第1話
第1章 英雄
へんな夢をみた。
とびきり気分の悪い夢だ。何故か鮮明に覚えている。思い出したくもない。
時間は午後7時。もう夜だ。
今日もなにもすることがなく、一日が終わっている。
いや、今日もこれから始まるのだ。
パソコンを起動し、とあるソフトを開く。そうと、名作いわれるロールプレイングゲームだ。
一通りプレイした後は、当ゲームの考察動画を視聴し、考察掲示板で議論。
何回も繰り返し冒険した。各キャラクターのセリフもすべて覚えている。
そのぐらい、このゲームが大好きで、そしてそれが今の自分の生活のすべて。
仕事はしてない。気付けばもう1年ぐらいたったのだろう。
減っていく貯金残高を見ながら、そうやって過ごしてきた。
もう携帯電話は長らく触れてすらない。きっと、大量のメッセージ通知が来ているのであろう。
だが、そう分かっていてもどうしてもそれを開く気になれない。なぜだろう。
もう朝の4時だ。
考察掲示板での議論に思いをはせながら横になる。
今日も素敵な解釈に気付けた。新しい発見だ。ひとつ、自分の価値観が増えた気がする。
…だから何だ。
この世の中は、何も変わっていない。というか、自分はもう今の世の中を知らない。
ただ、誰にも悟られず、起きてゲームして寝るだけの日々。
そんな自分が、この世界にいる意味なんかあるわけがない。自分に価値なんて無い。
そんな事を考えながら、今日も意識を失っていく…
土日更新予定。物語の結末はまだ決まってません。