表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
胡遙さん無駄話  作者: 南方胡遥


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/20

葬送⑦

 ぐちゃぐちゃのリビングに戻り現場検証の続きだ。


「ところで、いつもご遺体の方はどこで食事をされてましたか?」

 ゴミと消毒液とキズパワーパッドでいっぱいになっているテーブルが有るのだが。

 というか、キズパワーパッドで脚を何とかしようとしていたのが信じられんな!とテーブルの上を眺めながら思っていた。

 飲み終わったペットボトル、お菓子の箱、袋に入ったゴミ、そんな物でいっぱいのテーブルの少しだけ空いたスペースで食事をしていたらしい。

「ここで2人で?」

 確かに。ココで2人で?と私も思ったのだが、どうやら義兄は食事をするスペースが無いのでキッチンの調理スペースで1人で食事をしていたらしい。


 それは夫婦の食事風景としては一緒の時間に食べているだけで2人で食べているとは言えない。

 キッチンも床に段ボールやらチラシやら。ゴミが大量に落ちている。足の踏み場は探せば有る程度だ。

 刑事さんも「なるほど」と言ってその後は何も言わなかった。

 刑事さんの聞く事は終わったのでやっと彼らはこの汚い臭い不潔と3Kが揃ったリビングから解放だ。


 あとは3階の義兄の部屋だ。初めて義兄の部屋に入って驚いたのだが。


 綺麗過ぎた。


 シーツがキチンと整えられたベッド。

 二つに折られた掛け布団。

 床にはチリ一つ無いピカピカのフローリング。

 テレビとその隣の棚には綺麗に並べられた好きなプロ野球球団のグッズ達だ。


 下のリビングとは雲泥の差だ。彼が何故あのリビングを良しとしたのかが理解出来ない。

 綺麗過ぎて違和感さえ覚えてしまう。朝起きてシーツを整えて布団を綺麗に畳むのが彼のルーティンなのだろう。

 帰って来てからこの部屋には入っていないと言うのだ。

「本当にこの部屋には入っていない?片付けして無い?」

と、刑事さんも聞いてしまうレベルだった。

 義兄の部屋で家の鍵を置いている場所と持っている人の確認をして家族3人と私が持っている合鍵で全員持っているという事だったので密室では無かったことが立証された。


 義兄よ…あのリビングを掃除しようとは思わなかったのか…。いや、多分義姉がリビングを触ったらギャーギャー喚き散らしていたのだろう。

 アイツならやりかねん。

 

 コレで本当に刑事さん達が解放された。刑事さん達お疲れ様でした。と、お見送りをして取り調べ再開だ。


「月曜日は奥さんはどうでしたか?」

「月曜日は何時に家を出ましたか?」

「月曜日は何時に帰宅されましたか?」

「その時奥さんはどんな感じでしたか?」

 この質問を金曜日までの1週間分続けた。

 途中検視官から電話が入る。


「あー、なるほど。聞いてみます。あのー、何故ご遺体はズボンを履いて無かったんでしょうか?あと、脚にビニールを巻かれていたのは何故ですか?靴下を履いていなかったのは何故でしょう?」


 はい!本日そちらの質問3回目でーす!

 お答えしまーす!で、義兄を通さずサクッと返答した。

「なるほど。ワンピースですか!ビニールは体液が布団に付かないようにですね。靴下は痛くて履けなかったのと普段から履いていなかったと…分かりました。」

 みんな聞くなぁ…もしかして試されているのか?と思うくらい同じ事を聞かれたが。まぁ、明らかにおかしな事だから仕方ない。


 そのまま取り調べを再開した。

 掛けている布団の位置、手を振って見送ってくれたとかLINEが既読にならなかったとか。

 そういった事細かな事を聞いて答えてを繰り返した。


「23時に帰って来たらリビングの電気が消えていて、寝ていると思ったので起こさないように電気をつけないまま犬の世話を行い、声を掛けずに自分の部屋に戻ったという事ですね?」

という事だ。

 耳が聞こえないのでいびきの声も聞こえない。犬が吠えまくっているのも聞こえないのだ。


「いつも通りの行動をしていて死んでいる事に気がついたのは何故?」

という質問だが。

「いつも布団を被っている筈の足がソファから出ていて布団が掛かってなかった。寒いのにおかしいと思って触ったら冷たかったので揺さぶったり声を掛けたけど動かなかった。」

 

 事細かく書類に書かれて文章にまとめて貰えた。 障害者手帳も書き写された。

"気が付かなかったのは相手を起こさない様にした気遣い"と"難聴の為いびきや寝息が聞こえなかった"という線で纏められた。

これで保護観察遺棄罪にはならないようにするそうだ。


 時間は朝6時前。

 書類のデータを送って検視官からの連絡を待っている間、温かい所に入ると寝てしまうので寒い外でタバコを吸った。

 吸った後、玄関の入った所で取り調べ官のお巡りさんと2人で雑談した。


「こういう状況ってよく有るんですか?時間が経った遺体を発見とか。」

 質問攻めからの初めて私から質問した。

 言葉を選んで話そうとしてくれたのか、ちょっとだけ悩んで答えてくれた。


「失礼な話ですが…今回の件はおかしいです。離れて暮らしている家族の発見が遅れる事は良く有ります。が、家族3人で暮らしていて亡くなって2.3日発見されないというのは正直な話…無いです。」


 そりゃそうだ。本当におかしな話だ。

「ですよね。私も義母の事は気に掛けてましたが。義姉の事はそんなに気にかけてませんでした。何を言ってもよく分からない事情を言って近付けないように自分からしてましたから。」

 私も正直な意見を出した。義姉には何を言っても無駄だったからだ。


「旦那さんが毎日姿を見ていて家庭内で孤立していた訳でもないのに…おかしな話です。すみません。」


 言った話に詫びを入れられたが、その通りの事なので逆に安心した。

 コレはおかしいよなぁ…と思っている私がおかしいのかな?よく有るのかな?という考えを払拭してもらえた。


 その後2人で寝てしまわないように屈伸したりラジオ体操をして時間を潰した。

 寝てしまいそうなのは私だけだったが、あちらはこの時間までの業務はよく有る事なのでまだまだ平気だそうだ。

 検視官から書類の内容と死亡推定時刻が一致したとの報告が入ったのでお巡りさんも解放。

 という事で義兄と私も解放だ。

 この後の流れ的には午前中に委託されている医師から旦那のスマホに連絡が入る。

 死因と死亡推定時刻と死亡証明を医師から出してもらえる。

 私はコレでお役御免だ。

 早く家に帰って死臭がする服と鼻の奥を何とかしたい。

 寝たいとかより匂いが嫌で仕方なかった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