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ラッハが吹き飛び壁に叩きつけられる。衝撃で目を回すラッハの胸ぐらをカラミィーテが掴んで無理矢理立たせると、乱暴に振って無理やり気付けする。
目を開いたラッハが自分を掴んでいるカラミィーテを見て恐怖の色を顔に浮かべる。
「もう、もうやめてください。知っていることは、あの魔法使いモモとか言うガキが、オレガノとか言う名前のガキかもしれないって、それだけです」
「だーかーらっ! なんで、その子が魔王と同じ名前なのかって聞いてるの。一回で理解してくんない?」
「分かりません! 本当です!」
「ふ~ん、じゃあさ。他に知ってることない?」
カラミィーテに胸ぐらを掴まれ、浮いた足をパタパタとさせるラッハが苦しそうにもがく。なにかを言おうとするが、思いつかないのか口をパクパクさせるラッハを見て舌打ちをしたカラミィーテが拳で顔面を殴る。
みるみるうちに顔が変形していくラッハを見て、傍で腰を抜かして歯をガチガチ鳴らしているコアノン司祭をカラミィーテが睨む。
「あんたは、なにか知らないわけ?」
「ひっ、ひいっ。私はなにも、あ、そうだ! ラッハ。オレガノとか言うガキと一緒に、もう2人連れてきただろう。ほら、メイドともう1人の女だ! 名前! 名前を言うんだ!」
体を震わせながら必死で声を上げるコアノン司祭の言葉を受け、ラッハが腫れた唇と頬を動かし弱々しい声を出す。
「ク……クミン……あと、ローリエ」
「あん? クミンとローリエ? それで名前合ってる?」
青あざと腫れあがってもとの顔が分からなくなったラッハが必死に頷く。それを見てニヤリと笑ったカラミィーテがゆっくりと近づく。
「た、助けて……」
「助けて? なに言ってんの? あんたはあたしの質問に答える。そしてこの世から消える。それ以外の選択肢なんてないわけ。モブは消すのがあたしのポリシーだから、助かるなんて未来はないんだなこれが」
「そ、そんな」
絶望したラッハの顔を見てクスクス笑うカラミィーテが指をパチンと鳴らすと、後ずさるラッハが炎に巻かれ一瞬で消え去ってしまう。
「うーん、綺麗さっぱり! スッキリ」
僅かに焦げた地面を見て満足げな笑みで、背伸びをしながら掃除でもしたかのような達成感を見せるカラミィーテは、足下で震えるコアノン司祭を見下ろす。
「ひっ、助けて! お金ならあります! いくらでも渡します! 今はこれだけですけど、アジトに帰ればもっとありますから!」
目が合ったコアノン司祭は泣きながら必死に懐から出したお金を、カラミィーテに渡そうと頭を下げて掲げる。
「あぁ、もしかしてあんたって金の亡者ってヤツ? へえ~たまにいるっちゃいるけど、こんな絵に描いたみたいなヤツは珍しいね」
情けない姿のコアノン司祭に興味を持ったカラミィーテが、差し出されたお金を手にする。
お金を受け取ってくれたことに安堵の表情を見せるコアノン司祭だが、カラミィーテはお札をまじまじと見つめている。
「お金好きなんだ?」
「え、あ、はい! 大好きです!」
助かるかもしれない、そんな希望の光が見えた気がしてお金が好きだと必死に訴える。
「へえ、じゃあ」
指で摘まんだ1枚のお札を手首を振って投げると、お札はコアノン司祭の肩に突き刺さる。
「あぁっ⁉ ああああっ!」
肩に走る痛みに腹の底から叫び声を上げたコアノン司祭が、自分の肩に深く刺さったお札を見て目を大きく見開いて驚く。
「大好きなお金に殺される、なんて展開面白くない? お金好きだから嬉しいよね。ほいっと」
笑みを浮かべてカラミィーテがお札を投げると、今度はコアノン司祭の太ももにお札が刺さって食い込む。
「ぎゃぁあああっ!」
「あははははっ! ぎゃーだってぇー。お手本のような叫び声あげるじゃん。じゃあ次はどんな声が聞けるかなっと」
次に投げられたお札が腹に刺さり、痛みで転げまわるコアノン司祭を見てカラミィーテがゲラゲラと笑う。
次々と投げてお札を刺して、反応を見ては笑うカラミィーテだったが、6枚目のお札を指で挟んだとき血を流しながらもがくコアノン司祭に白けた目を向ける。
「うーん、あきた! もういいよ」
指に挟んだお札を適当に投げると炎に包まれたお札がコアノン司祭の額に刺さり、一瞬だけ大きな火の手が上がると、コアノン司祭はこの世から消え去る。
「まあまあ、楽しめたかな。さーってと、得られた情報は魔王オレガノと同じ名前の魔法使いモモちゃんにクミンとローリエって女の人ね。ふふ~ん♪」
鼻歌を歌い上機嫌なカラミィーテが指を鳴らすと、いつもの魔女っ娘の姿に戻る。
「少しずつ情報が集まって真実を探していく感じがいいね。名探偵カラミィーテちゃんが、魔法使いモモちゃんを追い詰める感じ! くーっ熱い展開だ‼」
大きな帽子の位置を整えつつ、ニマニマと笑うカラミィーテが空を見上げる。
「どーせ見つけたら一瞬で終わっちゃうから、じわじわと追い詰めていく過程も楽しまないとね。名探偵カラミィーテちゃんの次なる活躍にこうご期待ってね」
よく晴れた空に浮かんで流れる白い雲をじっと見つめ、カラミィーテはゆっくりと口角を上げる。




