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3話 戦闘狂、一千年後の世界で初戦闘をする


「リンってさ魔王の居場所知ってたりするの?」


クルアの町に向かっている道中、歩きながらふと気になることを聞いてみた。


これでリンが魔王の居場所を特定してくれたら楽でいいのだけれど。


『……いえ、いくらわたしが魔力の感知に長けているとはいえ、通常状態である魔王の居場所までは分かりません』


リンが申し訳なさそうに言う。


「そんなに落ち込まなくても良いわよ。それに……もうすぐ敵がこちらに来るわ」


私が常時発動している≪気配察知≫に複数の反応が見られた。


 『え、あ、本当ですね』


 もしかして気づいてなかったのかな。

 珍しい、絶対気づいてるって思ってたけど。

 まぁ申し訳そうにしてたからそっちまで気が回らなかったのだろう。 

 

 

 しばらくすると3匹の白い魔物が私の前に現れた。


『ウルフですね。おそらく真ん中の大きいやつがボスウルフかと』


「ウルフね……」


ウルフといえば、私がまだ弱かったころの練習相手として丁度良い存在だった。

来る日も来る日もウルフと戦い続けていた。


なんて思い出にふけっていて、動かないでいるとボスを挟んで左右にいるウルフが牙をむき出しにして、こちら目掛け突っ込んできた。


っていっても私にとったらスローモーションのように見えている。


それもそのはずで私が弱かったころの練習相手になっていたぐらいの存在だ、ウルフ自体今の私から見たら雑魚も同然。


私は向かってくるウルフに対し、異空間から剣を取り出し応戦した。


「雑魚に用ないの、威力最小《終焉魔球》」


剣の先端に球体にしては少し歪な形をしている白黒のものが出現する。

私はその白黒のものを二匹のウルフに当たるように放つ。


ウルフは近距離で放たれたため、回避が間に合わずそれに当たってしまった。

瞬間、衝撃波が生まれ、周囲の木々はへし折られ二匹のウルフはあとかたも残らず消滅した。


《終焉魔球》とは当たればいかなるものも有無を言わせず葬り去る魔法だ。

今回みたいに威力を押さえたならまだしも、普通に撃たれたら私であろうと例外なく消滅するだろう。

もっとも当たる気なんてサラサラないけどね。

一千年前に戦ってきた強者たちは皆避けてたし。

当たれば絶対殺せる最強魔法、しかし当たらなければなんてことはない魔法だ。


つまるところ、雑魚狩り魔法と言っても良い。


そんな光景を見てリンがツッコミをいれてくる。

『あのー、ミリーナ様?魔物の素材無くなりましたけど』

「あ……まぁまぁ、あのボスウルフから剝ぎ取れば大丈夫よ」


 完全に素材のこと忘れていた。許してリン。


 っとそんなことはおいといてボスウルフだ。


 私がボスウルフの方を見ると、呆然としていたボスウルフは自分が見られていることに気づくとこちらを睨んできた。


先ほどの魔法を見て驚きはしたが戦意喪失まではいっていない。そんなところだろうか。


その様子を見て、思わずホッとする。

私の見立てじゃ、こいつはあの最強勇者(弱い)なんかよりもよっぽど強い。


おそらく一千年かけて魔物のレベルが格段に上昇したのだろう。

まぁこいつがただ単に強い個体の可能性は捨てきれないが。

しかし、もし前者ならば私の中で大きなことといえるだろう。

なぜなら、私と対等に戦える奴が魔王以外に存在しているかもしれないからだ。

想像するだけで楽しみだ。


私は戦闘中にも関わらずそんなことを考えていると、ボスウルフは私を目の前にしたこの状況で、あろうことかバフ魔法をかけ始めたのだ。


おそらく私が一向に攻撃してこないからさっきの魔法の反動で動けないと感じたのだろう。


 「《能力向上》《自動回復》《魔法ダメージ軽減》《物理ダメージ軽減》っていったとこね」


《能力向上》は自身のステータスを底上げするスキル。

《自動回復》は自身の体力を少しずつ回復するというスキル。

《魔法ダメージ軽減》《物理ダメージ軽減》は魔法攻撃と物理攻撃で喰らうダメージを軽減させるというスキル。


一通りバフを掛け終えたボスウルフは「いざ」というように咆哮を上げた。

牙を剥きだしにして、こちらへ向かってくる。

素のスピードと《能力向上》によって、さきほどのウルフどもとは比にならないほど、速いスピードでこちらへ飛び掛かってきた。

しかし、その程度のスピードで噛まれるほど私は鈍くない。


軽く横にステップをし躱す。

