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妄想の帝国

妄想の帝国 その106 ジコウ党珍応援演説

作者: 天城冴

よとうジコウ党でありながら非公認という立場で選挙に臨むマンマルヤマだが…

ニホン国の中ぐらいの西寄りの大昔ミヤコのあったあたりの駅前広場。

なぜか道端に花束やらが添えられる何やらいわくつきのその場所に陣取って、衆議院候補立候補者として街頭演説をしているのは故アベノ総理のお気に入りの一人だったマンマルヤマ・ダマヨ。一時は初の女性総理候補といわれていたが

「私、与党ジコウ党のマンマルヤマ・ダマヨ、非公認というハンディを…」

“ハンデじゃないだろ!裏金発覚だからだろ!いー加減な金勘定して、それでも議員か、元大臣か!”

「い、いえ、その、ワタシは口座管理はきちんとやってまして、決していい加減では…」

“自分でやっててそれかよ、そんな目が節穴、頭空っぽの奴が議員になるな、高い報酬貰ってんな!”

と口を開いた途端、ヤジが飛びまくりの嫌われっぷり。方々に呼びかけ、グレーゾーンすれすれ、いや実は脱法行為もあるんじゃないかというやり方でサクラに動員をかけまくっても人の集まりはいまいち。

「ううう。せ、せっかく、こ、このアベノ総理のゆかりの地で演説してるのにこの有様、こ、こんなことでは…」

と、マンマルヤマが落ち込むところに、一台のド派手な車が止まり、これまたド派手なショートカットの女性が降りてきた。

「ほほほ、マンマルヤマさん、ワタクシが来たからには大丈夫よ!」

と豪快に言い放ったのはダカイチ・バナエ。同じく故アベノ総理によって引き立てられ、総理候補にもなった人物。息を吐くように嘘をつきまくり、応援者には砂をかける真似をしまくって不義理を重ね実は不人気。さらに怪しげなデマを言い放って思考が茹で上がって変に固まったネトキョクウたちにウケが良すぎて、逆にマトモな党員に敬遠され、今は必死に全国行脚の最中。

「ダカイチさん、ありがとうございます。やはり、この場所に来られたのですね」

「当然よ、もちろんあの方も」

ダカイチの声に、一台の車がまーそこそこ派手に停車。そして同じくそこそこ派手というか、センスがいいわけではないけどつい見てしまう、はっきり言えばちょい場違いというか、変な感じの熟年女性が降りたつ。

「うふふ、来たわよ、皆さま、夫のためにお集り…いえ、選挙頑張ってくださーい」

と、能天気な声を放つのはアベノ元総理の未亡人アベノ・アキエコ。数々の公務でTPOを外しまくり、アトウダ副総理夫人に公に服の乱れを直され、各国首相夫人に低俗すぎる話題を振って困惑させるという歴代総理夫人のなかでも低レベルを誇ってきた彼女らしい的外れなご登場である。

それでも、故アベノ総理を慕う二人は

「アキエコさん、よくおいでくださいました」

「アベノ元総理の奥様が来ていただければ鬼に金棒です」

と、その流行遅れというか、廃れかけた御威光にすがる気満々。それを知ってか、知らずか、アキエコ夫人は嬉しそうに。

「うふふ、二人とも、アタシだけではないわよー、夫の魂もこの場に応援に駆け付けているわ」

「あ、アベノ総理が」

「そ、総理ありがとうございます」

いや、いくら元総理とはいえ、死人に応援してもらってどうするんだとツッコミが入りまくりそうだが、女性三人はそんな外野の声が聞こえているのか、いないのか。

「マンマルヤマさん、この夫の最後の地で、貴女が選挙演説することを夫はとても喜んでいます、貴女を見守っています。夫を慕ってくれた貴女をきっと、いえ必ず当選します、するのです」

「は。はいアキエコ夫人」

「そうよ、マンマルヤマさん!ワタシたちはアベノ総理の意思を継いで、アベノノミクスをつづけ、サクラヲ愛でる会を復活させ、そして再びアベノ総理の御威光をひろめるのよ。ワタシはその後継者となるのよ。そのワタシを支えるためにも絶対当選よ」

「うふふ、ダカイチさんも当選確実よ。夫がそういってるわ。…みなさん、夫、アベノ総理は彼女たちを応援しています、夫の魂はここにおり、彼女らに投票を呼び掛けています」

「アベノ総理がおいでです!ア、ベ、ノ、アベノ、総理の応援に私はー」

「アベノ総理ご降臨、皆さん、聞いてください、ワタシ、ダカイチもー」

と声を張り上げる女性三人を道行く人は

“わー大丈夫かよ、ついに死人まで出してるし”

“それもさー非業の死を遂げた場所で”

“だいたい、生きてる時も死んでからいろいろ問題あった人じゃん、アベノさん”

“あー夫人もさあ、政治団体を経由して巨額の遺産を相続税無しで受け取ったってんだろ。だいたい裏金放置、推奨してたようなもんじゃんアベノさんて、アベノ派が一番多いんだろう裏金”

“だけじゃなくてさあ、なんとかマスクとか、ガケイ学園とかよくわかんないオトモダチとかへの利益誘導とか酷かったじゃん”

“だけじゃなくてさあ、レイプ魔とか庇いまくって、そのくせニホンの大学の研究費とか削りまくって、基礎研究ダメにしちゃった無能ア〇ジャン、あの人”

“そんなのに死んでまだ縋り付くなんてさあ、アイツら正気?”

“ジコウ党なんて〇チガイつうかさあ。だいたいアレに入れる奴ら利益団体とか、既得権益団体の関係者じゃん、あんま考えてないし。三権分立とか、わかってない頭が江戸時代の連中がほっとんどじゃん”

“あージコウ党自体、議会制民主主義わかってないから。選挙のチラシに『ジコウ党なら法案を通せるんです』って、それジコウ党だからじゃなくて多数派だから。今回の選挙で少数派になったら、どーすんだろーね”

“カシコイ奴なら新しく与党になった連中も賛成するような法案考えられるだろうけど、正直中三の社会で習うことも理解できないような奴はダメだろうよ”

などど、冷たいというか笑いを含んだというか、憐れみと軽蔑と嘲笑などが入り混じった視線を彼女らに向けている。

 たまーに彼女らが大声で“アベノ、アベノ”いうさまをみて

“ママー、あのおばちゃんたち、何してるの、あべのあべのって何かのおまじない?”

と指さす子供がいたりするが

“し、見るんじゃありません”

と母親がまるで危険物のように子供を素早く遠ざける。

 聴衆というか周りの呆れ切った反応をものともせず、アキエコ夫人らは

「夫、アベノ総理がマンマルヤマさんを応援しています、あの世からの応援、その神通力で必ずや当選します、皆様の一票が集まります!」

「アベノ総理の尊い応援が聞こえます、マンマルヤマさん当選確実、そしてワタシ、ダカイチが次の総裁、すなわち総理に」

と、どこぞの宗教の説法のような演説?を続けていた。


どこぞの国では議会制民主主義をとりながら、それを理解しないで、議員になろうというというヒトを立候補させまくっている与党があるそうですが、そんなのを与党にして大丈夫なんですかねえ。大丈夫じゃないからいつまでも明後日の方向に進んで、自己奴隷化をしすぎた多くの国民がオカシクなっちゃったんでしょうかね。

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