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ごくあく魔王 と あんさつメイド の た・て・な・お・し?  作者: 功野 涼し
ダンジョン完成は新たなお金の香り

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 興奮気味のオレガノに連れられて地下のモニター室にやってきたクミンとジンジャーを、机の前に座っていたローリエが微笑んで迎えてくれる。机の上では、広がっている沢山の紙をサフランがくちばしで摘まんで器用に重ね束ねると、整理している。


「ローリエ、ローリエ! クミンたちに言ってやるのじゃ!」


 ふふんと鼻息荒く胸を張るオレガノに催促されたローリエが、立ち上がるとモニターを指さす。

 クミンたちが視線を向けた先には、ダンジョン内で各罠に苦戦したり、魔物との戦闘を繰り広げている冒険者たちなど、ダンジョンではお馴染みの光景が映っている。他のダンジョンよりも人が多いように見えるのは、新たに発見されたダンジョンだからに他ならないと思えるのは普通の意見。


「なんであそこは、あんなに人が溢れているのですか?」


 クミンの視線の先にあるモニターに、その場にいる全員が注視していた。


 そのモニターには『秘宝の泉』と呼ばれる、お金を投げ入れアイテムを手に入れることのできる泉に冒険者たちが並んでいるのが映っていた。


「うちはダンジョンの経験も知識もあまりないので、普通というのが分からないのですが、『秘宝の泉』があるダンジョンにおいてあの様子は普通なのですか?」


 クミンがジンジャーに尋ねると、真剣にモニターを見ていたジンジャーは視線を外さずにそのまま口を開く。


「社長が派遣した大工から聞いたかもしれませんが、あの泉はお遊び要素であり冒険者側に利益をもたらすものなので取り付けないオーナーが多いと聞きます。そもそもダンジョンとは命をかけ宝を手に入れる場所ですので」


 そこまで話したジンジャーはローリエを見る。


「レアなアイテムで釣ってといった単純な感じではありませんね。お金を投げ込んだとき泉の色でアイテムのレア度を示唆させ、龍の演出を中心に時々別の生き物を出し期待感を煽る。色も信頼度の低い色で落胆させておきながら、段階的に色と共に信頼度を上げ期待させる。さらにはお金を投げ込んだときに稀に起こる音による煽り……とんでもないものを作りましたね」


「ここ三週間ほど改良に改良を加えて今の形が完成しました。もう少し改良できそうなので思案中です」


 笑顔で答えるローリエの横にきたサフランが、くちばしにくわえていた一枚の紙をクミンに手渡す。


「これは……⁉」


 クミンが紙を見た瞬間言葉を失う。


「レアアイテムを定期的に出しているので支出も大きいですが、それ以上に得るものが多く一日平均40,000エン、週で280,000エン程度の利益が出ています。これは泉だけの計算ですので、ダンジョン全体の費用を合わせると差し引き一日平均25,000エン程度です」


「となると月は単純に……750,000程度と」


 ローリエが頷きながら、別の紙を手に取る。


「これはあくまでもダンジョンを動かしての利益なので、泉に向かうまでにいるスケルトン、ゾンビの群れを倒すのに有効な聖なる武器シリーズの売り上げが伸びていますので、登録している武器屋から2パーセントのマージンが来月頭に入りますから収益は伸びると思います」


「これに加えて、魔物を討伐し部位を売り払ったお金も入るので借金返済の目処も……」


 ふふふふと笑いだすクミンの横にいたオレガノが満面の笑みで拳を掲げる。


「これで、ダンジョンを拡張できるのじゃ!」


「おい、ちょっとまてや!」


 クミンが、拳を上げてぴょんと飛び上がった瞬間のオレガノの頭を掴む。空中でキャッチされ足が浮いたままのオレガノの体をクミンが回し自分の顔に近づける。


「今拡張してどうするんです。まずは借金を返済し終えるのが先じゃないですか」


「クミンさん落ち着いて、オレガノ様の言うことももっとなんです」


 ローリエに咎められてクミンはオレガノから手を放す。


「今はまだ発見されたばかりのダンジョンなので、奥にいけば宝があるかもしれないという期待値が高いことと、泉の効果で冒険者がたくさん来ていますが、一階しかないことがバレたら見限られてしまいます。まだまだ奥があるのだと見せかけ時間を稼ぐのも限りがあります」


「むぅ……ダンジョン経営ってちょろいって経験者から聞いたんだけど」


 そう言いながらクミンはオレガノを睨むと、オレガノは腰に手を当て胸を張る。


「余の部下が経営していたダンジョンは80階まであったのじゃ。各階工夫を凝らしておったから千客万来で、寝ててもお金がガッポリ入ってきておったのじゃぞ」


「はよ言えや!」


 クミンがオレガノの頭に軽く手刀を落とす。


「ローリエの話を聞いて判断するに拡張は必須であり、つまりは借金をするしかないと……」


 頭を抱えるクミンにローリエが慌てて別の紙を差し出す。ちょっぴり涙目のクミンが紙に視線を落とす。


「これは私の案でまだ決めたわけではないので、今から皆で話し合って決めていきますが、地下二階は普通のダンジョンにして、地下三階に再び『秘宝の泉』を設置して奥に誘導できればいいなと考えています」


「でも、三階の秘宝の泉は一階以上にレアアイテムが必要ってことにならねえか? じゃないと三階まで下りる価値がねえからな。 だが、それだと一階の泉は誰もいなくなっちまうだろ」


 ここまで黙って聞いていたサフランが口を挟むとローリエが困った表情を見せる。


「そこなんですよね。一階層の泉がここまで盛況だと三階へ誘導するのは悩ましいんですが、だからと言って拡張しないのは攻略しがいのないダンジョンだと思われ、飽きられてしまう可能性が高いです」


「冒険者が来なくなるのはまずい……うちの借金のためにもなんとしても呼び込まないと困るっ」


 ローリエの発言に続きクミンが頭を抱えてしまう。


「現状で一階の秘宝の泉は人々を魅了していますよね。それ以上の魅力的な仕掛けはなにか考えられているのですか?」


「う、うぅ……実はそこも悩みどころなんです。単純に商品の価値を上げるだけで魅力が上がるのかと言えばそうでもない気がしますし。確率的な仕掛けは思いつくんですが、魅力となるとちょっと思いつかないのが正直なところです」


 ジンジャーの問いに答えるローリエを見てクミンが抱えた頭を振ってもがく。それをオレガノが興味津々といった感じで見ている。


「ローリエさんの提案した秘宝の泉の仕組みはギャンブル性が高いと感じます。昔から一定数の人はギャンブルに興じ、簡単な賭け事などは一般的な人でもやるものです。参考になるかは分かりませんが、ギャンブルが盛んな町メッサジューという場所があります。視察という名目で行ってみてはいかがでしょうか?」


 ジンジャーの提案にいち早く賛成するオレガノ、打開策が欲しいクミンとローリエもまたすぐに承諾することになるのだった。

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