葬送④
搬送先も決まり我々夫婦と義母は後ろから車で着いていく。
火の元の確認、鍵閉め確認も私がした。何でだ?
私この家に住んで無いのだが?そもそも何で嫁いだ女の事を我々弟夫婦がせにゃならんのだ?
ポンコツだからか。コイツら全員ポンコツだからか!!?
「どうして義姉さんが一緒に住んでるのにこはるてゃが義母さんの様子を見に行かなきゃいけないの?」
と、友人によく言われる。
答えは簡単!義姉が全く動かないからさ!
昨年の秋の話だ。この女は自分の母親が庭で転けて肋骨8本折って倒れてても救急車も呼ばない。救急車に一緒に乗らない。お見舞いにも来ない。1か月入院していた実の母親の見舞いに一度も来なかった。
する事は怪我して入院している実の母親に電話やLINEで罵声を浴びせるだけ。クソの役にも立たない馬鹿女だ。
私は毎日見舞いに行った。おかげさまで私の嫁としての株は爆上がりだ。元々高かった私の株はもう頂点だ。
ありがとうよ。馬鹿女。
私は義姉が心底嫌いだ。
自分を磨く努力をしない。
自分の不幸を全て他人のせいにする。
見た目だけでなく中身もブスなこの女がとにかく嫌いだ。
引き篭もりまくっていたので接点もほぼ作らないでいた。
話をしていたら低レベルのネットで得た知識だけをペラペラと話す。
外に出ない女から得る情報など何も無い。ただただブスが感染する。
臭いも嫌いだ。風呂キャン界隈の人の匂いがする。
顎に長い髭が生えていて、髪の毛も白髪混じりの長いボサボサの縺れた髪だ。着ている服は年中半袖にユニクロのステテコに素足。
おしゃれとは何のために有るのか。コイツにはおしゃれなど存在しない。
化粧もしない。スキンケアもしない。自分自身を磨く努力を全くしない。
50代半ばで既に老女のような風貌だ。80代の義母より年老いて見えてしまうくらいヨボヨボだった。
底辺の女からは何も得られない。付き合うだけ時間の無駄だ。
そんなこんなで病院に到着だ。
先に救急車で到着した義兄が医師と話をしていたらしいが、医師の様子を見ると全く意思の疎通が出来ていなかったらしい。
駐車場に車を停めに行った私の旦那は後から来るという事で。その場にいるメンバーをご紹介しよう。
・腰が抜けて病院に着くなり車椅子を借りた義母。
・17時間後にヘアサロンの予約があるアンブレラカラーの元の赤い髪色が抜けてトリプルブリーチ丸出しの強そうな私。
・意思の疎通が出来ずアウアウ言っている義兄。
・下半身丸出しのだらしなく口を開いた顔面蒼白の死んだ義姉。
・物言いた気にしている女医。
以上だ。
女医がまず状況を聞くために選んだメンバーはアンブレラカラーのトリプルブリーチ頭の強そうな私だ。
「あのご遺体は何故ズボンを履いていないのですか?」
はい!それー!
