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「「サフラン様、C班、ロロイとナキキの信号がロストしました」」
木の枝にとまって右耳辺りを翼で押さえ目をつぶったままサフランは黙って通信を聞く。
「2人が配信に向かったのはキュイエールだったよな? 隣町のササラとイルルの状況はどうだ?」
「「はい、ササラ、イルルとは連絡がついています。彼らは特に異変は感じなかったとの報告を得てます」」
首を捻り考え込むサフランの耳に激しいノイズと共に通信が入る。
「「サフラン様! 北の町フフエールにてF班、カツイとメメルの信号がロストしました」」
「なんだと⁉ あいつら東に向かっているんじゃ。……誘ってやがるのか? だとすれば俺らが2人を討伐したことに勘付いての行動ってことか」
くちばしをギリギリと噛むサフランに別の通信が入る。
「「東の魔王シラントロ様の領地内で戦闘確認! 勇者です!」」
目を大きく開いたサフランが、耳元をポンと叩く。
「このタイミングっ、絶対に狙ってやがる! 回線オープン、全部隊に告ぐ! 東のシラントロ領にて開戦確認! 対象者の1人である勇者を発見! 担当の者たちは状況を報告! 魔王オレガノの命令が出次第追って指示を出す! 北へは俺が向かい確認。先行部隊は案内を頼む!」
サフランが全部隊に指示を出すと耳をぎゅっと押す。
「おい、社長、ローリエ聞いてるな、北には魔法使いがいる可能性が高い! 存在を確認次第、ダンジョンへ強制移転を開始する! 準備を頼む!」
そこまで告げると翼を広げ空へと飛び立つ。
サフランの言葉を聞いたローリエがスタッフの集合をかけつつ指示を出し、会社にいたアンジェリカがダンジョンの状態の確認や罠の起動の指示を出す。
***
慌ただしく動き始める周囲の状況が通信からも把握でき、困惑の色を隠しきれないナツメグたちだが、心配そうにするオレガノを連れ拠点へと向かう。
「オレガノ様、足下に気をつけてください」
「うむっ、分かったのじゃ」
フェネルがオレガノの手を取りながら先を急ぐ。
「「北より、魔力反応! うわっ!」」
耳につけているイヤホンから、慌てた様子の声が聞こえるが一瞬でノイズへと変わる。
「早く帰ろう!」
嫌な雰囲気を感じ取ったナツメグの言葉に頷いたフェネルがオレガノを抱っこすると、足早に拠点へと向かう。
「あれってなに?」
モナルダが上を見上げて指さす方には昼間だというのに赤い光を放つ流れ星が真っ赤な軌跡を引く。
空の一部に赤い線を引いた流れ星は空中で静止したかと思うと、突然方向を変え真下へと急降下していく。
そして、真っ赤な光を放ちカセロールの町へと落ち、大きな爆発と共に町の一部を吹き飛ばす。
「なっ、なにが起きたの⁉」
「オレガノ様っ大丈夫ですか?」
爆風を腕で防ぎながら、しかめっ面で状況を確認するナツメグと、オレガノを強く抱きしめながら身を守るフェネルをモナルダが前に出てサポートする。
爆風の余韻で舞い上がる砂塵に混ざってバチバチと電流が走り、押しつぶされそうなほど膨大な魔力の圧が辺りを支配する。
薄くなっていく砂塵に人影が現れると、影を中心に風が吹き荒れ砂塵を吹き飛ばし影は魔女っ娘へと姿を変える。
「じゃじゃーん! カラミィーテちゃんの登場で~す」
ウインクしながら可愛らしくポーズを取るカラミィーテを前に、ナツメグたちがそれぞれ隠していた武器を手に取る。
「はじめましてだよね、魔王オレガノちゃん! う~ん、配信映像で見るよりも可愛いじゃん。それと……ナツメグ、フェネル、モナルダの3人だね。魔王オレガノちゃんの護衛お疲れさまでぇ~す」
敬礼をするカラミィーテがクスッと笑うと同時に右手でナツメグが振り下ろした刀を受け止める。
