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『魔王オレガノ 推し!!』と描かれたTシャツを着たアンジェリカは話し始める。
いつもの冷静なできる女社長的な姿はそこにはなく、ほんのり頬を赤く染めた乙女なアンジェリカが話すのは、オレガノとの出会い。
━━あっ、これ長くなる。
オレガノ以外全員がそう思った。
「オレガノ様との出会いの話も大変興味深いのですが、それは後でローリエがじっくり聞きますので、今は対勇者についてお話いただいてもいいでしょうか」
クミンが口を挟み、熱くなるアンジェリカを止めに入る。信じられないものを見る目をクミンに向けるローリエを無視され、咳払いを一つして冷静を取り戻したアンジェリカが話を始める。
「「オレガノが言った通りよ。勇者たちを分断し個別に撃破が基本よ。そのために対勇者用ダンジョンに転送し、ダンジョン内の罠と魔王を含めた軍勢で総力上げて討伐するつもりよ」」
格好は変だが真面目な顔で説明するアンジェリカが語る内容は、至ってまともである。
「「おびき寄せる方法はまだ思いつかないけど、対ダンジョンの構想と準備、そして残り2人の魔王への接触をオレガノの力を借りてやっているわ」」
アンジェリカの口から名前が出ると、オレガノがふふんと鼻息荒く自慢気に胸を張る。
「お話は大体分かりました。まとめると、このまま勇者を無視し続けることはできない。そのための対策を取る必要があり、オレガノ様の力を必要としていると……であってますかね?」
クミンのまとめにアンジェリカが頷くと、クミンは息を吐きアンジェリカを睨みつける。
「それはまるでオレガノ様を魔王に戻そうとしているように、アンジェリカさんがそう向けているように感じます。うちはオレガノ様が魔王に戻ることには反対です」
そう言ってクミンはオレガノを指さす。クミンの指先にいるオレガノが突然指さされたことに目を丸くする。
「一度負け、なんの力も持たない女の子になったオレガノ様を担ぎ上げ魔王にすることはあまりに無責任です。たとえ魔族の危機であってもその責務をオレガノ様に負わせること、うちは間違っていると思います‼」
強い口調で熱く語り始めたクミンのスカートをオレガノが引っ張る。言葉を止め振り返ったクミンと目が合ったオレガノは黙ったまま首を横に振る。
「クミン、ありがとうなのじゃ。でも前にも言った通り、余は必要とされれば魔王をやるのじゃ」
真っ直ぐクミンを見るオレガノの足はスカートで見えづらいが、僅かに震えていることに気がついたクミンは、無言でオレガノの頭の上に手を置く。
そしてそのままオレガノの頭が揺れるくらい乱暴に撫でると、フンと一言発し横を向いてしまう。
「弱いくせになんでそう背負い込みますかね……」
雑に撫でられ髪の毛がぐしゃぐしゃになった頭を押さえるオレガノの手にクミンが触れる。
「どうせ一人ではなにもできないのに、なにを言っても勝手に突っ込んでいくんですよね。なら最後まで付き合ってあげます。ここまでついてきたついでにですけど……」
顔を逸したままぶっきらぼうに言うクミンの言葉に、オレガノの表情はぱあっと明るくなり今にも弾けそうな笑顔を見せる。
「クミンならついてきてくれると信じておったのじゃ!」
自分のスカートのしがみつくオレガノの頭に手を置いたクミンが、鋭い目をして威嚇する。
「なにが信じておったのじゃですか。さっきまで巻き込みたくないとか言ってませんでしたっけ? それに私が付き合うのはここまで一緒にいた、ついで、つ・い・で・ですから!」
顔を覗き込みキラキラした笑顔を向けるオレガノから、クミンは再び顔を逸らす。
そんなクミンの顔を追いかけ覗き込んだオレガノが歯を見せにししと笑うと、顔を赤くしたクミンがオレガノの頭を掴む。
「しつこいです!」
「ごめんなのじゃ! そんなに強く握らなくてもぉーいたたたっ!」
コホンっと咳払いが一つ響き、オレガノを握ったままのクミンが音がしたモニターの方に目を向ける。
「「仲が良いこと。焼けちゃうわね。お話の続きいいかしら?」」
笑みを浮かべるアンジェリカの言葉に、我に返ったクミンが慌ててオレガノを離すと、オレガノは両手を広げバランスを取って着地する。そのまま胸を張って拳を掲げる。
「余は魔王をやるのじゃ! それで勇者の脅威から皆が守られるならば喜んでやるのじゃぞ」
オレガノの発言に、やや不服そうながらも頷くクミンをはじめ、ローリエとアンジェリカは笑顔で手を叩き、サフランは翼をバサバサと羽ばたかせる。
「というわけでじゃ。余が魔王で魔王軍を結成するのならば、信頼できる幹部がおるのが常識じゃ! 幹部と言えば四天王! そこで今から四天王を決めたいと思うのじゃ!」
オレガノの口から出た、予想もしていなかった突然の四天王発言に、その場にいる全員が驚きの声を上げる。




