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ごくあく魔王 と あんさつメイド の た・て・な・お・し?  作者: 功野 涼し
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「以上が魔王ウェスティーの交戦記録よ」


 アンジェリカが映像を映し終えたモニターを閉じてオレガノたちを見る。


「魔王ウェスティーからの返事は単独で勇者撃破をするだったはず。なぜこれをうちたちに渡したんだろう?」


「仇を討って欲しいとかじゃないでしょうか?」


 クミンとローリエが言葉を交わすと同時にオレガノを見る。腕を組んで難しそうな顔で唸っていたオレガノは2人の視線に気がつき顔を上げる。


「ウェスティーは強いだけでなく、とても頭のいいヤツなのじゃ。最初からこの記録を残すことを目的に行動していたのではないかと思うのじゃ」


「記録を残す? なぜです? もしそうであればそうだと言えば良いじゃないですか」


「勇者対策をするためだと思うのじゃ。強大な敵でも徹底的に分析し的確に攻撃する、それがあやつの戦法だったのじゃ。それに言わなかったのは、余たちが関わってくると邪魔だと考えたからだと思うのじゃ」


 オレガノが話すのを聞いていたアンジェリカが口を開く。


「私もオレガノの意見に賛成ね。各地の村での記録を見るに、犠牲ありきの戦法を取って勇者たちの戦闘データーを引き出そうとしていたのが分かるわ。オレガノが関わったら、そんなことさせないと反対するのは分かっていたから言わなかったといったところでしょうね。それに私たちになにかを残そうとしたことは、戦闘記録だけでなく贈り物からも窺い知れるわ」


 そう言ってアンジェリカが鳥型のガーゴイルを見ると、ガーゴイルは頷きテーブルの上に一列に並ぶ。

 彼らはそれぞれグラスや酒瓶、鎖の破片などを持っておりそれらをテーブルの上に並べていく。


「オレガノ、これを」


 アンジェリカがグラスを手に取るとオレガノに差し出す。


「うぅ、酒臭いのじゃ」


 グラスを受け取ったオレガノが顔をしかめつつ中を覗くと中には氷が入っていた。氷は雫のような形をしておりなにもないグラスの中に佇んている。


「むむ、この氷……」


 オレガノがグラスの氷に触れると、氷はほんのり光りを放ちグラスが割れる。その瞬間、氷から魔力が溢れ始める。


「これは……魔王の真核? さっきまで力を感じておらんかったのになぜじゃ」


「それはこのグラスのせいね。魔力を外に漏らさないものみたい。似たようなものは知っているけどここまで繊細で力が強いのは初めて見たわ。それとこれは映像から見て、エリュプと呼ばれた勇者の仲間が自身を縛っていた鎖の欠片ね」


 アンジェリカが割れたグラスを手に取ってテーブルの上に丁寧に置くと、鎖の破片を手にする。


「これは魔力を押える効果があるものだと推測されるわ。つまり、力を抑制する能力があるということね。これも似たような品は知っているけども、ここまで精巧で緻密かつ強いものは初めて見たわ」


「そんなに凄いものを勇者はどこで手に入れたのでしょう?」


「手に入れたっていうよりも、特別に作られたって感じね。正直どんな素材でどんな術を込めればこの力が発動するのか見当もつかないわね」


 クミンの質問にアンジェリカが鎖を様々な角度から見ながら答える。その手の指で鎖を弾くとサフランを見る。


「サフラン、ジンジャーに伝えてほしいことがあるんだけど……あぁっとリストにして渡すからちょっと待ってて。それとオレガノ、ウェスティーのガーゴイルたちが話があるみたいだからって、それは⁉」


 オレガノが手に持っていたウェスティーの魔王の真核が強く光り始める。雫の形をした魔王の真核は液体化し、オレガノの足下に落ちると波紋を生み出す。


 そのまま波紋は大きく広がり消えてしまう。


「余に任せたと……」


 ずずっと鼻をすするオレガノの目元をクミンがハンカチで拭う。


「小言ばかりでうるさい爺さんだったけど、嫌いじゃなかったのじゃ」


 今にも涙が溢れそうな目を潤ませるオレガノを皆が黙って見守る。やがて、オレガノの涙を拭うクミンの姿を見て目を細めたアンジェリカが口を開く。


「ちょっとやることができたから私は行くわね。今後の計画はサフランとジンジャーを通して伝えるから。オレガノはまずガーゴイルの話を聞いて、魔王軍希望者の面接をお願いね」


 アンジェリカの言葉を聞いたオレガノがゴシゴシとやや乱暴に目を擦り、真っ直ぐ見返すと大きく頷く。


 その姿に微笑みを見せたアンジェリカは無数の鍵が束になったリングを手にすると、そのうち1つの鍵を選んで指で摘む。


 と同時に空間に縦に亀裂が入り隙間から光が漏れ出す。


「じゃあ、また連絡するわ」


 アンジェリカは手をひらひらさせると亀裂に手をかけ、両手で隙間を僅かに広げ体を滑り込ませる。

 一瞬で亀裂は消え去り、アンジェリカの姿もなくなってしまう。


 アンジェリカが消えた空間を見ていたオレガノはガーゴイルたちに目をやると、ガーゴイルはオレガノの肩に飛び乗る。羽根の間からくちばしで摘まんで取り出した便箋をオレガノに渡す。


「ウェスティーからの手紙かえ……ふむぅ、達筆過ぎて読めんのじゃ。ローリエお願いなのじゃ」


 オレガノが手紙を持った手を伸ばすと、ローリエが手に取って手紙を広げ目で読んでいく。


「一番目の望みは生き延びた仲間たちの保護を頼みたい……」


「なるほど分かったのじゃ。来た者たちは受け入れるのじゃ。悪いようにはせんから安心するのじゃ」


 石でできたくちばしを撫でながら話しかけるオレガノにガーゴイルは目を潤ませる。


「あとですね、城の地下に酒蔵があるからもし無事だったらそこの管理と、水源の管理。森も、畑もお願い。あと村をいくつか破壊したのでその修復と村人への謝罪……」


「ちょっと待つのじゃ。多くないかえ?」


「そうですね、ざっと40項目くらいあります」


 ローリエが手紙を見ながら数を伝えるとオレガノが頬を膨らませる。


「あやつめ、余が断りにくいと思って詰め込むだけ詰め込みおったのじゃな。最後まで抜かりのない爺さんなのじゃ」


 オレガノはウェスティーに文句を言いながらも、その表情にはどこか笑みが浮かんでいる。

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