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胡遙さん無駄話  作者: 南方胡遥


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18/20

葬送12

 息子が帰りの車の中で爆睡してくれていたので決まった葬式の日程を聞いた。

  24日になった。

 スケジュール帳を確認して、息子の学校の予定表を見る。「ケーキ作る」とだけ書いてある。

 そう。クリスマスイブなので毎年息子とケーキを作るのがイブの昼間のお約束だ。2人で早々に選んだケーキの飾りがもう用意してある。あとは生クリームとケーキの土台といちごを買うだけだ。

 給食は無い。前日の給食が最後だ。シチュー、りんごのパン、お星様サラダ、お米のモチモチケーキ。それが今年最後の給食の献立だ。

 23日は学校に行ける。25日が終業式。24日は「ケーキ作る」以外何も無い。

 クラスのクリスマス会は我慢してもらおう。来年もある。


 義兄の両親が住んでいる市内で探したら火葬場の空きが無く29日と言われたらしい。

 それは勘弁していただきたい。結婚式中も焼いていない冷凍した死体の事が脳内のどこかにあって、結婚式の後にある葬式の事を考えるなどたまらなく嫌だ。

 義実家が有る都市で探したら24日に火葬場が空いていたらしい。

 早くあの大口を開けて今にも全て朽ちてしまいそうな顔面蒼白でズボンを履いていない遺体を荼毘に伏したい。伏したいと言うのか?何と言うのか…

 とにかく生ゴミをさっさと焼却して小さな壺に入れてしまいたい。そう!それだ!


 息子には大変申し訳ないがケーキ作りは今回は出来そうに無い。サンタさんは来る!這ってでも来させる!!君が思っている以上のモノを持って来させるから許してくれ!!


「今回のプレゼントはブイバックス5000円のカードにしよう。本人は2000円と言っていたが5000円分のカードを学校に行ってる間に買ってくる。」

「そうしよう。」

 夫婦で同意し合ったので私の23日の仕事は決まった。


 次の日、朝からご機嫌の息子に起こされて町内の餅つき大会だ。

 このご時世に餅つきだ。石の臼と木製の杵を使って子供達と大人みんなでペタペタ餅を搗く。

 餅米は木製の蒸し器の下に水を張った釜を置いて焚き火で蒸す。昔ながらの本格的餅つきだ。

 こんなレトロな文化を今でも保っているのはうちの地域ぐらいだろう。


 年寄りしか居なかった町内の空き家に子供連れが大量に引っ越してきて我が町内は下は0歳から上は12歳までの子供の数が小学校の1クラス分以上いる。

 それにプラスして妊婦が2人、昔からいるご家庭の大きな子供達も中、高、大と10人ほど。

 そこにこれまた開拓時代から住んでいるお年寄りや、その息子世代も来るのだ。50人以上集まる。

祭だ。昭和中期に建てられたステージのある古い集会所とちょっとした公園の有る広場にみんな続々と集まる。

 何も言わずともそれぞれが自分達の役割を分かっている。

 おじいちゃん達は焚き火に当たりながら火の番をしながら米の様子を見る。

 中年男性は米を運んだり洗ったり。広場と集会所に散らばった大量の子供達の子守りをする。

 おばあちゃん達数人は焚き火に当たりながら鍋でぜんざいを作っている。

 残りの私を含めたお母さんとお姉さんはつき上がった餅を丸める。

 手の空いている手の空いている男性はおじいちゃんおばあちゃん達の駒使いだ。

 

 丸めた餅を置く木製の大きなトレーをおばちゃんみんなで洗う。

「冷たい冷たい」

 と笑いながらみんなでゴシゴシと洗って焚き火の前に並べに行く。動いていると嫌な事は忘れられる。ありがたい。

 

 子供達の餅つきが始まると親はみんなカメラを構える。お父さん達の補助付きの幼児の餅つきはたまらなく可愛い。みんなで応援する。

 小学生は男女問わずみんな補助無しで餅をつく。餅をひっくり返す担当のおじちゃんを殴らないか心配になるが。みんなで「よいしょ!」っと掛け声をして子供も合わせて杵を振り下ろす。

 たまにヨタヨタしているが、それもまた良し。

 町内のみんなで応援する。

 

