分かった。やってくれ」
セレナが静かに頷き、魔法陣を展開する。
床一面に広がる光。
骨の身体が浮かび上がる。
〈レイセル〉
「うおっ……回る回る回る!?」
骨が勝手に回転し、組み替わり、光に包まれる。
ガシャンッ!
鎧が生成され、骨に吸い付くように装着される。
兜が落ちてきて──
ゴンッ!
頭に直撃した。
〈レイセル〉
「痛くはないが雑だな!?」
光が収まり、俺はゆっくりと立ち上がる。
〈ヴァルシア〉
「おおおお! やっとまともな魔物になったのじゃ!!」
〈セレナ〉
「スケルトンナイト……Cランク相当の魔物です。
冒険者三名を倒したのですから、妥当な進化ですね」
鎧は立派だ。
兜も悪くない。
……中身が骨じゃなければ、もっと様になっただろう。
〈レイセル〉
「……まあ、悪くない」
こうして──
俺は“スケルトンナイト”へと進化した。
進化の光が完全に消えたあと、セレナが静かに魔法陣を展開した。
〈セレナ〉
「では、レイセル様。進化後のステータスを確認します」
淡い光が浮かび上がり、数値が並ぶ。
──────────────
レベル:1
魔力:0
体力:500
敏捷:300
知力:300
力:測定不能
──────────────
〈レイセル〉
「……またレベル1に戻ったのか」
〈セレナ〉
「進化とは“新しい種として生まれ直す”行為です。
レベルが初期化されるのは当然です」
〈ヴァルシア〉
「魔力は全部使い切ったようじゃな!」
〈レイセル〉
「ゼロか……まあ、進化に全部使ったんだろうな」
〈セレナ〉
「はい。ですが体力と敏捷は大幅に上昇しています。
スケルトンナイトとして妥当な成長です」
セレナはそこで、ふっと表情を引き締めた。
〈セレナ〉
「そして……もう一つ重要なことがあります」
〈レイセル〉
「なんだ?」
セレナはまっすぐこちらを見る。
〈セレナ〉
「レイセル様は、これで“私の眷属”ではなくなりました」
〈レイセル〉
「……眷属?」
〈セレナ〉
「はい。あなたを魔物として生成した時点で、
レイセル様は“私の魔力で作られた魔物”でした」
淡々とした説明。
〈セレナ〉
「しかし──」
一拍置いて。
〈セレナ〉
「あなたが人間を殺し、魔力を得た瞬間。
レイセル様は“個の魔物”へと昇格しました」
〈レイセル〉
「……つまり?」
〈セレナ〉
「あなたはもう、誰の眷属でもありません。
完全に独立した魔物です」
静かな声が、部屋に響く。
〈セレナ〉
「これは今後、レイセル様が仲間を生成した際も同じです。
生成した個体は、魔力を得た瞬間に“独立した魔物”になります」
〈レイセル〉
「……覚えておく」
セレナは小さく頷いた。
〈セレナ〉
「では──」
その瞳が、わずかに柔らかくなる。
〈セレナ〉
「ここからは正式に“魔王軍の一員”として働いていただきます」
〈ヴァルシア〉
「うむ! ようやくまともな魔物になったのじゃ!
これから期待しておるぞ、レイセル!」
鎧の胸に手を当て、俺は静かに頷いた。
〈レイセル〉
「……ああ。ここからだな」
こうして──
スケルトンナイトとなった俺の、本当の魔王軍生活が始まった。




