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ごくあく魔王 と あんさつメイド の た・て・な・お・し?  作者: 功野 涼し
vs.回復師ティフォン

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2

 小屋の扉を開けたティフォンが中に足を踏み入れる。


 真っ暗だった室内の壁にロウソクの火が灯ると真っ直ぐ奥へと伸びる。まるで誘っているかのような光の揺らめきを見たティフォンはふふっと笑う。


「あらあら、てっきり攻撃してくるかと思ったけどお招きいただけるなんて嬉しいわね。それとも途中に罠とか仕掛けているのかしら?」


 ロウソクの道を歩くティフォンは笑みを浮かべどこか楽しんでいるように見える。


「別にわたくしに攻撃してもいいのよ。だってモモちゃんになら刺されたっていいって思ってるの。わたくしね、可愛い子に刺されるのなら嬉しいもの」


 自分の胸を撫で至福の笑みを浮かべたティフォンはロウソクが導く部屋のドアノブに手をかけ中へと入る。


 数本のロウソクに照らされる部屋は薄暗く、炎のゆらぎに合わせティフォンの影も動く。そして部屋の奥にあるロッキングチェアがゆらゆらと揺れて、ティフォンの影とぶつかる。


 揺れるロッキングチェアに座る幼い少女にティフォンがゆっくりと近づくと、いきなり頭を鷲掴みにし乱暴に引っ張り、ちぎった頭を後ろへ投げる。


「人形……確かに気配を感じたのだけれども」


 ティフォンが視線を人形の手に移すと、手に鍵を持っていることに気がつく。


「手紙もあるのね」


 人形が鍵とは別に持っていた手紙をティフォンは手にする。


『余に会いたいのならその鍵を使ってゲートを開けてみるのじゃ。


 できるのならじゃがの。 


                 モモ』


「あらあら、合鍵までくれるなんて大胆。わたくしに挑戦状かしら? 素直な子も可愛いけど元気な子も好きよ」


 微笑みながらティフォンは鍵を手にする。


「微妙に感じたことのある魔力を感じるわね……これを手がかりに」


 鍵を手にしたティフォンの姿がモニターに映されたと同時にアンジェリカが叫ぶ。


「転送開始!!」


「転送開始します!!」


 素早くスタッフの一人が透明のカバーを開けて大きな黒いボタンを押すと、ティフォンの立つ床に魔法陣が出現する。


 薄暗い部屋が下から照らされた光で照らされると、ティフォンの持っていた鍵がさらに強い光を放ち砕ける。


「転送魔法!?」


 眩い光にしかめっ面になりながらティフォンは、砕けた鍵の欠片が落ち生まれた足下に開いた空間の切れ目に落ちる。


 その様子を見て、パチンと指を鳴らしたアンジェリカが、周囲を囲むスタッフの後ろに控えているローリエを見る。緊張した表情ながらもいつもよりも力強い視線で見返したローリエが小さく頷くと、アンジェリカも頷く。


「転送成功。ダンジョンの指揮権はローリエに任せたわ。私たちは状況に応じて動くわ」


「分かりました。これより私の指揮に従って勇者殲滅ダンジョンの起動を行います!! 新人の方も配置についてください」


 ローリエが宣言するとスタッフをはじめ、ローリエの部隊所属の魔族たちも緊張した面持ちで頷く。


 ***


 落下しながらも冷静に辺りを見回すティフォンは錫杖を振って体勢を整えつつ、ふわりと地面に着地する。


「洞窟? いえ、これは……」


 突然着地した足で地面を蹴り下から飛び出してきた剣山を避けたティフォンは、続けざまに壁から飛び出してきた無数の矢を錫杖で薙ぎ払う。


 瞬間天井が落ちて来てティフォンを潰そうとするが錫杖を真上に突き上げ破壊する。錫杖を振り、砕け散る石の破片と埃を薙ぎ払うと、自分の手を見つめる。


「転移魔法を阻害する術式が張られてるわね。少し時間をかければ突破できるかもしれないけど……ここはどこかのダンジョン?」


 独り言を言い終える前に後ろに跳びのくと、先ほどまでティフォンがいた場所の地面が跳ね上がる。再び飛んでくる矢を錫杖で払いつつ、左手で後方から飛んできた火球を受け止め払いのける。


「わたくしを狙ってくるダンジョンとか……面白い場所に案内してくれるのね」


 クスっと笑うティフォンは次々と上から降ってくる巨大な針を華麗に避けていく。


 その様子を頬に伝う汗を拭うこともせずに凝視していたローリエが、自分の左側にいるスタッフたちを見て口を開く。


「魔力の揺らぎはどの程度ありますか? 物理、魔法共に数値にて報告をお願いします!」


「物理で13パーセント、魔法攻撃で10パーセントの魔力の揺らぎを確認。前面の攻撃の際に背面……腰の部分にて魔力量が2パーセントほど低下が観測されました」


「アンカーショット可能領域はどうですか?」


「アンカーショット可能領域には達していません」


「そうですか……」


 ローリエが声のトーンを落としながら画面に映るティフォンを見る。奥歯を噛みほんのりだが悔しそうな表情を見せるローリエの肩が叩かれる。


「うちが行く」


 笑みを見せるクミンにローリエが目を丸くして驚く。


「ま、まだ早いです。アンカーを打ち込んで弱体化させてから戦闘の予定です!」


 両手を前に出して手を振りながら否定するローリエにクミンは笑顔を向ける。


「このまま無駄に罠を消費しても(らち)が明かないでしょ。うちが引きつけるから、ローリエがダンジョンを使って仕留めてくれればいい。頼りにしてるから」


 クミンはポンとローリエの肩を叩くと、後ろにいるナツメグたち3人を見てふっと笑う。


「初日から結構ハードになっちゃったね」


 3人が返事をする前にクミンが前に出て、オレガノとアンジェリカを見る。


 クミンと目が合い不安そうな表情を見せたオレガノが口を開く前に、鋭い目つきになったクミンが口を開く。


「転送をお願いします」


「あくまでも引きつけること。無理だと思ったら即時撤退を。クミンの持っている鍵なら内側からでも転移は可能だからいざとなれば使うこと」


 アンジェリカが短く説明するとクミンは無言で頷き、転送装置の上に立つ。


「これより回復師ティフォンの弱体化作戦のため、四天王クミンが戦闘に入ります! 皆さん全力でサポートを!!」


 普段出したことのない大きな声でローリエが指示を出すと、切れのいい鋭い返事と共にスタッフたち全員が顔を引き締め、各自の持ち場で構える。

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