カラミィーテの手に刃は届いておらず、見えない魔力の壁をナツメグは歯を食いしばって押す。
「必死になっちゃって怖いなぁ~。あたしまだ何もしてないじゃん……あ、町壊したか。やってんねあたし! うぷぷぷぷっ」
自分でノリツッコミして笑ったカラミィーテが刀を受けている手の指を僅かに振ると電流が走りナツメグが吹き飛ぶ。
ナツメグが民家の壁が崩壊するほど叩きつけられ煙が上がると同時に、フェネルが投げた数本のナイフが弾かれ空中で回転し舞う。
ナイフが地上に落ちるより前に大きく跳躍したモナルダが2本の剣を振り下ろす。受け止められてしまうが、すぐに剣を引きしゃがむと足払いを放つ。弾かれてなお、回転しながら剣を振るう。
モナルダの双剣と体術の連撃を軽々と手で受け止めていくカラミィーテ。その足下に落ちていたフェネルのナイフの持ち手から芽が生えると、一瞬にして成長した蔦がカラミィーテを捕らえんと伸びる。
鞭のようにしなり襲う蔦はカラミィーテに届くことはなく弾かれてしまうが、伸びた蔦の攻撃に合わせモナルダが回し蹴りを放つ。
それを右手で受け止めたカラミィーテが左手で反対方向からきたナツメグの刀を受け止める。
「あれあれ? 情報よりもいい動きするじゃん。ガーゴイルくんたちの記憶だと、3人ともかなり弱いはずなんだけどなぁ。これは味方にも情報制限してたっぽいなっと」
目を丸くしてわざとらしく驚くカラミィーテが指を鳴らすと周囲が爆発し、ナツメグとモナルダが吹き飛ばされてしまう。
爆発のあとにカラミィーテの姿はなく、2人が攻撃している間にその場を離れ走るフェネルの前に立つ。
オレガノを下ろして背中へと押しやり手に隠すナイフをカラミィーテに投げるフェネルだが、ナイフは空中で燃え地面に力なく転がる。
驚く間もなくカラミィーテがフェネルの胸ぐらを掴んで持ち上げる。カラミィーテの手を掴んで苦しそうな表情でにらむフェネルの変化が解け、頭の飾りの花が、本来の生きた花に戻った瞬間フェネルの背中ら無数の蔦が伸びカラミィーテの腕を掴む。
「あらら」
自分の腕に絡んだ蔦を見てわざとらしく驚くカラミィーテに、本来の姿に戻ったナツメグの刀とモナルダの双剣が襲うが、周囲に張られた魔力の壁に受け止められる。
「それが本来の姿ってわけだ。なりふり構ってらんないのは分かるけど、ちょっと軽率かなぁ~」
3人の攻撃を受け止めたままカラミィーテがニンマリと笑う。
ナツメグたちとカラミィーテの争う騒ぎに集まった町の人たちが3人の姿を信じられないようなものを見る目で見る。
知った顔の者たちが口にする「あの子たちいつもの……」「魔族だ」「だましていたのか」の言葉と、汚らわしいものを見る視線に気づき動きが止まる3人を見てカラミィーテが真顔になる。
「誰か手伝ってください! 町を襲う魔族が3体もいて私1人では対処できません!」
必死な顔で周囲に助けを求めるカラミィーテは言葉を続ける。
「この魔族たちが町を爆破し破壊したんです! このまま放置したら大変なことになります! 誰か戦える人を呼んでください‼ お願いします!」
カラミィーテの言葉に反応して助けを呼ぶ者や、集まっていた者の中にいた冒険者や兵士などの戦える者たちがナツメグたちを囲む。
周囲から向けられる冷たい視線に戸惑う3人と、それを見てカラミィーテが僅かに口角を上げる。
そのとき、周囲を囲む人たちの足下に火が灯ると火は円を描きながら燃え広がる。
フェネルが伸ばしていた蔦を素早く引くと、カラミィーテの腕に赤い線が走り燃え上がる。
一斉にカラミィーテから離れオレガノを囲む3人の前に殺気立ったクミンが立つ。狐の耳と尻尾を揺らすクミンが静かに口を開く。
「人間ども。なにを信じようが勝手だが、うちたちに悪意を向けるなら、払うまでと知れ」
クミンが刀を振るうと周囲を囲む炎が激しく燃え上がる。




