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ごくあく魔王 と あんさつメイド の た・て・な・お・し?  作者: 功野 涼し
vs.回復師ティフォン

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9

 治療室で傷の手当てを受けるクミンが、消毒液の臭いと刺激に顔をしかめる。最後に保護用のガーゼを頬に当てられテープで止められる。


「はい、これで処置は完了です。骨や内臓には異常はありませんが、普段の生活で気分が悪くなったり頭痛がするなどの異常を感じたらすぐに来てください」


 医療担当の魔族から治療を受けたクミンがお礼を言って立ち上がり病室を出る。


「あれ? 今日は休みって言ったのに」


 クミンが廊下に並ぶ私服姿のナツメグ、フェネル、モナルダを驚いた顔で見る。


「その、私たちクミンさんが心配だったので来てしまいました」


 勝手に来たことを怒られるかもと心配したのか、不安気なナツメグが答えるとクミンは驚いた表情をするが、すぐに恥ずかしそうに笑顔で応えナツメグたちの頭を撫でる。


「そっか、ありがとう。そうだ! お腹空いたし食堂に行こうか。あ、もちろんおごるから安心して」


 ニコっと笑ったクミンの表情を見て、ホッとした顔になったナツメグたち3人はクミンについて行く。


 アンジェリカの所有していた施設の一部を改装して作られた魔王オレガノ軍の施設は、魔王軍入隊者と避難民の一部の者たちが住み働いている。


 対勇者ダンジョンの機能と魔法使いモモちゃんの配信をメインとする施設であるが、住居から医療機関や食堂なども併せ持っている。アンジェリカの寄付とクミンの借金によって作り出された魔王オレガノ軍の基地と言っても過言ではない施設である。


 料理が得意な魔族を中心にして作られた食堂には、木で作られた長机と椅子が並び、キッチンもむき出しのパイプや本来なら外に置くような流し台などが設置され、端の方には木箱が積み上がっており、お世辞にも整理されているとはいえずどこかごちゃごちゃしている。


 急ごしらえなのが見受けられる食堂ではあるが、働く魔族たちの表情は明るい。


 クミンたちはお盆を持って食堂のカウンターに並び、注文をして席へとつく。


「クミンさま、お怪我の方は大丈夫なんですか?」


 フェネルが座ってすぐにクミンに尋ねると、クミンは包帯が巻かれている右手の腕を見せ、貼ってあるガーゼごと頬を緩める。


「擦り傷とかはいっぱいあるけど大丈夫。心配してくれてありがとう」


 クミンにお礼を言われフェネルは「よかったです」と言いながら恥ずかしそうに下を向く。


「クミンさん! 私感動しました!」


 モナルダが前のめりになってクミンに顔を近づける。


「感動するようなことしたっけ?」


 サラダのキュウリをフォークで刺したクミンが不思議そうな顔で、目を輝かせ翼を広げるモナルダを見る。


「はい! あのとんでもない人間相手に戦う姿カッコよかったです!」


 青い翼をバサバサさせ興奮するモナルダの隣にいるナツメグも大きく頷いて口を開く。


「私も感動しました。影からの鋭い攻撃も、正面から真向に向かう姿も、そしてなによりもオレガノ様を守るため戦う姿に!」


「わ、わたしもです! 故郷を壊した人間をわたしは怖がることしか出来なかったのに、勇敢に向かって行くクミンさまがカッコいいと思いました!」


 モナルダと同じく興奮気味に続くナツメグとフェネルの勢いに押されながら、クミンは恥ずかしそうにこめかみ辺りを掻く。


「普通に正面から向かっていたらすぐやられたし。あれは、あの決戦の場を準備し、誘い出してくれた人たちや、ローリエをはじめとしたスタッフたちのサポートがあるって分かっているから立ち回れただけ。そもそもうちの攻撃なんて効いてないから」


 頬をほんのり染め恥ずかしそうにきゅうりを口に入れたクミンが口を動かす。そんなクミンを尊敬の眼差しで見る3人がそれぞれと目を合わせたあと、同時に頷く。


「あの、クミンさん」


 ナツメグが改まって真剣な顔でクミンを見つめてくるので、クミンも緩んでいた表情を元に戻し見返す。


「私たち、クミンさんのもとで働きたいです!」


 ナツメグの真剣な表情で放った言葉にフェネルが続く。


「戦闘経験もなく足を引っ張ると思いますけど、一生懸命やるのでお願いします!」


「クミンさんの役に立てるように頑張ります!」


 3人に真剣な視線を向けられ目を丸くしたクミンだが、すぐに表情を緩め笑顔を見せる。


「そっかぁ……うん。よろしくね」


 クミンが恥ずかしそうに言った言葉を聞いてナツメグ3人たちは顔を見合わせ嬉しそうに笑うとクミンを見る。


「「「はい!」」」


 重なる返事にクミンは嬉しそうに微笑む。


 クミンを中心にほわほわとした、嬉し恥ずかしい優しい空気を破る声が食堂に響く。


「痛かったのじゃー、うぐっ、ぐすっ」


「消毒液が傷に染みると痛いですからね。オレガノ様頑張りました! 凄いです!」


「うぐっ、頑張ったからハンバーグ2つ食べてもいいかえ? ぐすっ。デザートもあれば次も頑張れる気がするのじゃ」


 泣きながら歩くオレガノと、寄り添い宥めるローリエのコンビにクミンたちだけでなく、周囲の視線が集まる。

 そんな視線を気にもしていないオレガノはクミンを見つけると、目を輝かせ小走りに駆け寄ってくる。


「クミン! これを見てほしいのじゃ!」


 そう言ってスカートを上げ、膝に貼ってあるガーゼを見せる。


「転んで怪我したのじゃ! すごーく痛いのに消毒液かけられて、もーっと痛かったのじゃ。でも我慢したのじゃぞ! すごいじゃろ? じゃろ?」


「はいはい、すごい、すごい」


 棒読みで褒めるクミンをオレガノが頬膨らませムッとした顔をする。


「むぅ、もっと心を込めて褒めてほしいのじゃ!」


「ちゃんと褒めてますよ。それよりも次の会議の日程を決めてもらえますか? ダンジョン1つ消してしまったので、予備の施設の建設を進めてもらわないと次に勇者が来たとき対応できませんよ」


「クミンは真面目じゃのぉ」


「次の会議からうちの方からも3人出席させますから、早く予定が知りたいんです」


 クミンの言葉を聞いたオレガノが目を大きく見開き、クミンの後ろにいるナツメグたち3人を見る。少し恥ずかしそうなクミンと真剣な表情で見返す3人を見て、クミンの言葉の意味を察したオレガノの頬を赤く染め喜びあふれる視線を受け、3人はどうしていいか分からず戸惑っている。


「3人とも正式にうちの隊に入ってくれることになったので。よろしくお願いします」


「そうか! そうじゃったか! クミンもようやく部下をもつことになったのじゃな! クミンをよろしくなのじゃ!」


 オレガノがナツメグたちの手を順に取ってぶんぶんと激しく振りながら、喜びの小躍りをする。3人を戸惑わせるオレガノに対しクミンが冷めた視線を送る。


「足が痛かったんじゃないですか?」


「あっ! うぅ……痛いのじゃぁ」


 小躍りを止め膝を押え痛がるオレガノに、また違った意味で戸惑う3人。


「護衛も任務の一つだけど、調子に乗らせないことも大事だから覚えておいて。魔王だからって甘やかさないこと」


 クミンが初めて教える仕事の心得に、3人はまたまた違った意味で戸惑ってしまう。

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