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胡遙さん無駄話  作者: 南方胡遥


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9/20

葬送③

うちから車で3分。

 実家という名の義姉夫婦と義母が住んでいる家に到着だ。

 玄関を開けると階段の下で義母が悲劇のヒロイン並みのへたり込み具合で床で泣いていた。

 こんなへたり込み方は舞台の上かアニメか漫画でしか見た事は無い。

 まぁ、義母はこの場合悲劇のヒロイン上等だ。間違いない。


 旦那はそのまま二階へ。

 私はへたり込んでいる悲劇のヒロインの脇に手を回してとりあえず階段に座らせた。

 泣いているヒロインに持っていたハンカチを渡し、背中を2回軽く叩いて2階に去った。劇中のイケメンジェントルマンがその時の一瞬で爆誕した。


 階段を上がって右側がリビングだ。一歩入って即悪臭が漂っていた。

 暖房の効いた生温い空気の中に5匹の犬の糞尿の匂いに混ざって、生理の終わった後の匂いのような、赤身魚の傷んだような匂いがした。


 そして、いびきをかいて寝ていたと思われるそのままの表情の義姉がぽかーんと口を開き白い顔をしてソファで横たわっていた。

 死に顔としては最悪だ。

 元々ブスだった義姉が不細工過ぎる。

 死体の口の中など昆虫の腹の部分並に見たくない。近くでは見ずにリビングの入り口から遺体を確認しただけで私は終了。

 死んでるのはとてもよく分かった。が、私が今まで見て来た臨終後すぐの遺体とは違う。

 明らかに時間が経った遺体だった。血の気が一切無い。真っ白。

 死んだ後直ぐならもう少し肌色もある筈。2日ほど経って肌に艶が出て張った状態になっている祖母の遺体なら見た事はあるのだが、その状態でも無い。

 義姉は違和感がある遺体だった。


 義兄が何か言って、旦那は自らの姉の変わり果てた姿を見て動揺しているが、まず聞いた

「通報した?」

 2人が私を見る。そして顔を横に振る。


 とんだポンコツ野郎共だ。


 私のスマホをポケットから出すが充電が残り3%しか無かった。このスマホで電話をかけたら通報の途中で切れる事は間違いない。

 家の電話は一階の義母の部屋にあるはずだ。私は階段を駆け下り受話器に手を掛けた。

 発信しない…


 階段で放心状態の義母に電話がかけれないのは何故かを聞いたら

「お姉ちゃんが電話料金が勿体ないからって…解約して…」

 また泣き出した。


 ここにも泣くだけのポンコツがいる。

 仕方がない。泣くポンコツ老婆を抱き寄せて背中を摩った。

 二階にいるポンコツ野郎に向かって通報するように声を掛けた

「えっと…110番?119番?死んでるけど?救急車?」

 旦那はどこまでポンコツなのか。イラっとしてポンコツ老婆を抱き寄せたまま

「119押せぇ!!」

 と二階に叫んだ。


 当たり前だが、即繋がったらしい。

 電話で色々話しているが、バカ犬共がギャンギャン吠えまくっているので中々の大声だ。

「え?心臓マッサージですか?」

 心臓マッサージするんか?アレに?必要有るんか?とっくに血の気も引いてるが?

 旦那が話しているいる間に遠くから救急車のサイレンが聞こえる。

 中々早い到着だ。救急車がかなり近くまで来たので場所を知らせる為に外に出ようと思った。

 ポンコツ老婆の脇を持って立たせて階段から離れさせ、救急隊員がインターホンを鳴らす前に玄関の扉を開けた。

 玄関の前に消防隊員が居た。

「現場はどちらですか?」

 二階の右側の部屋だと告げた。

 物凄く冷静な自分。

 何だこの冷静な自分は!と自分でもどうかしてるレベルの冷静さだった。


「この後6人続きます。来る隊員にそのまま同じ案内続けて下さい。」


 同じ案内を6回続けた。消防隊員3人救急隊員3人だ。

 もう誰も居ないかと外を確認したら、救急車と消防車が停まっていた。消防車まで来るとは予想外だった。実家の前と隣の家の前にまで救急車と消防車が連なって回転灯を赤々と照らして停まっていた。

 周りの家ではカーテンを少し開いてこちらを伺っている。真夜中の暗い世界でカーテンから漏れる光。チラッと隙間から逆光で見えない顔が見える。

 一応周りに会釈だけして中に入った。

 

 私が中に入るともう二階から義姉の遺体が担架に乗せて運ばれて来た。

 が、何故?という事があった。

 

 どうして君はズボンを履いてないんだい?下半身の紙オムツが丸出しだが?

 どうしてふくらはぎにビニール袋を巻いてるんだい?

 下半身丸出しで男性隊員に運ばれている姿はとてもカッコ悪い。恥ずかしい。


 そんな事を思っている間に

「今から搬送先探しますので、どなたが救急車に同乗されるか決めておいて下さい。」

 ポンコツ野郎2人とポンコツ老婆が「誰が乗る?」と話し合いを始めた。

 コイツらは馬鹿か?アホなのか?


「ねぇちゃんの旦那は誰やねん!お前が乗れ!!」

 私が難聴者に指を指して「お前が救急車に乗れ!」と手話で伝えたが「え?俺?」の手話を返された。

 頭が悪過ぎる。小学生並みだ。またはそれ以下だ。

 君はママが一緒じゃ無いと何も出来ないのかい?何も考えられないのかい?1から10まで全部言われないと行動出来ないのかい?

 うちの小学生の息子の方が賢い。


 よくもまぁこんな頭のネジが数本外れたような奴と結婚しようと思ったな!いや、馬鹿だからコイツと結婚したんだな。って言うか、こいつしかバカ女のお前の相手をする男が居なかったんだな。

 私が男だったら絶対お前みたいな見た目も内面もブスな女絶対抱かねえよ! 

 お前らとんだお似合い夫婦だぜ!バーカバーカ!!

 病院に行くまでの車の中で脳内は罵りまくっていた。

 そして、罵る以外の感情は私には一切無かった。

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