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ごくあく魔王 と あんさつメイド の た・て・な・お・し?  作者: 功野 涼し
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 普通の大道芸とは違う魔法による不思議で派手、ときに綺麗で驚きと感動を与えてくれる芸の数々。それらをもたらす可愛らしいモモちゃんの一生懸命な姿と笑顔が芸をより明るくし、さらにはモモちゃんと会話までできることが人々の噂となり、楽しい娯楽と認知され一部では熱狂的な人気まで得ることになる。


 その裏では多くのスタッフの手助けにより、的確な受け答えが用意され対応されているとも知らずに人々は魔法使いモモちゃんとの会話を楽しむ。


「「うちの孫に誕生日プレゼントを贈ろうと思うんだ。前々から服が欲しいと言っておったのだがどんな服を買えば喜んでもらえるじゃろうか? としはモモちゃんと同じくらいなのだが」」


 ある村のおじいさんがモモに相談する。


「プレゼントするものが服と決まっているのに悩む、つまりそれはサプライズで贈るつもりということかえ?」


「「ええ、起きて枕元にあったりしたら喜んでくれるかと思ってな」」


 おじいさんが答えるとモモは腕を組んで少しだけ考える素振りを見せる。


「余の考えなんじゃが、お孫さんと一緒に買いに行って選んではどうじゃ?」


「一緒に?」


「そうじゃ、欲しい服があると言っておったときとは、今欲しいのは違う服に変わっているかもしれん。お孫さんが成長していてサイズが変わってる可能性もあるのじゃ。たとえデザインが気に入ってもサイズが合わなかったらお互い悲しいのじゃ。ゆえにサプライズで買うのは意外とリスクが高いと思うのじゃ」


 モモの答えにおじいさんが少ししょんぼりする。


「でも、一緒に買いに行けばその心配はないのじゃ。それになによりも、お孫さんと一緒に過ごせて、話す時間だって得られるのじゃぞ。プレゼントをあげて喜ぶ姿だけじゃなく、会話を楽しむ時間まで得られる。すごくいいと思うのじゃが、どうじゃろうか?」


「「おおっ! 確かに! そうします! いやはやこんな年寄りの相談にまで乗ってくれて本当にありがとう」」


 おじいさんは何度もお礼を言って映像を映している隣にいるガーゴイルに1,000エンを渡すと嬉しそうに去って行く。


「次は……」


 モモが唇に人さし指をあてて可愛らしく首を傾げると、スタジオにあるモニターに映る各地の映像を見る。


 その間にスタジオのスタッフたちが映像をチェックし、勇者一行を探しつつ無作為でトークする相手を探し出す。


「西の都、フロマージュにて勇者一行らしき2人を発見!!」


 突然スタジオに響いた声に緊張が走る。フロマージュの都の映像が拡大されるが、人が多すぎてどれが勇者なのか判別しずらい。


「サフラン、控えの部隊をフロマージュに回して追跡を! ローリエ、スタッフが足りないから新人も入れて映像のチェックをお願い! 配信担当は早くトークタイムを継続しなさい! 止まると怪しまれるわ!」


 皆が映像に集中して止まってしまうが、すぐにアンジェリカの指示が飛ぶ。


「2人ってのが気になるけど」


 クミンが呟く後ろでナツメグ3人たちは突然訪れた張り詰めた空気に当てられ、緊張から唇をキュッと結び波立たせる。


 そんな中ローリエがスタッフに指示を出しながら、ドタバタながらもトークタイムが継続される。


 モニターに映し出されたのはある町にいる一人の男。小太りで立派な服を着た男はガーゴイルとの距離が近いのか顔面がアップ気味で映し出される。


「えーと、どこの誰なのじゃ?」


 モモが尋ねると、小太りの男はうへへへと小さな声で笑いながら画面を見つめる。


「僕はポワレに住むサレオンと言うんだ。今日はモモちゃんに聞きたいことがあって、うふふっ、はぁー本物と話してる、嬉しいな」


 独り言を挟みながらやや興奮気味に話す、サレオンと名乗った男をスタジオの皆が顔をしかめて見ている。だがそんなことは知らないサレオンはうへへへと笑いながらモニター越しにモモを見つめる。


「僕はモモちゃんのことがだーい好きなんだ。モモちゃんの返事が聞きたいなぁーって。うん、答えは分かってる、分かってるけど確認ね。だってモモちゃん僕のこといつも見てるから分かってるんだ。でもさ、ほら、やっぱり言葉にして聞きたいからね」


 スタジオが凍り付く。


 先ほどの勇者一行発見の報告を忘れさせるほどのインパクトを与えるサレオのセリフに、スタッフが答えに戸惑っていたときだった。


 突然画面が大きく揺れアップで映っていたサレオの顔がさらにアップで映ったかと思うと画面がブレてサレオンが突然いなくなる。そしてかわりに手が横から伸びてくると、ガーゴイルの頬辺りに触れているであろう手が無理矢理向きを変え、サレオンの代わりに違う人物が映し出される。


「「今の人は、あなたにそぐわないと思うの。それよりもわたくしと話してくれないかしら」」


 キラキラと星が零れるかのような瞳に、海のように輝く青い髪をかき上げ微笑む女性が画面に映る。


 モモとクミンが目を大きく見開き画面に映る人物を食い入るように見る。


「勇者の仲間の一人、回復師と接触!!」


 スタジオに痛いほどの緊張感が走る。


「「ねえ? わたくしじゃダメかしら? 飛び入り参加だからだめぇ?」」


 慈愛に満ちたティフォンの微笑みがモニターに映される。その微笑みは魔族から見ても優しさに満ちあふれているように感じるが、同時に正体を知っている者からはすれば恐怖を感じてしまう。