 餅をつき終わった子供達はジュースを飲んで一息付くが、まだまだ餅つきは終わらない。

 餅が出来たら集会所内のおばちゃん達の元に運ばれて丸める作業だ。


 ガヤガヤと世間話をしながらマスクとビニール手袋、三角巾を頭に付けておばちゃんみんなで丸める。

「あんたのとこのお父ちゃん今日来てへんやん?どうしたん?」

と、聞かれた。いつも室内で幼児の子守りを担当している人物だ。

「実は旦那のお姉ちゃんが昨日亡くなりまして。」

 率直に答えた。周りのおばちゃんも室内子守り担当のお父さんもびっくりだ。


「あんたココにいててええの!?」

 まずそれだ。

「お葬式が24日まで出来ないから正直言って出来る事もする事も無いんですよねー。」

 本当に正直言ってやることは本当に無いのでこう答えるしかなかったのだが。


「火葬場空いてへんやつやろ?」

「ほんまそれよ。昔は夜に通夜して次の日には葬式してたのに!」

「最近はなぁ…そこら中に葬儀屋さんあるやろ?火葬場無いのになぁ。」

「そんなんそこら中に火葬場あるのも嫌やん。庭に埋めるのも嫌やけど。」

「うちおじいちゃんの時に火葬場どこも空いてなくて隣の県の火葬場まで行ったわ。遠い遠い。」

「そうそう。アレ、マイクロバス!乗らされてな。お父ちゃんの時に写真持って霊柩車乗ったけど遠くて着くまでに疲れて涙も出ぇへんくなるわ。」

「山道グネグネ揺られてな。まぁー酔う酔う。」

「山の中に火葬場作るのは分かるけどなぁ。焼き場入れて手合わせてな。また来た山道戻ってご飯食べるとかしんどいわぁ。」

「今の時期で良かったわ。うち夏やったから次の日葬式でも仏さんドライアイスでカッチカチになってたわ。」

「それでもなぁ。1週間置きっぱなしとかも有るやん。冬でも嫌な話やで。冷凍庫入れとくみたいやけど。葬式は早い方がええわー。」


 あちらこちらからおばちゃん達の葬式の体験話が聞こえて来た。マダム達は中々の手練れだ。

 やはりみんな葬式はそれなりに経験しているので話題性としては抜群だった。

 皆さんそれぞれエピソードを持っていて聞いていてとても楽しかった。

 色々火葬場と葬式のあっけらかんとした話を聞いてとても気が楽になった。おばちゃん達のパワーは凄い。


 餅を挟んで前にいる私より一回り上の奥さんが

「旦那さんのお姉さんって…まだ若いんちゃうの?お母さん大丈夫?」

と、心配そうに聞いてくれた。やっと葬式以外の話題が入って来た。

「ほんまやわ。病気してはったんか?事故か?」

 みんな私が答えるまで興味津々で餅を丸めながら見てくる。


「あー、病気ですね!糖尿病!放ったらかしにしてはって突然死。びっくりした。」


 あっけらかんと答えた。

 おばちゃん達の間でも糖尿病の人の心当たりは多々有るらしく。それぞれの病気自慢大会が始まった。

 糖尿病、高血圧、心筋梗塞、脳梗塞、ヒートショックやら色々。救急車を呼んだエピソードも満載だ。果てには関節痛に白内障、ぎっくり腰も出て来た。


「お母さんまだいてはるんやろ?」

「娘が先に…娘は嫌やなぁ。」

「今日はお父ちゃんはお母さんとこ行ってるんやな。そうしとき。」

「あんたはここでウチらと話して餅丸めてて正解。」

 おばちゃん達みんな頼もしくて餅丸めに来て良かった。と、思いつつ丸めた餅をそれぞれつまみ食いしながら雑談。

 次から次へと餅が来るのでぜんざいを取りに行く暇も無くみんなできなこを付けてはムシャムシャ食べた。


「あんたも気を付けや!ちゃんと病気なったら病院行くんやで!親より先に死ぬとかほんまに親不孝やからな!」

「せやで。本物の親不孝はそれやで。」

 一回り程上のお母さんが大学生の娘に餅を食べながら注意。

 おばちゃん達にも言われてとんだとばっちり女子大生だ。すまんな女子大生。

 しかしながらおばちゃん達の言う事は最もなので肝に免じてくれ。

 

 お菓子とついた餅のパック詰めを貰って子供達と幼児のお母さんは解散。その他大人は片付けが有るので居残りだ。

 うちはもうお留守番も出来るので帰らせた。

 片付けも終わって解散の時に家族分の餅パック3つ貰った。

 デカい餅3つ入りのパックが息子が持ち帰った分2パックと合わせて5パック…さて、全部で餅は何個でしょう?

 ママ友と

「一個半分に切らないとデカいからなぁ…」

等語りながら帰路についた。

 スッキリした。

「なんか会ったらまた息子ちゃん預かるからいつでも言ってなー!」

 ありがたい言葉を受けてそれぞれの家に入った。

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