2話 一千年後の世界
『・・リ・・マ・・・て・・・・ミリー・きてく・・・・・ミリーナ・・・きてく・・・・い』
どこからか声が聞こえる。聞いたことのある声。
『ミリーナ様起きてくださいリンです!一千年後の世界に来ました!』
「う…うう……わかったわ」
そのバカでかい声のおかげで眠っていた私はガバっと目を覚ます。
状況から察するに、転移は無事成功したのだろう。まぁリンのことだから失敗はないと思っていたが。
それに使った魔力が全回復してるということは、しばらくの間ここで眠っていたということか。
「ん、おはようリン。無事に成功してなにより」
そう言いながら周囲の状況を確認するため、まだ半分しか開いていない目を無理やり開け、衣服に着いた土汚れを手で落としながら立ち上がり周囲を見渡した。
「森のようね」
『ここはキリネの森って言うそうですよ』
「リン、あなたこの時代のことも知っているの?」
『いえ、全く知らなかったので、ミリーナ様が寝ておられる間に周辺情報を調べてみました』
「そう、ありがとう。それにしてもキリネの森……聞いた事ないわね。まぁ一千年もたったんだし聞いたことがなくても当たり前よね。ところで、リン通貨とかはどうなってる?やっぱり変わってたりする?」
一千年後に来たのだ。
言語が変わったとかならスキルでカバーできると思うけど、通貨が変更されていたらさすがにカバーできない。もし、カバーできたら通貨という物の意味が完全に失われる。
『……ミリーナ様がとてつもなく慎重になっています!戦闘しか興味のないミリーナ様が、もしかして転移の際に頭でも打たれましたか!?』
「あのね……、一千年後に来たのよ。さすがに少しは慎重になるわ。それで質問の答えは?」
よほど私が慎重に行動しているのが、意外だったのか普段余り驚かないリンがかなり失礼なことを言ってくる。確かにリンの言う通り戦闘にしか興味はないけども。
『あ、はい。通貨ですか……、変わってますね。現在では……』
一番上から神金貨、聖金貨、王金貨、金貨、銀貨といった感じで銀貨10枚で金貨1枚、金貨10枚で王金貨1枚、王金貨10枚で聖金貨1枚、王金貨10枚で神金貨1枚らしい。
簡単なのでとても助かった。難しかったらどうしようかなーって思っていたところだ。まぁ多くの人間が使うものだから難しいっていうことはあり得ないのだが。
とにかく通貨事情は分かったので、私がまずやらなければいけないことは魔物を討伐して、その素材をギルドやらなんやらに売ってお金を入手するところからだ。
もっとも一千年前にあったギルドが今の時代あるかは分かんないけど。もしなくてもその辺の店にでも売れば解決するだろう。
「よし、そうと決まればさっそく魔物を狩りにいくわよ!」
『はい、ではミリーナ様から見て右側の方向へしばらく歩き続けるとクルアの町と呼ばれる所がありますので、そちらに向かいつつ魔物を狩れば時間短縮もでき良いかと』
「そうなのね~ありがと!」
私はリンに言われた通り歩き始めた。