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ごくあく魔王 と あんさつメイド の た・て・な・お・し?  作者: 功野 涼し
激戦を終え固まる結束

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3

 東の魔王シラントロの登場に驚くよりも、めんどくさいなと冷めた目で見るクミンだが深々と頭を下げる。


「失礼いたしました。うちの名は魔王オレガノ軍、四天王クミンと申します」


 クミンの肩にとまっているサフランが右翼を前にして丸い体を傾けお辞儀する。


「同じく四天王のサフラン」


「四天王? ……ほう」


 シラントロが目をわずかに大きく開くと、クミンとサフランを交互に見る。


「オレガノのヤツは四天王とか好きよな。今の四天王はメイドに鳥か、選ぶ基準がよく分からんな」


 シラントロは顎に手をあて、クミンたちをまじまじと見てくる


「オレガノ様に取り次いでまいりますので、しばしお待ちを」


「おぉ~⁉ やっぱりシラントロじゃ! 久しぶりなのじゃ!」


 クミンがオレガノに取次ぎを行う前に、オレガノのが勝手に玄関のドアから飛び出してくる。後ろから慌ててついて来たナツメグたち3人が、クミンと目が合うと申しわけなさそうな顔をする。


 苦笑いをするクミンと頭を下げる3人のやり取りが行われている間をすり抜けて、前に出たオレガノが両手をぶんぶんと振る。


「……いや、私はオレガノに会いたいのだが。お前は誰だ?」


「オレガノじゃよ」


 シラントロが目の前でキラキラした瞳を向けるオレガノを見て眉間にしわを寄せる。


「同姓同名なのか? もしかして、あれか! やつの娘か⁉ 全然そんな感じがなかったが、はぁーなるほどな。ん? もしかして、本人は重症で動けないゆえ、オレガノ軍復活とは名を借りた娘が中心になって行っているということか?」


 疑問符を沢山つけながらシラントロが話すと、オレガノが腕を両腰に当て頬を膨らませる。


「違うのじゃ! 余がオレガノなのじゃ! 余には娘はおらんのじゃぞ!」


 ぴょんぴょん跳ねながら抗議するオレガノをシラントロはジト目で見つめる。


「いや、違うだろ。そもそもお前からは魔王の力を感じないぞ。魔王であれば魔王の真核があるはずだ」


「ふふ~ん、魔王の真核は借金の担保兼ダンジョンのパーツの一部として差し出したのじゃ」


「いや、まったくもって意味が分からん。子供の相手をしている暇はない、オレガノに合わせてもらおうか」


 胸を張って説明するオレガノを無視しクミンを見るシラントロだが、クミンがオレガノを指さしていることに気づき再びオレガノを見る。

 そして相変わらず胸を張って自信あり気にしているオレガノを見たシラントロが、オレガノを指さしてクミンを見る。


「本気で言っているのか? この小さいのがオレガノ……しかも性別も変わっているじゃないか。いやはや信じられん」


「いいえ、本当です」


 困惑するシラントロの近くて声がし、空間に割れ目ができると間からアンジェリカが現れる。


「シラントロ様、お久しぶりです。魔王ノルデンの孫、アンジェリカと申します」


「アンジェリカ?……おぉ~っ! あの堅物めがデレデレして抱いて自慢しておった娘か! ほう、大きくなったもんだ」


 親戚のおばちゃんみたいな反応をするシラントロにアンジェリカが深々と頭を下げる。


「覚えてもらえてて嬉しいです。どうでしょうか、魔王オレガノと近況についてもお話ししたいですし、一先ず中へ入られませんか?」


「ふむ、色々と聞きたいしそれがよいかもな。それじゃあ言葉に甘えるとしよう」


 アンジェリカの案内で家の中へと入ったシラントロに、オレガノが一度敗北し小さな少女になってしまったこと、ダンジョンを使って回復師ティフォンを撃破した経緯までを説明する。


 説明を聞き終えたシラントロは腕を組み眉をひそめ考える素振りを見せる。考え込んで黙るシラントロを、クミンたち一同は緊張した面持ちで見て、オレガノはキラキラした目でシラントロがなにを言うのか楽しみにして体を揺らしている。


「オレガノをこの姿にしたのかは、したかったからか……分かったような、分からないような。狂人の考えることは理解できぬし、する必要もないかもしれんがな」


 片目を開けてオレガノを見るシラントロはそう呟くと、オレガノに手を伸ばす。頭を撫でてもらえると期待に満ちた表情で頭を差し出すオレガノだが、シラントロの手はほっぺたを摘まんで引っ張る。


「うむ、いやはやなんとも。性別を変える呪いと、幼児化させる呪いの複合か……術者が死んでも解除されないのは呪いゆえなのだろうが。なぜ術者からもっと詳しい話を聞かなかったのか? それこそ解除のヒントとかあったかもしれないだろう」


「余裕がなかったのじゃ。めちゃくちゃ強くて倒すのに必死だったので、聞けなかったのじゃ」


「うむぅ……ノルデンとウェンスティーを倒すヤツらならそうなのかもしれんが、お前はそのままの姿でいいのか? 元に戻りたいとは思わんのか?」


 シラントロの質問にオレガノは、ほぇ~とどこか気の抜けた顔をする。


「はじめは元に戻ろうかとも考えたが、まあこのままでもいいかなとも思っておるのじゃ」


「なんというか……お気楽にもほどがあるな。私ならすぐにでも元に戻りたいと思うがな。まあ、お前は常識の枠にハマらんヤツではあるが」


 呆れた顔で見るシラントロに対しオレガノはニシシと笑う。それを見てますます呆れるシラントロが、クミンとアンジェリカ、ローリエ、サフランを順に見る。


「それでお前たちが新生オレガノ軍の四天王というわけか。正直戦闘面に関して頼りなさそうだが、勇者一行の1人を倒した実績を見れば実力は認めざるを得まい」


 そう言って肩の力を抜いたシラントロが、金色の輝く瞳をオレガノたちに向ける。


「対勇者に向け、我らが竜人一族は魔王オレガノ軍と協力関係を結びたい」


 シラントロの宣言にオレガノの顔はぱあっと明るくなる。


「な、なんかやりづらいな。お前そんな感じだったか? 無駄に可愛くなってないか?」


 キラキラした目で見つめるオレガノにシラントロは戸惑ってしまう。

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