6話 戦闘狂、三下を釣る
「如何にもヤバいところですよオーラが出ているところ発見!」
明らかに異様な雰囲気を出している通りを見つけたので入ってみる。
しばらく、歩いていると前から明らかにヤバそうな3人組がこちらに向かって歩いてきた。
これはさっそく釣れたかな?
私がそんなことを思っていると、
「おい、女。何があっても一人で狭い通りには入るなって親に教わらなかったか?」
完全に目がイッちゃってる真ん中の男が話しかけてきた。
「へ~、知らなかったわ。私はこれからどうなっちゃうの?」
もちろん知っているのだが、一応聞いておく。三下セリフを出させるための礼儀だろう。
「そうか、知らなかったのか。可哀そうなやつだ。お前はなぁ、これから俺たちに捕まえられ奴隷商に売られ、慈悲の欠片も無い主人に死ぬまで道具として扱われる運命だぁ!!」
男はニタニタと笑いながら、突っ込んでくる。
「少しの間気絶しときな女ぁ!」
男はそう言いながら、拳を振り上げる。
「なんともまぁ予想通りな展開なこと...、遅い」
私は欠伸が出そうになるくらい遅い殴りをかわす。
「なっ⁉」
男が間抜けすぎる声を上げる。
避けられるとは微塵も思っていなかったのだろう。
「ちっ、お前らその女を捕まえろ」
男が他2人に命令を出す。
命令を出された2人は目を見合わせると、魔法を発動させた。
直後、私の体は全くといって良いほど動かなくなった。
体には緑色に輝く氷のツタのような物が巻き付いていた。
「拘束魔法?」
「あぁ、そうだぜ。いくら攻撃を避けるのが得意でもよぉ、これじゃ避けることもできないよなぁ」
「それはそうね、普通の人間なら」
私は全身に力を入れ、外から押さえつけようとする力よりも強い力を内側から与えた。
すると、
バキン‼
緑色に輝いていた氷のツタが音を鳴らし砕け散った。
私はすぐさま≪拘束魔法≫を使った2人に近づき、腹目掛けて死なないギリギリのラインの力で殴った。
殺さないのは、殺す価値のない雑魚だからだ。
殴られた2人の男は声も出さず泡を吐きながら、その場に倒れこんだ。
「よし、これで後はあなただけよ」
私は振り返り男に向かって歩き始めた。
「やめろ、こっちに来るなぁ!!」
男は今自分が置かれている状況を理解したのか、私から逃げるように走り始めた。
「はぁ……、さっきまであんなにイキイキしてたのに負けそうになったらすぐにこれ。死ぬ覚悟があって、ああいうセリフを吐くんならまだ良いんだけどねぇ」
私は呆れながら、逃げる男の前方に瞬間移動をし蹴りを入れた。
男はグヘッと声を上げながら、さっきまで私がいた場所に吹っ飛んでいった。
これまた殺してはいない、ギリギリ会話ができるくらいには手加減を加えた。
「ねぇ、私は別にあなたを殺そうなんて微塵も思っていないの。その代わり情報をくれない?」
そこから、私はすっかり怯え切った男から情報を吐き出させた。
結果として、ここら辺を仕切っているボスがいるということを教えてもらったので、そのボスのところまで案内をさせた。
――そして今私は応接室にいる。
「俺の部下があんたに迷惑かけたようだ。すまなかった」
目の前にいるボスこと、ビジルは私に頭を下げ謝罪をしてきた。
正直意外だ。何かと難癖をつけてくるかと思っていた。
「ミリーナさん、そんな意外そうな顔をしないでくれ」
どうやら顔に出てたらしい。
「いやごめんなさいね。あんな連中のボスなんて絶対にロクでもないやつだと思っていたの」
「ははは、自分で言うのもなんだがこういう組織のボスは比較的まともなやつがなるんだ。じゃなきゃ組織が簡単に崩壊しちまうからな」
「確かにそれはそうね。あと私は別にここを潰す気なんてないから安心してね。聞いていると思うけど私が今一番欲しいものは情報よ」
「それはありがたい。うちの全勢力でかかってもミリーナさんに勝てる気がしないんでね。して、どのような情報をお求めでしょうか」
「……魔王関連の情報よ」
最初は後々のことを考え濁して聞いた方が良いかと思ったが、ビジルの私に対する態度を見ていたら直接聞いても問題ないだろうと感じたので濁さず、ストレートに聞いてみた。
まぁ、何かあったらその時だ。正当防衛でボコす口実ができる。
「魔王……?」
ビジルは顎に手を当てて悩んでいる。
「ない?」
「いや、噂レベルになるんだが、とんでもなく強い魔族が現れたという話は先日裏の人間から聞いたぞ」
「強い魔族ねぇ、どこに現れたか聞いてる?」
「北にあるガロ遺跡だそうだ。この町からだと歩きでおおよそ4時間程度のところにある」
ふーむ、その魔族が魔王かどうかは分かんないけど行ってみる価値はありそうね。
「そう。情報感謝するわ」
聞きたいことは聞けたので私は席を立ち、扉に手を掛ける。
「まさか行くつもりなのか。いくらミリーナさんでもヤバいんじゃないか?」
ビジルは不安そうな顔でこちらを見てくる。
「ん?まぁもし死んだらそれは自己責任だし、あんたが特段気にする必要はないと思うんだけど?」
「そ、そうか?まぁミリーナさんが決めたことだ。これ以上他人の俺がとやかく言うことはしない」
「そう、話が早くて助かるわ」
私は今度こそ扉を開け出ていった。
さぁ、待ってなさい。魔王!