表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ごくあく魔王 と あんさつメイド の た・て・な・お・し?  作者: 功野 涼し
vs.回復師ティフォン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/136

8

 魔王オレガノの攻撃によって大きなダメージを受けたティフォンは、ギリギリのところで持ちこたえ超回復で体を再生する。それゆえに魔力の消費も非常に大きく、瀕死に近いダメージを受けている体をなんとか保っている状態である。


 だが同時に、激しいオレガノの攻撃によって背中に撃ち込まれたアンカーも消滅しており、僅かだが魔力は回復方向へと向かっている。


 ティフォンは自分が存在してることに驚き、焦りの色を見せるクミンとアンジェリカ、そして魔王オレガノが消えその後ろで箱を抱えて怯えるオレガノを見て、もう打つ手がないことを悟り内心でほくそ笑む。


 ギリギリではあるが、今残っている力でもこの場では一番自分が強く、なんとか倒し切れると判断し、両手、両足に魔力を集める。


「オレガノちゃん、一回死んでもらいましょうね。あとで蘇生してあげるから安心して」


 ニタアっと笑みを浮かべたティフォンの足下が突然盛り上がると、無数の骨の手がティフォンの足首を掴む。

 身動きを封じられたティフォンの周囲から飛び出してきた無数のスケルトンが一斉に剣を突き立てる。


 剣の先端がティフォンの肌を貫き、肌から血が滲む。


「なっ……こんな雑魚にわたくしに触れるなんて‼」


 ギリッと歯を鳴らしたティフォンの目の前で地面が破裂すると、突如現れたゴーレムが腕を振り上げティフォンに拳を振り下ろす。

 巨大な拳はスケルトンごと砕きながらティフォンを吹き飛ばしてしまう。地面を転がりながらも両手、両足の爪を立てブレーキをかけるティフォンの真上の天井に剣が生え、高速で落下して目を大きく見開くティフォンを押しつぶす。


「「ダンジョン・コンプレッション発動します!! 関係者は直ちに避難を開始してください! 繰り返します! ダンジョン・コンプレッション発動!! 関係者は直ちに非難を開始してください!! ━━」」


 ローリエの緊迫した声がダンジョン内に響く。


「えっ⁉ このまま押し切れませんか?」


「いいえ、無理よ。ローリエの判断が正しいわ」


 少し戸惑いの色を見せるクミンの肩をアンジェリカがポンと優しく叩く。その瞬間、落下しティフォンを潰していた天井にヒビが入り、真っ二つになったかと思うと豪快に左右に吹き飛ぶ。


「ゆ、許さない。ここまでわたくしを馬鹿にするとは……星渡りの勇者であるわたくしを……悪魔である、人類の敵である魔族が! 低俗な虫けら風情がわたくしを、わたくしをこんなにぃぃっよくもおおおおおおおっ!!」


 体のいたるところから血を流すティフォンが叫ぶと同時に、天井や壁、地面から発射された鉄でできた糸、つまるところワイヤーが絡んでティフォンの四肢の自由を奪ってしまう。


「な、なんなのこれはっ! こんなのぉ!」


 手足にワイヤーが食い込むのも構わずティフォンが暴れるのを見ていた、クミンとアンジェリカの足下にオレガノがやってきて、不安そうな表情でクミンに引っ付く。


「今の私たちにあれを倒し切れる攻撃はできないわ。ならば、ダンジョンそのものでやり切るしかないでしょう?」


「くぅ、とんでもない金額が吹き飛ぶけど仕方ありません……」


 ガクッと項垂れたクミンだが、すぐに縛られたティフォンを睨む。ワイヤーを振り切ろうともがくティフォンがクミンの視線に気がつき目を合わせる。クミンの力強くなにかを確信した瞳を見たティフォンは自分を倒すなにかがあることを悟り青ざめてしまう。


「ちょっ、ちょっと待ちなさい!」


 手足をワイヤーに縛られたまま、身動きが取れないティフォンが身を乗り出して声を上げるがクミンはふっと笑う。


「随分と手を煩わせてくれましたが、これで最後です。うちの借金と共に散るがいい」


「のじゃ!」


 ドヤ顔のクミンが言うと、同じくドヤ顔のオレガノが続く。


 2人の後ろに立ったアンジェリカが鍵の束を取り出すと、空間を割って出口を生み出し倒れたままのジンジャーも含め4人を飲み込み消えてしまう。


 誰もいなくなった空間に1人残されたティフォンの耳に世界が軋む音が響く。


「ひっ……うそよ。わたくしは、わたくしは7つも世界を救ってきた勇者なのよ。わたくしは命を奪われることはないの、奪われてはいけないの! いつだって命を癒し、甦らせ、消し去ることのできる存在! 命の選択権はわたくしにあるのだから、わたくしが奪われていいわけがないのよ!! こんなところで……こんなところで終わるわけがないのよぉぉぉっ!」


 叫びながらワイヤーに縛られた手足を乱暴に引っ張るが、魔力をほぼ失っているティフォンに振りほどくことはできずもがくことしかできない。


 ダンジョンという人工物ではあるが、一つの世界がこの世から消滅していく。


 消滅するそれは爆発ではなく空間を埋めていく事象。


 破壊して証拠を消すのではなく、ダンジョン内の体積を膨張させ、空間を圧縮し消し去り二度と外界から侵入することができなくするダンジョン経営を畳む際の後処理技術は今、1人の敵を倒すために使用される。


 ダンジョンの中にある全て、それこそ空気も大気中の水分もまとめて自分のもとへ集まってくることに恐怖を感じられるのは、常人ではない力を持つティフォンだからこそ。


 動体視力の高さゆえに、空間が縮まっていく様子がゆっくり見えてしまうティフォンが見開いた目の中にある、大きく瞳孔が開いた瞳が真っ黒に染まっていく。


「回復師、ティフォンの魔力消えました……」


 真っ暗になったモニターを全員が固唾を飲んで見ている中、スタッフの報告の声が響く。


「センサー系も全て破壊して処分をお願いします」


 立ったままモニターを見ていたローリエが指示を出して振り向く。


「皆さん、お疲れ様です。オレガノ様たちをお迎えする準備をしますので、最後まで頑張りましょう」


 ローリエの指示に勝利に顔を緩めたスタッフたちだが、すぐに顔を引き締めオレガノたちを迎える準備に入る。


 ほどなくしてスタジオの中心の空間にヒビが入り裂け目ができると、オレガノたちが裂け目からなだれ込み倒れ込んで転がる。


 ローリエたち数人が急いで駆け寄り介抱に向かう。


 肩や手を借り立ち上がるオレガノたちに喜びと心配の混ざった視線が集まりどんな感情でいればいいのか困惑気味の空気の中、この場をどうすればいいのか理解しているオレガノが一歩前に出て腰に手を当てふんぞり返る。


「みなの者ご苦労じゃったのじゃ! 余たちの勝利なのじゃ!」


 オレガノの勝利宣言を受け、極度の緊張感からの解放と巨大な敵を倒した達成感からスタッフたちは総立ちで歓声を上げる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