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ごくあく魔王 と あんさつメイド の た・て・な・お・し?  作者: 功野 涼し
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 モニターが沢山並ぶ部屋で、ローリエが見つめる先にいる冒険者たちが魔族と戦闘を行っている。


 魔族はデーモン系数体。人型であり高位種であるデーモン相手に苦戦する冒険者たち。デーモンが魔力で鋭い爪を形成し冒険者を鎧ごと引き裂く。


 苦悶の表情で倒れる冒険者だが、他の仲間が回復魔法を使用し傷を治し、別の仲間がデーモンの相手をする。苦戦する中、立派な防具と剣を持つ1人の冒険者がデーモンを斬り裂く。


 安堵の表情を浮かべる冒険者たちだが、別のデーモンが手に持っている槍で突いてきたのを立派な装備の冒険者が盾で受け止める。


 そのとき、足もとが大きく揺れ一瞬でヒビが入り四角く線が入る。その四角の中心に線が入りそこを中心に地面がせり上がって折れ畳まれ、中にいる冒険者やデーモンごと押しつぶそうとする。


 立派な装備の冒険者が剣を投げると、それは畳まれる地面のつっかえ棒となり、一瞬だけ潰れるのが遅れる。その間に外へ逃げる冒険者たち。そして剣を砕きデーモンごと地面が潰れてしまう。


「さすが『神引き』のカナールさんだ! 運も実力も半端ないです‼」


「たまたま運が良かっただけだ。地下3階までは遊び要素が強いダンジョンかと思っていたが、4階からは難易度が跳ね上がる。特に5階からは確実に命を狙いにきている。まるで3階まででレアな装備を当てて、地下へ挑戦してみろと誘っているようだ」


 カナールと呼ばれた冒険者は、元に戻った地面に慎重に触れ罠が発動しないことを確認すると、デーモンが落とした武器やアイテムを手に取る。


「結構高価なものだな。難易度は高いが見返りも大きいし奥にあると噂の秘宝にも心惹かれる……」


 奥を見て呟くカナールの肩を仲間が叩く。


「俺の防具も壊れてしまったし、ここは一旦戻って『秘宝の泉』で武器を引き当てましょうよ」


「そうだな、俺の武器も壊れてしまったし、引くとするか」


「おぉ! またカナールさんの神引きが見れるんですね! レアアイテム引くの楽しみにしていますよ」


「そうそう引けるわけじゃないさ。失敗だってあるんだから。プレッシャーになるからやめてくれよ」


 笑いながら謙遜する冒険者、カナールはかつて冒険者初心者としてこのダンジョンに挑み『秘宝の泉』でレアアイテムの一つ、オリハルコンの剣を手に入れる。元々の才能と強い武器により実力を開花させ、今や一級冒険者として名を知られるほどに成長して自分のパーティーを持つほどである。


「この『ギャンブリングダンジョン』に愛されたカナールさんなら引けますって!」


 仲間に声をかけられながら地上へ戻るカナールたち一行をモニターで見つめるローリエは、紙に記録を取りながら机の上に投影されているキーボードで別のモニターに数字を打ち込んでいく。


「あのカナールという冒険者は成長が早いですね。もう少しいい武器を与えてみましょうか」


 裏で確立操作をされているとも知らずに『神引き』と称されるカナールたち一行をモニターを自動追尾モードに切り替え、別の冒険者たちを見るローリエの肩がポンポンと優しく叩かれる。


「ローリエ最近ずっと仕事しているでしょ。根詰め過ぎじゃない?」


 集中して仕事をしていたローリエは背後からした声に驚きながら振り返ると、そこにはお盆に紅茶とお菓子を乗せたクミンが笑顔で立っていた。


「大丈夫です。罠の発動と効果のデーターを取り終えたら今日はやめますから」


「う~ん、やっぱり一人じゃ限界があるでしょ。一応裏で新生魔王オレガノ軍として人材募集しているからもうちょっと待ってて」


「今度面接やるんでしたよね。はぁ~クミンさんの方も大変ですね」


「まっ、お互い様ってことで。それよりもさ、勇者たちを分断する方法が思いつかなくて、皆困ってるんだけどローリエはなにか思いつかない?」


「あぁ……今出てる案は4人がバラバラにいるところを襲う。または玉砕覚悟で突っ込んで一人だけ転送する。あとはおびき寄せるでしたよね……正直どれも運要素が強すぎますよね」


 クミンとローリエが腕を組んで考え込み始めたとき、上の方から騒がしい声が下りてくる。


「おい、オレガノやめろって! 恥ずかしいぞ」


「いやなのじゃー、クミンたちにも見せるのじゃ~」


 階段を下りてくるオレガノとサフランの声は、すぐにクミンとローリエの前に現れる。


「なんでネギ?」


 クミンが思わず声を出してしまうオレガノの姿は、両手にネギを持っていて術で消していて見えないが角の間にネギを刺しているので、頭から二本のネギが生えているように見える。


「町にアンジェリカと買い物に行ったらネギをおまけでもらえたのじゃ。こうやって踊ったらアンジェリカが笑ってくれたのじゃぞ!」


 4本のネギを振り回してはしゃぎながら報告するオレガノを見てクミンは、額を押さえてため息をつく。


「仮にも魔王として復活しようかという人がそんな格好して、そんな姿を見られたら皆幻滅して魔王軍希望者が激減しますよ」


「そう? 私は逆に多くの人に見せたいけど。だって可愛いじゃない。可愛いは正義よ。私なら魔王軍に入っちゃうわ」


 ヒールの音を響かせ階段を下りてきたアンジェリカが、ネギを刺しているオレガノの頭を撫でる。嬉しそうに目を細めて撫でられるオレガノを見てクミンがため息混じりに言葉を吐く。


「いや、それはアンジェリカさんだけでしょ。それに可愛いとか言いますけど、それって対勇者において必要のない要素だと思います」


「でも二つ名が『愛くるしい魔王』なわけでしょ。それなら愛くるしさを推してもいいんじゃないかしら? クミンだってノリノリで二つ名を決めてたじゃない」


「そ、それはそうなんですけど……」


 アンジェリカに対して言い返せないクミンは唸ってしまう。

 ふふふっと笑うアンジェリカの横で、なぜか勝ち誇った顔で胸を張るオレガノ。そんな様子を笑いながら見ていたローリエは、モニターからのアラートを聞いて視線をモニターに向ける。


 モニターには、ローリエが監視中の罠に先ほどとは別の冒険者のパーティーが近づいてくる様子が映し出されていた。


「罠の反応速度の設定を変えてみたんですけど、どうでしょうか」


 独り言を呟いたローリエは、自分の隣に椅子を引きずって持ってきて飛び乗ったオレガノを見て微笑む。


「ワクワクするのじゃ」


 モニターを見て目をキラキラさせながら、オレガノが頭を揺らすと一緒にネギが揺れる。


「お前ネギクセーよ。取れよ」


「嫌なのじゃ! それよりも罠が発動するか見るのじゃ、見所を見逃してしまうのじゃ」


 オレガノとサフランが言い合うのを、隣で笑いながら見ていたローリエがモニターに目をやる。


 何気なく冒険者の行く末を見ていたローリエの頭の中に言葉が浮かんで並ぶ。


 ━━ネギ


 ━━笑ってくれた


 ━━可愛い


 ━━愛くるしい


 ━━見たら幻滅


 ━━多くの人に見せたい


 ━━見所を見逃してしまう


 ━━ワクワク……


 ローリエはモニターとオレガノとサフランを交互に見る。


「あっ!」


 口を押さえて声を上げたローリエに、皆の視線が集まる。

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