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ごくあく魔王 と あんさつメイド の た・て・な・お・し?  作者: 功野 涼し
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5

 魔女っ娘ことカラミィーテを先頭にしてトルネードとエリュプの3人が山のふもとにある村に入る。


「この村は全く人の気配がないな。前の村は隠れているのがバレバレだったがな」


「気配がないっていうよりは、隠している感じがするんだよね」


 頭の後ろで腕を組みだるそうに言うトルネードに対してカラミィーテが鼻をスンスンとさせ気配を探る。


「探知とかはティフォンお姉ちゃんの方が得意だからなぁ。あたしコソコソするの苦手なんだよねー。ティフォンお姉ちゃん、今頃楽しんでるんだろうなぁ~」


 これまためんどくさそうに探知するのを止めて言い放つカラミィーテがエリュプを見る。


「んで? エリュプはここからどうすんの? 今回はあんたの番なんだからなにか考えてよ」


 前よりも自らを縛る鎖の量が増えたエリュプがふっと笑う。


「考えるもなにも全部平らにすれば解決だろう」


「わ~お、脳筋発言!」


 エリュプが腕に巻きついている鎖を引っ張りその先端にある鉄球を引き寄せたときだった、村の周囲が突然爆発する。爆発は村全体を囲んでおり円を描いて火柱が上がったかと思うと、地面に亀裂が走り大きな揺れと共に地面が崩れ、バラバラになった村全体が落ちていく。


「おっとと危ないなぁ」


 上空へと逃げ空中に浮いているカラミィーテが地面ごと下へと消えた村を見下ろす。


「落とし穴的なこと? 村ごと爆破するとか魔王ってのはスケールが大きいんだね」


 カラミィーテは崩れた村の下から出て来た巨大な水脈に手を広げて大袈裟に驚く。その視線には水脈に落ちた瓦礫の上に立つトルネードとエリュプの姿があった。


「水の上か、俺がやろうか?」


「いや、自分がやる。相手が有利と思う状況であっても跳ね返してこそ強者だからな」


「へいへい、強者は大変だな。まあ俺は西の魔王には興味ないから変わる気はないんだけどよ」


 肩をすくめたトルネードが後ろへ下がろうとした瞬間、水から大勢の魔族と魔物が飛び出し一斉に襲い掛かる。だが驚くこともなくエリュプが鎖を引き鉄球を大きく一周振り回す。


 振り回すといってもその速度は並みの者ではとらえきれないほどの高速、一瞬で肉塊へと変わり果てた魔族や魔物たちが水へ落ちていく。

 大きく揺れる地面と共に地下の壁から大量の水が吹き出しエリュプとトルネードに降り注ぐ。


 電撃を円状にした盾で大量の水を受けるトルネードと、気にすることなく我が身に水を受けて耐えるエリュプ。そして、水流に乗ってきた鎧を着た2体の魔族がエリュプの前に現れる。


「我ら魔王ウェスティー様をお守りする二本槍! 覚悟しろ!」


 名乗ると同時に2体のリザードマンが双方から槍をエリュプに突き刺す。一瞬ニヤリと口角を上げるリザードマンたちだったが、自分たちの槍が皮膚を貫通せずに凹ませているだけだと気づきすぐに驚愕の表情に変わる。


「ふむ、自分もまだまだ甘いな。もっと修行をするべきだな」


 槍の先端が僅かに食い込んでいるのを見て首を横に振りながら呟いたエリュプが、気合を入れ体に力を入れると槍は弾き返され、その反動でリザードマンたちはよろけてしまう。驚く間もなくリザードマンの一人の顔面をエリュプが掴むと真横に振り、もう1体のリザードマンにぶつけそのまま投げる。


 あり得ない速度で飛んでいった2体のリザードマンは壁に激突し、砕ける鎧と共に真っ赤な血しぶきを上げ動かなくなってしまう。


「これで終わりか?」


 静かにエリュプが見つめ尋ねる先には、壁から流れる水に映る魔王ウェスティーの姿があった。


「ほほほほっ、なんとも規格外な力を持っておるの。それでこそワシの相手に相応しいというものよ。ワシはこの先にある城で待っておるから来るがいい」


「これはこれは丁寧に、お誘い感謝する」


 頭を下げ礼を言うエリュプを、空中から降りてきたカラミィーテがジト目で見る。そんなことなどエリュプは気にする様子もなく鎖を巻き直し出発の準備をする。


 ***


 目の前にいる亀型のガーゴイル、カメオくんの光っていた目が元に戻ると魔王ウェスティーは長い髭を撫でる。


「ウェンスティー様、次の村で勇者どもを迎える準備完了いたしました」


「そうか、ご苦労。それにしても予定よりもかなり早いのぉ。どれっ」


 ウェンスティーは目を細め遠くを見つめたまま答えると、おもむろに立ち上がり伝令を伝えに来た兵を見る。


「ここまでの勇者どもとの戦闘の様子はどうなっておる?」


「はい、予定通り各村に配置した部隊による奇襲を行っていますが、その……」


「気にするでない。正直に申せ」


 苦虫を噛み潰したようような表情で口ごもってしまった兵をウェンスティーは促す。


「は、はい。傷一つつけられずに全滅しています。大砲等による攻撃も試みたのですが、一切効果がありません……」


「ふむ」


 報告を聞いたウェンスティーは、髭を擦りながら遠くを見る。


「戦闘の記録は撮っておるな?」


「はっ! ガーゴイル部隊による撮影を実行し、これまでの記録は全て保管しています」


「うむ、それでいい。さて、ここももう少ししたら戦場となる。最後まで戦う者のみ残りあとは避難せい。そうじゃの、南だな。南のオレガノを訪ねるといい。あやつは底なしのバカじゃから快く受け入れてくれるはずだろうて」


 ほっほっほと笑いながら言うウェンスティーは、短く返事をして急いで命令を伝えに行く兵を見送る。


「トカゲ娘とお人好しにはちと荷が重かろうて。年の功ってのを見せてやるから感謝せいよ」


 ウェンスティーは髭を擦りながら愉快そうに笑う。

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