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ごくあく魔王 と あんさつメイド の た・て・な・お・し?  作者: 功野 涼し
魔王家を買う

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2

 オレガノたちは小さなフルーノ平原の先にある小屋の前に立っている。


 正確には小屋だったものの前に立っている。立体だった小屋の面影は今はなく、木材が積み上がっている瓦礫の山があるだけ。


「酷いあり様なのじゃ」


「言われなくても分かっています」


 オレガノとクミンは瓦礫の山に視線を向けたまま言葉を交わす。お互い目は合わせないが、その間には見えない圧が確かにある。


 圧を放つクミンが今回の拠点建設の借金を背負うことになることが昨晩決まり、やや不機嫌でピリピリした空気を放っている。


 ローリエも今回の借金を背負うことを提案したが、アンジェリカと直接会っていないことに加え、前にダンジョン建設に当たって書いた書類があることから、ダンジョンの一部として処理した方が安く済むといった理由からクミンが全額負うことになる。


 そんな理由からピリピリしているクミンに対して、オレガノは気づいてはいるものの、どこかズレた発言でクミンを刺激する。


「クミン、家の色はなにがいいかえ? クミンが決めていいのじゃ」


「塗料代がかからない方がいいので無色がいいです」


「あ、いや……それはちと味気ない気がするのじゃが……。そ、そうじゃ! クミンはどんな部屋にしたいのじゃ? 希望通りの間取りにしていいのじゃぞ。家具とかも沢山つけてじゃの」


「柱と壁があればいいです。ドアは勿体ないのでいりません」


「ド、ドアが勿体ない……斬新な考え方なのじゃ」


 気を使う元魔王とピリピリするクミンの圧に耐えきれなくなったローリエが口を開く。


「そ、それにしてもサフランさん遅いですね。アンジェリカさんが手配してくれた大工さんってどんな人たちなんでしょうね。楽しみですね」


 ローリエが苦笑いで、オーバーリアクション気味に辺りを見渡しながらサフランの姿を探す素振りをする。


「あっ! あれがそうじゃないですか! ほら、お二人ともあっちを見てください」


 遠くの方に人影とその前を飛ぶ丸っこい鳥のシルエットを発見したローリエがホッとした顔でオレガノとクミンに声をかける。


 二人はローリエが必死に指さす方に目を向けると、サフランの後ろから三つの黒い影が横並びで向かってきているのを確認する。


 三つの影はやがてたくましい体つきの三人の男たちへと姿を変えていく。三人はオレガノたちの前に横一列に並ぶ。


 上半身裸でそのまま革ジャンを着ており、髪の毛一つない綺麗なスキンヘッドに白い顎髭が特徴的な真ん中にいる一番体格の良い男が筋肉を見せつけるポーズをとる。


「カルダモン!」 


 どーん! 


 名乗ると同時に背後で爆発が起き、赤い煙が上空へ向け上がる。


 続いて右にいる同じくスキンヘッドで一番背が高くやや細身のタンクトップ姿のマッチョが、カルダモンとは違うポーズをとる。


「クローブ」


 どーん!


 爆発と共に青い煙が上がる。そして最後に左にいる、頭の中心にだけ黄色い髪が残る短いモヒカン男がポーズをとる。

 モヒカン男は一番背は低く横にも大きいが、けっして太っているわけではないことを、はち切れんばかりの筋肉がピチピチのTシャツの下から主張している。


「タラゴン!」


 どーん!


 みたび起こる爆発と共に、黄色い煙が上がる。


「「「我ら三人ダンジョン建設部隊‼」」」 


 どどーんっ!!


 カルダモンを中心にし左右のクローブとタラゴンが対称のポーズをとると、ひときわ大きな爆発と共に赤、青、黄色の煙が三人の後方から上がる。


「……いや、ダンジョンが人工物なのは秘密なのにそんな風に名乗っていいのですか? そもそもなぜにいちいち爆発するのですか」


 呆れた表情で冷静にツッコミを入れるクミンの隣では、目をまん丸にして驚くローリエとウキウキが止まらないといった感じで腰を横に振って小躍りしているオレガノの姿がある。


「わりいわりい、ワシらのトレードマーク的なヤツでよ。てなわけでワシがリーダーのカルダモンだ」


 どーん!


「おお、姉ちゃんが今回の依頼主か。家造りは俺らに任せときな!」


 どーん!


「おいらタラゴンだ! よろしく頼むぜ」


 どーん!


「ああっうっとうしいいいぃぃ!! あなた達はいちいち爆発しなきゃ話せないんですか!」


 クミンがキレるのを、頭を掻きながらカルダモンが苦笑いをする。


「いやわりいって、止めるからちょっと待ってろよっと」


 どーん!


「かしら、そっちの線切ってもらえますかい?」


 どーん!


「クローブ、その線じゃなくてこっちだぞ」


 どーん!


 三人が言葉を発する度に爆発と煙が上がる。その様子をどうしていいか分からず、まん丸な目のまま凝視するローリエと、その頭の上にいるサフランが冷めた視線を三人に向ける。


「この術式で合ってるか?」


 どーん!


「ちょっと張り切り過ぎて、魔力の供給を多めにし過ぎたな」


 どーん!


「ちげえねえや」


 どーん!


「「「はっはっはっ!!」」」


 どどどーん!!


 ブチッ!!


 カルダモンたちの会話と笑い声によって連続で起きる爆発の中、なにかがキレる音する。


「お前らぁぁ! うっとうしいんじゃーあぁぁ!!」


 クミンがナイフを投げ、三人の足元付近に突き刺す。


「爆ぜるがいい!」


 地面に刺さったナイフに驚く暇もなく三人の足元が光ったかと思うと、巨大な炎と共に大きな爆発が起き、そのまま三人は光に包まれてしまう。


「はぁ、はぁ、はぁー」


 息を切らすクミンの目の前に立ち昇る煙から三つの黒い影が現れる。影はゆっくりとクミンに向かってきてやがてカルダモンたちが姿を現す。


 頬や手足に黒いススがついている以外無傷な三人は、先ほどまでとは違い鋭い目つきでクミンを睨む。


 その殺気にも似た雰囲気を持つ三人とクミンが無言で睨み合う。


「姉ちゃん」


「なんでしょう」


 返事をしながらクミンが中指をくいっと動かすと、どこからか現れたナイフが手に握られ、臨戦態勢をとる。


「いい爆破だったぜ! ワシ感動した!」


「いやはや、こんなところにも仲間がいたなんて嬉しいねー」


「仲間! 仲間!」


「ちげぇーわ! コラ、離れなさい! うちはあなたたちの仲間じゃないです! 踊るな〜! ってオレガノ様はなにをやってるんですかぁ!!」


 クミンを囲んで「仲間」を連呼しながら小躍りする三人に混じってオレガノも踊り始める。


「家……ちゃんと建つんでしょうか?」


「さあな、知らね」


 クミンを中心にして踊るオレガノたちを見て、ローリエとサフランは、胸を不安いっぱいに膨らませる。

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