「だっ、大丈夫⁉」


 ナツメグが、胸を押えふらついたフェネルを支える。


「あ、あれは……わたしの里を壊した人間」


 モナルダにも支えらえたフェネルは青ざめた顔でモニターを直視する。


 ローリエの部隊に所属するメンバーにも青ざめた顔でモニターを直視している者が数人いる。


「突然現れて、笑いながら仲間をちぎって里を壊したの。あれは人間なんかじゃない……」


 クミンがフェネルの手を取り落ち着かせる。それと同時にオレガノに目を向けると、左耳から伸びるインカムに小声で話しかける。


「はったりでいいから喋ってください! オレガノ様ならできるでしょ」


 クミンの言葉が聞こえたオレガノが横目で、チラッとクミンを見るとすぐに画面を見つめる。


「もちろんいいのじゃぞ。お姉さんの名前はなんというのじゃ?」


 緊迫した空気の中、いつもの可愛らしい声でオレガノがティフォンに負けない笑みを向けて会話を続ける。


「「あら嬉しい。お姉さんのお名前はティフォンというの。覚えてもらえるかしら?」」


「もちろん覚えるのじゃぞ。それでティフォンお姉さんは余となにをお話したいのじゃ?」


 オレガノとティフォンが微笑み合いながら会話を交わす中、アンジェリカとローリエがそれぞれ指示を出して、崩れたスタジオの体勢を整えていく。


「「そうねぇ~、モモちゃんはどこに住んでいるのかしら?」」


「それは秘密なのじゃ。ミステリアスなのも売りの一つなのじゃ」


「「それもそうねぇ、じゃあ好きな食べ物とかは聞いても大丈夫?」」


「それは問題ないのじゃぞ」


 2人の会話が交わされる中、スタッフの1人が慌てた様子で手を挙げる。


「ガーゴイルに魔力の逆流が感知されました! 恐らく魔力を流してこちらの位置を探るつもりです!」


「なんですって! こちらも魔力を流して防御を!」


「先ほどからやっていますが防御できません! 微力ですが確実にこちらの防御を貫き魔力を流してきています」


「最悪強制遮断の準備を! せっかく捕らえれそうな状態だけどここの位置がバレるのはまずいわ」


 アンジェリカとスタッフのやり取りはインカムを通してやっているので外部に聞こえることはないが、耳の裏にマイクがつけられているオレガノには聞こえている。


「ティフォンお姉さんは魔法使いなのかえ?」


「「魔法使いではないけど。簡単な魔法は使えるわよ。なんでそう思ったのかしら?」」


「余のガーゴイルから手を放してほしいのじゃ。さっきから微妙な魔力を感じておってゾワゾワするのじゃ。こっちを探ろうとするのはやめてほしいのじゃ」


「「あらあら、魔法使いモモちゃんの名は伊達じゃないわね。お姉さんね、モモちゃんに会いたいなぁ~って思ってちょっといたずらしちゃった」」


「悪いお姉さんなのじゃ。でも余はそういうのは嫌いじゃないのじゃぞ」


 ガーゴイルから手を放しながらクスクス笑うティフォンに続いて、オレガノもわははと笑う。


「「じゃあ、最後の質問」」


「なんじゃ?」


「「ある勇者が大陸の悪い魔王たちとその仲間を討伐しているの。北と西の魔王は死んだわ」」


 クスっと笑うティフォンだがその目は笑っておらず、じっと射貫くような視線でオレガノを見ている。


「「南の魔王……オレガノって知ってるかしら?」」


「聞いたことはあるのじゃ」


 2人はじっと見つめ合う。


「「わたくしね、オレガノは生きてると思うの」」


「ほう……余にはよく分からないのじゃが、なんでそう思うのじゃ?」


「「そうねぇ~生きている原因がわたくしにあるかもしれないから……と言ったら分かってくれるかしら? 可愛いくて賢いモモちゃんなら意味が分かるわよね?」」


 含みを持った笑顔で見つめてくるティフォンに、オレガノも負けじとじっと見つめ視線をぶつけ合う。


「「ふふ、なんーてね。思わせぶりなこと言ってモモちゃんの気が引きたかっただけ。それじゃぁお話しできて嬉しかったわ。また会いましょう」」


 慈愛に満ちた笑みに戻ったティフォンが画面に向かって手を振る。


「余も楽しかったのじゃ。また来てほしいのじゃぞ!」


「「ええ、かならず来るわ」」


 手を上品に振りながらティフォンがその場から立ち去る。その後ろ姿を見送ったオレガノが配信終了の挨拶を終えた途端、座っていた椅子から立ち上がりクミンの元へ走ってくる。


「うわぁーん! 怖かったのじゃぁ~! めちゃくちゃ怖かったのじゃー。あいつ嫌いなのじゃ~」


 泣きじゃくるオレガノを抱きしめて頭を撫で落ち着かせるクミンが、アンジェリカとローリエを見る。2人が大きく頷くと同時に通信が入ってくる。


「「回復師ティフォンの位置を捉えた! だがあっちもこちらを捉えてやがる。ここからは第2部隊の帰還位置を変更し、ポイントからダンジョンへと招待する! 作戦移行の許可を頼む!」」


 サフランの緊迫した声に泣きじゃくっていたオレガノがクミンから顔を離し、目を擦ると小さな人さし指をピッと伸ばす。


「これより、ダンジョンによる勇者討伐作戦開始なのじゃ!」


 オレガノの一声で、勇者討伐作戦が開始されるのである。

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