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胡遙さん無駄話  作者: 南方胡遥


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12/20

葬送⑥

 旦那を帰らせてからが戦いだった。

 取り調べの途中で2時間かかって財布が見つかった。

 刑事さん達もすぐ帰る筈がこんな時間に…気の毒にも犬5匹がギャンギャン吠えて、糞尿と死臭の漂うこんなゴミだらけの地獄のリビング。

 2時間探し続けて見つかったピンク色の手の平サイズの財布。

 そして中身を出して並べられた3万円と小銭とマイナンバーカードと保険証とキャッシュカード。


 彼女の浪費癖故に一度自己破産しているのでクレジットカードは持たされていないが

「クレジットカードはお持ちでは無い?」

と一応聞かれた。


 そんな事より義姉は常に金が無くて母親に金の無心をしている57歳のクソ女なのだが。

 今人気の某3人組アーティストの10周年記念BOXも発掘されていて私はその物質に釘付けだ。

 アイツ金無いくせに2万円以上するBOX買ってたんかと。

 その金はどこから出したんだ?どうせなんか言い訳して嘘ついて母親から金毟り取って買ったんだろうが!

 と、死んでもつまらん人間の業の深さがどんどん深くなっていく。

 何か一つでも徳を積めるような事を見つけさせてくれよ。本当につまらん消費しやがって。

 アレ貰って即売りに出して現金化して義母に金渡したいな…なんて思いながら、綺麗に並べられた財布の中身の横に義兄を立たせて撮影だ。

 ハリウッドセレブとの記念撮影なら私も喜んで隣に並ぶが。つまらない財布の中身と一緒に並んで撮影されている義兄は何とも滑稽だ。


「ところで、ご遺体はどちらに有ったのですか?」

と、ソファの上に立っている刑事さんに聞かれた。

「そちらです。」

と、今まさに刑事さんが立っている所を指指した。


「ここ!?ここに?」

 刑事さんは両手の人差し指で自分が立っている所を指指した。

 

 そりゃそうだろう。

 横にも前にも後ろにも謎のゴミ袋が満載だ。立てる所などそこしか無い。

 そこに遺体が有ったとして遺留品を探す為に現場を崩していたとしても刑事さんは悪く無い。

 ゴミ袋まみれの中で寝ていたゴミ袋以下のクソ女が悪い。

「ここで…撮影…」

 暫し沈黙だ。

 

 撮影係の刑事さんにもう1人の刑事さんが提案した。

「この場所だけ撮って、遺体の様子は別の所で仮撮影する?」

 別の場所…安全で綺麗で明るくて余計なものが映らないベッド…

「あの、母の部屋にベッドが有りますが…」

「そこにしましょう!!」

 決まりました。仮撮影は母のベッドです。借りてて良かった介護ベッド。

 早速一階の義母の部屋にバタバタと4人で移動した。


 横になっていた義母も何事!?である。

「お母さんお休みのところすみません。ちょっと上の遺体発見現場の様子が撮れない状態なのでこちらのベッドで撮影させていただいてよろしいでしょうか?」

 義母がまた泣きながらベッドから退けた。

「あの子はそんな自分の寝ていた所も写せないような…情け無い…本当に…情け無い…」

 いや、めんどくさいから泣かんでくれ。泣きたいのは刑事さん達だからな。

 もう泣いている義母は置いといて今はとにかく撮影だ。

 3人目の刑事さんがいつの間にか警察署から帰って来ていたのでその人がモデルになった。


「ご遺体の脚はこう?手は?横で。頭はどんな感じでした?上向きになって…口を開いている状態。ではこのままご主人は私の隣に立って下さい。撮影お願い。」

 全ての質問は私が通訳したのだが上手いこと割愛。

 

 コレもまた変な撮影だ。記念撮影だったら指をVサインにでもするところだがそう言う訳でもない。

 現場とは関係ない義母のベッドで寝ている赤の他人の隣に立つ義兄という構図だ。

 ハリウッドセレブがベッドで寝ていたらそれはそれで情報量が凄い破壊力の写真になる事は間違いない。それなら私も隣で寝たい。


 サクッと滑稽な写真撮影が終わり、泣いてる母は置いといて二階に戻る。

 3人目の刑事さんがチェックリストの様な物を開きながらもう1人の財布の中身を見せていた刑事さんが質問すると言う流れだ。


「今日は何時頃出勤して何時頃帰られましたか?」

「それを証明できる人はいますか?」

「帰りに何か買ったレシートは有りますか?」

「スマホの通話履歴とLINEを見せて下さい。」

「スマホのGPS履歴を見ます。パスワードを開いて下さい。」

「画面の写真を撮ります。」


 その日のアリバイを証明する為の質問だ。もちろん全て通訳した。


「ご遺体は何故ズボンを履いてなかったのですか?脚にビニールを巻いていたのは何故?靴下は何故履いていなかったのですか?」


 はい!出ました!その質問ね!!?

 また同じ返答をして納得されましたよ。みんな気になるよねー。

 本当に寝る時はどんなに面倒くさくてもズボンを履こう。

 心に決めた夜だった。


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