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ごくあく魔王 と あんさつメイド の た・て・な・お・し?  作者: 功野 涼し
魔王家を買う

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6

 リビングを一通り案内され、自分たちの部屋になる場所を確認する。


 もちろんまだ完成していないので、四角い空間が広がっているだけだが、それぞれの家具やベッドの外見や位置を決めて完成形の想像を膨らませる。


「ベッドの下からもぶしゃーって煙が出てほしいのじゃ」


「いや、絶対にいらないですよねそんなの」


 両手を広げてぶしゃー感を表現するオレガノにクミンが冷たく言い放つ。


 ぶーぶー文句を言うオレガノを引っ張ってクミンたちは、再びリビングへと戻る。


「それで、これが他にはないこの家ならではの特徴となる場所になりますわ」


 カルダモンが暖炉の前に立ち手を入れると裏側の辺りに手を触れる。すると小さな震動と共に石同士が擦れる音がしリビングに備え付けられているテーブルが床ごとスライドしていく。


 そして下から現れたのは地下へと続く階段。薄暗い階段に足を入れると、光が下まで点灯していき足下を照らしてくれる。


 地下へと下りると小さな部屋にモニターが並んでいた。


「おおっ! これはもしかしてあれじゃな!」


「そうですわ、あれですわい」


 鼻息荒く興奮するオレガノにカルダモンがニカッと笑って答える。カルダモンの前にタラゴンが出てモニターを指さす。


「ダンジョン内の様子をここでモニタリングすることができるってわけだ。ここの操作方法は完成のときに詳しく教えるとしてだ、今日見せたいのはこれさ」


 タラゴンが部屋の隅にあった白い布を引っ張って取り除くと、下から大きなアーチが姿を現す。


 見た目は木材を曲げてアーチにしたもので、別段変わったところもなく、アーチの向こうには家の壁が見えている。


「さてさてお立ち合いってな。なんの変哲もないただの輪っかになにも持っていない状態で近づいても……」


 芝居がかった口調でタラゴンがアーチの中に入るが、なにかが起こるわけでもなくただアーチの下にいて向こうの壁に手を触れるだけである。


 一旦アーチから離れて軽く手を上げると、クローブが銀色の物体を投げる。それをキャッチしたタラゴンが指で摘みオレガノたちに見せる。


「これまたなんの変哲もない銀色の鍵。これを持ってゲートの中に手を触れると……」


 タラゴンがゲートの空間に触れると、なにもない宙に波紋が現れ広がる。それだけでも驚きだが、さらに手首から先が波紋の向こうに消えていることに気がついたオレガノが目を輝かせて、隠しきれない尻尾をパタパタ振っている。


「空間転移の術式なのじゃな! なかなか見られるものじゃないのじゃぞ!」


 興奮するオレガノにクミンも感心した表情でゲートとタラゴンを見る。


「空間転移が使える術者を持つ国は世界を支配すると言われているくらいですからね。タラゴンさんたちは空間転移が使えるということですか?」


「ちと違うんだなこれが。おいらたちのはゲート間を移動する特定の位置間を移動させるものであって、クミンのお嬢ちゃんがいう自力で自由に移動できる空間転移の使い手でないんだな。このゲート内部に刻まれた術式と鍵を合わせて発動させるものなんだ。説明を始めると長くなるから今は省かせてもらうんだな。それよりもこの先にあるダンジョンに興味はないかな?」


 ニンマリと笑みを浮かべるタラゴンに、興奮したオレガノは角と小さな翼まで姿を現した状態で前のめりになる。


「見たい! 見たいのじゃ! 余は興味深々なのじゃ!」


 尻尾と翼をパタパタさせて興奮するオレガノの姿に、満足そうな笑みを浮かべるタラゴンたち三人はオレガノたちに鍵を配る。


「進行状況は八割方ってところですわい」


 カルダモンが先頭に立ちゲートに触れる。


「ちなみにワシらはメンテナンスキーを所持しておって、今はここを使える状態ってこと。譲渡したあとは使えなくなるということは伝えておきますわ」


 右半身だけ見えていたカルダモンが簡単な説明をしながら、そのままゲートに吸い込まれるようにして消えていく。


「わーい!」


 なんの躊躇もなくゲートに飛び込むオレガノに額を押え呆れるクミンは、ローリエとサフランを見てゲートを手でさし先に行くように促す。

 緊張した面持ちのローリエの肩にサフランがとまりそのままゲートに触れ消えていく。


 それを見送ったクミンがタラゴンとクローブを見る。


「申し訳ありません。どうしても前職の癖で閉鎖空間と部隊の分断を余儀なくされるときは警戒してしまうので、悪気はないんです」


 サラっと二人に謝ったクミンはゲートの中へと消えていく。残されたタラゴンとクローブが目を合わせる。その額には汗が流れている。


「クミンの姉ちゃん只者じゃねえな……」


「だな、久々にあんな殺気を向けられた。変な動きしたら攻撃するって意味なんだろうけど、逆に緊張してぎこちない動きになるっての」


「間違いない。さすがうちのかしらと、社長が欲しがる人材ってわけだ」


 二人は同時に頷きゲートへと入って行く。

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