ボスウルフの牙が空を喰らう。

それでも「まだだ!」というように小さく吠え、ボスウルフは足が地面に着くのと同時に体を反転させ、私の首元目掛け二度目の噛みつき攻撃をしてくる。

さきの攻撃よりも格段に速くなっている。


私は黄金の髪を揺らしながら、こちらに飛んでくるボスウルフの横腹をすれ違いざまに剣で切り裂く。


風切り音を鳴らし刃が、ボスウルフの横腹に入り血が勢いよく吹き出した。


しかし、それも一瞬の出来事。

ボスウルフの体が緑色に発光すると出血が止まった。

即時に≪自動回復≫が働いたのだろう。


ボスウルフは飛びかかってきた勢いのまま私の後ろに着地すると、又しても間髪入れず反転し、鋭い爪をこちらに向け飛びかかってきた。


さきほどの噛みつき攻撃よりも数倍以上の速さで迫ってくる。

更にスピードが上がることに驚いたが、それでもまだ遅い。

 

 私は振りかざされた爪を剣で受け止め、爪が剣によって完全に切られる前に体を回転させ、その勢いのままボスウルフの横腹目掛け蹴りをいれる。

 

 グギッ!

 

 ボスウルフの骨が砕ける音がする。

と同時に勢いよく蹴った方向へと飛んで行った。


蹴りを貰ったボスウルフは木にぶつかり、瀕死の状態で横たわる。

≪自動回復≫では傷の修復が追い付かないのだろう。

《物理ダメージ軽減》のおかげでかろうじて死んではいないが、口からは血を吐いており、自前の白い毛が赤く染まっている。

おそらく時間の問題で死にいたるだろう。

私的に苦しませて殺すのは趣味じゃないし、ひとときの間楽しませてくれた礼として苦しませずに殺してやろうとボスウルフに近づく。


そうするとボスウルフは私が近づいてくるのを感じたのか、そのボロボロの体で立った。

 血を大量に吐いていたせいか息遣いは荒く手足はぶるぶると震えている。すでに死んでいても不思議ではない状態だ。

しかし、あろうことかこのボスウルフは立っているのだ。

私はそんなボスウルフを見て思った。


ああ、お前もこっち側か。と


今こいつは圧倒的不利な状況に置かれている。普通のものなら絶望を味わっているころだろう。現に私によって瀕死になった魔物の多くは私に対し恐怖を覚え、これから訪れるであろう死に絶望するものが多かった。人間の私から見ても分かるほどに顔を歪めて。

しかし目の前にいるこいつはどうだ?


こいつは顔を歪めるどころか笑っているようにさえ見える。まるでこの戦闘を楽しんでいるかのように。

私が今まで戦って瀕死にさせてきた魔物とは全く違う反応を示している。

普通の人間なら瀕死になっているのにもかかわらず、やけに楽しそうにしているウルフを見て困惑するだろう。だが私にはこいつの思考が分かる。分かってしまう。


だから全力で答えてあげよう。


「まさか一千年後に来て一番最初に戦った相手が同類だなんて。面白いこともあるものね。さぁ来なさい私が屠ってあげるわ!」


 私は同類にあえた喜びを感じながらボスウルフに最大の敬意を払い、全力で相手をしてやろうと思った。


そう私が言い放った後、その場でボスウルフは私の言葉が通じたのか、こちらを睨みながらスキルを発動させた。

この最終局面ボスウルフにとって圧倒的不利な状況でのスキル発動。つまりこのボスウルフの切り札的存在ともいえるスキルの発動。それも私を倒せると見込んでのもの。

発動させないようにここでボスウルフを殺すのは簡単なのだが、もちろんそんな寒いことはしない。ボスウルフもそんな私の考えを読んだ上での行動だろう。


スキル発動後ボスウルフの気配が最初に会ったときとまるで別ものになっていく。

感じたことのない気配。

ボスウルフの体から紫色の炎が現れ、その炎はボスウルフの体を覆うように全身に広がった。


「私ですら見たことのないスキル……」


こんな切り札を持っているなんて面白いじゃないの。

紫色の炎を纏ったボスウルフはゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。

強烈な殺意を持ちながら。


これはもしかしたらものすごい一撃がくるかもしれないわね。

最大限の警戒をしながらボスを見つめる。

おそらくこれで決着がつくだろう。


そんな中、ボスウルフと私の距離が2mをきった瞬間、ボスウルフは今までの戦闘で見せたことのないスピードをもって、私の心臓を抉り取るような鋭い一撃を己の爪に乗せて放ってきた。

 


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