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ごくあく魔王 と あんさつメイド の た・て・な・お・し?  作者: 功野 涼し
生活に必要なものはお・か・ね

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2

 次の日の朝、盛大に寝癖のついたオレガノの髪を必死に直すクミンの姿があった。


「あぁもう、面倒くさいっ。動かないでくださいっ。角が邪魔!」


「イタタタッ、あんまり引っ張らないでほしいのじゃ」


 慣れない髪をとかれる行為に痛がるオレガノと苛立つクミンが奮闘していると、ドアがノックされる。


 クミンがオレガノの頭に櫛を置いてドア勢いよく開けると、ハンチング帽を被り斜めがけの大きな鞄を抱えた一人の少年が立っていて、反射的に手に持っていたものをクミンに差し出す。


「新聞です……っ!?」


 寝起きでやや薄着なクミンを見て、顔を赤くする少年を見下ろしたクミンは「いらない」と言おうとして開きかけた口を止める。


「いくらです?」


「あ、えっと百エンです」


 下を向いてモジモジする少年に、一度部屋に戻ったクミンがお金を持って少年に渡す。


「まいど……あり……」


 お金と引き換えに新聞を渡した少年は勢いよく閉まる扉を、ちょっぴり名残り惜しそうに見て次の部屋へ向かう。


 オレガノの頭の上で新聞を広げたクミンは、険しい表情で唇を噛みながら読み始める。


「なんじゃ? なにか面白いことが書いてあるのかえ?」


 オレガノは上を向き、自分の頭の上で広げられた新聞に向かって話しかける。


 モゴモゴ動く新聞を、取り払ったクミンが、オレガノの前に新聞の一面を突き出し、ある記事を指さす。


「なんじゃ……『長い間村を苦しめていた魔物討伐!!』これがどうかしたんじゃ?」


 見出しを読んで意味が分からないと、ポカンと口を開くオレガノに対し、クミンが記事の写真と、下に書いてある文をなぞる。

 それをよく読めという意味だと察したオレガノは、再び記事に目をやる。


「なになに、凶悪ブラッディベアー、通称『レッドムーン』を討伐した冒険者一行……!? この男昨日の!」


 目をまん丸にして、自分を見てくるオレガノの頭を掴んで無理やり新聞に向けさせると、クミンがもう一度文章を指さす。


「なんじゃ、ギルドの討伐依頼金と合わせ、村から謝礼金30万エンが支払われました。リーダーのアマイエさんは「これからも、凶悪な魔物を狩り地域、人のために頑張っていきたい」とコメントしており……ってなんじゃと!? コヤツら、余たちが倒した魔物が懸賞金つきと知って買い取ったのじゃな!」


「してやられました。一万五千エンで喜んでいた、昨晩のうちたちが馬鹿みたいです」


 まだ寝癖の残る頭を振り上げて勢いよく立ち上がったオレガノが、鼻息を粗くしてクミンに迫る。


「今からコヤツらから追加でお金をもらいにいくのじゃ!」


 興奮するオレガノのとは対照的に、クミンは冷静に首を横に振る。


「今いっても、懸賞金のことは知らなかったと、はぐらかされるだけです。それにうちらはギルドに登録してませんし、法的に争ったところで負けるのは目に見えています」


「そこは力で奪うのじゃ。クミンの実力ならわけないじゃろ?」


 拳を握ってシャドーボクシングするオレガノのを見て、クミンは額を抑えてわざとらしくため息をつく。


「今うちらは、二人しかいないわけです。しかも昨日勇者にボロ負けした身で、人間に向かって実力行使とか普通します? 脳筋も大概にしてもらえますか。それにうちは戦えても、元魔王様は弱々で、なにもできないじゃないですか」


「うぬぅ……言い返せんのが辛いのじゃ」


 項垂れてしまったオレガノの背後に立ったクミンが、櫛を手に取り髪をとき始める。


「先立つものがなければやってけませんから、まずは収入を得る方法を考えましょう」


 両手を膝に置いて、じっとするオレガノを見て少しだけ表情を緩めたクミンは、黙って髪をとく。


 ***


 額がちょっぴり盛り上がって角みたいになっている兎の名は一角兎。

 森の中を必死に逃げ回る彼に向かって、短剣が突き刺さると柄に付いているワイヤーが赤く光り爆発する。


 藪をかき分けひょっこりと姿を現したオレガノが、一角兎のもとに駆け寄ると手に取ろうとするが、熱くて目をバッテンにして伸ばした手を引く。


「まだ熱いから触らない方が……って遅かったようですね」


 赤くなった手を、パタパタと振るオレガノを見てクミンが呆れた顔をする。


「これだけ一角兎を狩ればそれなりにお金になるはずなのじゃ!」


 赤くなった手にフーフーと息を吹きかけながら、涙目ながらも満面笑みを浮かべるオレガノに笑顔で応えるクミンは今━━


「あんたねぇ、食べるわけでもないのに火を通しちゃいかんでしょ」


 ━━解体屋のおじさんに怒られていた。


「傷口が小さいのは評価するよ。だけど毛皮は燃えてるし、肉にも一部火が通っている。おまけに血抜きもしてないから鮮度が低く食肉としても微妙。角の部分と、脚を買い取ったとして解体費用と差し引いて一匹五百エンってところだ。全部で五匹で合計二千五百エン……小さい子がいるようだし、三千エンでどうだ?」


「お気遣い感謝します……その値段でよろしくお願いします」


 解体屋のおじさんに頭を下げてお願いするクミンの横では、オレガノが作業場で働いている仕事人の技を目を輝かせて見ている。


「すごいのじゃ。このような技を間近で初めて見たのじゃ」


 体を揺らしながら、感激の声を上げるオレガノが被るフードがズレないように押さえるクミンはふと上を見上げる。


(これからどうすればいいんだろう……)


 クミンは言いようのない不安を胸に抱えて、ひとまず今は確実にもらえる三千エンを待つことにするのだった。

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