「そうですよね!?」
私も聞きたい。という事で義兄に聞く。返ってきた答えはこうだ。
「上に着ている服は実はワンピースで、彼女は確かにいつもああいう形のワンピースを着ていました。それがどうやら上に捲れてあの様な形になった様です。」
納得して頂けたら次の質問だ。
「何故あのご遺体は脚にビニールを巻いていたのですか?」
それな!!私も知りたい!コレも義兄に聞いた。
答えはコレだ。
「ふくらはぎ全体が膿んでいて汁が出るからその汁が布団に付かないように巻いていたようです。」
脚全体が膿んでいたと言うのも中々壮絶なのだが。家族はそれを見て病院に行くように諭してしたのだがな。本人は聞き入れずビニールを巻いていた。
納得して頂けたのだが。次の質問だ。
「何故この冬の季節に靴下を履いてないのでしょう?」
それは私でも分かる。
「脚が膿んでいる状態で靴下を履いたら痛かったのでは?そもそもあまり靴下は普段から履いていませんでした。」
全てご本人の意思でそうなっていたという事をご理解頂けた。
他者からの無理強いでズボンを履いていなかった事を疑われていたようだ。
質問が終わって暫くロビーで待っていたら駐車場に車を無事に停めてやって来た最後のメンバーの登場だ。紹介しよう。
・1週間の出張を終えてクタクタになっているところを呼び出された旦那。
コレでメンバーは全員揃った。
診察室に通され我が家のメンバー4人で女医の話を聞く。
「多分、亡くなられてかなり時間が経っています。1.2時間では無いです。死後硬直がかなり進んでいて、肺に水が溜まっている状態です。」
静かに聞いているが、私は内心「でしょうね。」である。
「こちらではこれ以上の事は出来ないのでこの後警察の方にご遺体は引き渡されます。検視だけで済むか検視解剖になるかはこちらからは何とも言えません。」
との事で。
とりあえず警察が来るまで遺体とご対面だ。
死亡確認時間を告げられてしばし待つ。
先に書いたように私的にかなり嫌なので。辛うじて人を保っている汚い遺体は見たく無いし、臭いも嫌だ。
早く警察来ないかなぁ〜。で有る。「トイレ行って来る」とでも言って外に出てやろうかとも思うくらいだ。
20分ほど待ってやっと警察が来た。刑事3人と取り調べ官1人だ。
遺体は収納バッグに入れられてそのまま警察車両のワゴンに運ばれた。
これでやっと暫く遺体を見なくて済む。
ロビーに出たら本気の尿意に襲われた。寒いから仕方ない。
「トイレ行って来るわ。」
と、足早にその場を去った。
用を済ませてロビーに戻ると長椅子に座って義兄が刑事さんと取り調べ官に両脇を挟まれて取り調べを受けていた。
義兄は何かを言っているが警察関係者2人は全くペンが動いていない。旦那と義母は別の刑事さんからこの先の事を聞いている。
「えっと…どうしよっかな…筆談とか出来るかな?」
と、義兄の取り調べをしている2人は困り果てていた。
「兄ちゃん、お姉ちゃんが死んでるって気が付いたのはいつ?」
私はあまり外したく無いマスクを取って義兄の正面に顔を合わせて中腰で立ち大きな声で聞いた。
「あえっえいえあら、あいあえおああ、あわっああ、ちゅえああっあ。」
「帰ってきてから足が布団から出てたから触ったらつめたかったんやな?」
「おうおう。」
取り調べ官の方を見て
「帰って来たら布団から足が出てて触ったら冷たかったそうです。」
「それは何時頃ですか?」
義兄の方を見て
「それって何時ごろやった?」
「にういににあん。おうの。」
両手の人差し指を立てて11を作った後3本指と親指と人差し指で丸を作って見せた。
「夜の11時半?」
「おう。」
と頷いた。
「23時30分だそうです。」
「なるほど!」
やっと書類にペンが走り出した。
「言ってる事分かります?」
刑事さんと取り調べ官に聞いたら2人で顔を合わせてから私の方を見て
「全く分からないです!助かります!」
で、そのまま同じ流れで通訳をした。
警察側からの質問を私が受けて、分かりやすく義兄に質問して、聞いた事を警察側に伝える。
ロビーで暫くこの流れを続け、車両側の準備が出来たので家に現場写真の撮影と遺留品捜査をしに来る事になった。
「亡くなられていた現場とご遺体の身分証明が出来る物を撮影したら終わりですので。すぐ終わります。」
との事。
なら安心。と帰る事になった。
旦那と相談して、私は自宅で寝ている息子が気になるので先に帰る事にしたのだが。刑事さんに呼び出された。
「すみません。第一発見者の通訳で一緒に現場にいてください。お願いします。」
ううん。俺ちゃんおうちに帰れないや〜。
「居てもらえますか?」じゃない。「居て下さい。」だ。断れないやつだ。
という事で旦那に伝えて旦那は義母の付き添いで取り調べ。
私は義兄の通訳で取り調べ。という事で時刻は深夜1時半。
息子がスヤスヤ寝ている事を願って義実家に戻った。




