表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
胡遙さん無駄話  作者: 南方胡遥


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/20

葬送⑨

 起きたらもう1人のLINEを送った友人から返信が来ていた。

 

 『なんか、大変な事になってそうやけど。刑事さんが家にいる時点でメガネの小学生が色々見つけて事件になりそうな展開…』


 寝起きなのか何なのか…とても素っ頓狂な返信が来ていた。

 でもこれがいい。

 一通り壮絶な流れを勢いで書いた早朝のLINEからこの返答。

 いいじゃないか。いいじゃないか。こういうのでいいんだよ。と、割り箸を割りそうな勢いだ。

 流石としか言いようが無い。


『「あれれぇ〜?このおばさんどうしてズボン履いてないのぉ〜?」って聞いて来そうね…残念ながら小学生探偵は居ませんでした。』

 私の返答も中々の素っ頓狂だ。


『小学生探偵が居なかったという事はイケメンの公安のお兄さんも居なかったな。無理しないようにね。』

 イケメンの公安のお兄さんは私も見たかったな…サラッと書かれた気遣いが沁みる。


『今から地元帰ってお姉ちゃんの結婚式の為に美容室行ってくるやで。』

『いいね!綺麗にして貰っておいで(´ω`)』

 行って来ますスタンプを送った。

 心配はしてるけど出来る限り確信には迫らないやり取りをしてくれるのがとても良い。

 理解した上でこれ以上傷付かないようにはぐらかしてくれる。

 長年の付き合いだが、出会った時から大人だったので私には絶対的大人な存在だ。この人が私の人生に存在していてくれて本当に良かった。

 控えめに言って大好きだ!大袈裟に言って愛してる!


 元気も出たのでいつも通りのママに戻る。

 息子に遅ればせながらお昼ご飯を食べてもらっている間に出掛ける準備をした。

 今日は予定通り息子と美容室に行く。

 バスに揺られて最寄りの駅に向かった。


 息子にはまだ彼の叔母が死んだ事を話していない。彼のこの後の予定を考えると楽しい事だけ考えて過ごして欲しいからだ。タイミングは今では無い。

 今からママと美容室に行って、ママのばぁばが迎えに来てくれてご飯を食べた後にじいじとゲームをする。

 次の日は町内会の餅つき大会だ。年に一度のこのイベントを息子はとても楽しみにしている。それを悲しい気持ちを何処かに引き摺ったまま過ごして欲しくない。

 私が出来る事はただ言わない事だけだ。


 ご機嫌な息子の機嫌に合わせて私も何事も無くいつものように振る舞ってバスに乗っていた。

 お子ちゃまなので先頭の1人掛けの椅子を息子は陣取った。私はその後ろの1人掛けの椅子で息子の頭と外の風景を眺める。

 1人で行動しているならイヤホンで洋楽のロックを大音量で聞くのだが。息子が一緒なのでそうも出来ない。

 だがそれがあまり良く無かったらしい。


 義姉が死んで特に悲しみの感情も無く、ただただ脳内で罵声を浴びせていたのだが。バスに揺られていると色々と考えてしまった。


 もっと見に行ってあげたら良かったかな?

 あの日声かけておけば良かったかな?

 好きなアーティストのくじ引いて持って行ったら良かったかな?

 悩みとかもっと聞いてあげたら良かったかな?

 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。


 何故か死んだ人間に心の中で謝罪を始めていた。これはヤバいなとふと我に返った。


『どうしよう?バスに揺られてたら何故か心の中で死んだ奴に謝罪をし始めてしまったのだが!?』


 先程小学生探偵の話をした相手にLINEをした。助けを求める相手はいつもこの人だ。


『それはいけない。死んだ人間に同調したら気持ちが負の方向に飲み込まれるぞ。文句と罵声を浴びせてやれ!』

『最もだ!そりゃそうだ!あんなクソ女の為に弱ってなんぞ居られるか!!』

 ありがとうよ!とスタンプを送って、いいってことよ!のスタンプが返ってくる。

 それだけで救われる人間もここにいる。折角の休日にすまねぇな…

 そのままクソ女の男性経歴の無さについて頭の中でグダグダ語りまくった。


 こちとら15歳から男に可愛がられて生きてきたんだよ!今だにその時の男が相談乗ってくれて助けてくれてんだぜ!?おかげでこうやって生きてんだよ!!お前には相談する友達どころか男も居なかったんだろ!?それでそのザマか!恨むならブスに産まれて磨きをかけなかった自分を恨め!馬鹿女が!!次人間に産まれたらもっと恋愛しろ!妄想すんな!現実に生きろ!男には抱かれるもんじゃねぇ!自分が男を抱くんだよ!!抱かれるだけの女になるな!!男は抱いて抱いて抱きまくれ!!その為に自分もいい女でいる努力をするんだよ!!分かってんのかクソ女ぁぁあ!!


 何故か死んだ人間に来世での下世話なアドバイスをしていた。

 罵声を浴びせながらディスりながらのアドバイスだ。

 お前の義妹は中々なもんだぜ?お前の弟って言う最高に出来た男を伴侶にしてるんだからな!お前の弟は最高だ!神だ!弟は最高に最強に出来た人間なのにお前はそんなにダメな人間なんだ?教えてくれよ。

 いや、夢にでも出て来て本当に教えられても困るから要らない。


 そんなこんなで駅に着いた。 

 小腹が減ったので…というか昨日の夜から何も食べていない事に気がついた。子供のご飯だけ作って後は寝ていたのですっかり忘れていた。

 商店街で息子とコロッケを買って歩きながら食べた。


「この街では歩きながら食べるというお行儀の悪い事をしても許されるんだぜぇ?」

 と息子に教えた。

「そんな訳あるか!!」

 と見事なツッコミを入れられたが、嘘では無い。 この隣町はおじさんもおばさんも若い子も老若男女ジャージやパジャマみたいな服の人が多い。

 冬でもドンキで買ったと思われるキティちゃんの健康サンダルを履いているギャルも沢山いる。


 そんな隣町で歩きながらコロッケを食べる。しみじみ「コロッケ美味いな…」と思った。

 こんな商店街の肉屋の軒先で売ってる安い揚げたてコロッケでも死んだお前は食えないんだなぁ。無様だなぁ。

 樹海で見つけた死体の前で飯を食うのが趣味の人間がいるらしいが。何か分かるぞ。その気持ち。


 でも生ゴミの前で飯を食う趣味は無いので実際に行動はしない。ただ、分かるなぁ…と思っただけだ。

 電車に乗っていざ地元へ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