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13 骨、己を知る

森の朝は静かだった。

復活したゴブリン達はまだ動きが鈍く、焚き火の周りで身を寄せ合っている。


〈セレナ〉

「レイセル様。そろそろ魔王城へ戻りましょう」


〈レイセル〉

「……戻る?」


〈セレナ〉

「はい。状況報告と、あなたの“変化”の確認が必要です」


ゴブリンリーダーが、ゆっくりと身体を起こす。


〈ゴブリンリーダー〉

「スケルトン殿……行くでありますか」


〈レイセル〉

「ああ。色々世話になったな」


〈ゴブリンリーダー〉

「またいつでも来るであります!」


〈レイセル〉

「ああ。必ずな」


骨の手を軽く上げると、ゴブリン達が胸を叩いて返す。


〈セレナ〉

「レイセル様。準備はよろしいですか」


〈レイセル〉

「行こう」


光が広がり、視界が白に染まる。


──そして魔王城へ戻る。


転移の光が収まると、そこは見慣れた空間だった。


高い天井。

無機質な床。

静まり返った魔王城の一室。


〈レイセル〉

「戻ってきたか」


骨の足で立ちながら、周囲を見渡す。


隣にはセレナ。

そして正面には──


〈ヴァルシア〉

「戻ったか、レイセル!」


相変わらずの勢いで玉座から立ち上がった。


〈ヴァルシア〉

「聞いたぞ! 冒険者を倒したそうじゃな!」


〈レイセル〉

「……まあな」


短く答える。


〈ヴァルシア〉

「しかも三人同時!

スケルトンのくせにやるではないか!」


褒めてるのか貶してるのか分からない。


〈セレナ〉

「魔王様。まずは報告と分析を優先します」


〈ヴァルシア〉

「うむ、そうじゃな!」


すぐに切り替わるあたり、素直ではある。


三人で円卓に向かう。

セレナが魔法陣を展開し、情報を映し出した。


淡い光の中に、数値が浮かび上がる。


レベル:3

魔力:300

体力:140

敏捷:70

知力:100

力:測定不能


〈レイセル〉

「上がってるな」


〈ヴァルシア〉

「魔力が増えておる!」


〈セレナ〉

「はい。冒険者三名を撃破したことによるものです」


淡々と説明する。


〈セレナ〉

「魔物は人間を倒すことで、魔力を吸収します。

今回の増加量から見て、平均的なCランク冒険者だったと推測されます」


〈レイセル〉

「……あいつらの分、か」


少しだけ、言葉が重くなる。


だがセレナは続けた。


〈セレナ〉

「そして、もう一つ」


視線が“力”の項目に向く。

〈セレナ〉

「“測定不能”について、ある程度の仮説が立ちました」


〈ヴァルシア〉

「おお! ついに分かったのか!」


〈レイセル〉

「どういうことだ?」


セレナは一瞬だけ間を置き、言った。


〈セレナ〉

「レイセル様の“力”は、固定値ではありません」


〈レイセル〉

「……は?」


〈セレナ〉

「感情によって変動しています」


沈黙。


〈ヴァルシア〉

「感情じゃと?」


〈セレナ〉

「はい」


淡々と続ける。


〈セレナ〉

「ゴブリンリーダーを止めた際。

骨の損傷が発生せず、通常以上の出力が確認されました」


〈セレナ〉

「さらに、冒険者との戦闘時」


少しだけ、声が低くなる。


〈セレナ〉

「明確な“怒り”と“殺意”を伴った状態で、

人間の腕を容易に破壊しています」


〈レイセル〉

「……」


思い出す。

あの瞬間。


迷いが消えたときの、あの感覚。


〈セレナ〉

「おそらく──」


静かに結論を出す。


〈セレナ〉

「感情の振れ幅に応じて、出力が上昇するタイプの能力です」


〈ヴァルシア〉

「なんじゃそれは……」


呆れたように呟く。


だが、すぐにニヤリと笑った。


〈ヴァルシア〉

「面白いではないか!」


〈レイセル〉

「安定しないってことだろ」


〈セレナ〉

「はい。極めて不安定です」


即答だった。


〈セレナ〉

「ですが同時に──」


少しだけ、目を細める。


〈セレナ〉

「理論上、上限が存在しません」


空気が、わずかに変わる。


〈ヴァルシア〉

「……ほう」


〈セレナ〉

「条件次第では、通常の魔物では到達不可能な出力に至る可能性があります」


〈レイセル〉

「……そんなもの、制御できるのか」


〈セレナ〉

「現時点では不可能です」


さらっと言い切るな。


だが──


〈セレナ〉

「だからこそ、“魂の勇者”という呼称は的確かと」


〈レイセル〉

「どういう意味だ?」


〈セレナ〉

「力の源が肉体でも魔力でもなく、

“魂の状態”に依存しているためです」


静かな説明。


〈セレナ〉

「精神、意志、感情──

それらがそのまま出力に直結しています」


〈ヴァルシア〉

「なるほどのう……」


腕を組み、頷く。


〈ヴァルシア〉

「つまり、怒れば強くなると」


〈セレナ〉

「簡略化すれば、そうなります」


雑にまとめるな。

だが間違ってはいない。


〈レイセル〉

「確かに勇者の頃から力にムラがあるとは

 思っていたが……扱いづらいな」


〈セレナ〉

「ええ。非常に」

一切フォローしない。


〈セレナ〉

「ここからは魔力の使い方について話しましょう」


静かな部屋に、わずかな緊張が戻る。

──次は“魔力の使い方”の話になる。

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