5
カセロールに戻ったオレガノたちは、町の出入り口付近に集まり、柱の基礎にある段差に座るオレガノの前に並んで立っている。
「カセロールには解体業者が南北と東合わせて三軒ありますが、手数料の差は100〜200エン。南の方が森に近いこともあって、獣系の解体が得意なようです。なので、やや手数料は高いですが腕は確かなので、解体部位の買い取り価格が高めにつくと思われます」
ローリエがオオイタチの買い取り価格をまとめた収支報告書をオレガノに提出して報告する。
「ほえー、全部で34,500エンとな。びっくり価格なのじゃ」
目をまん丸にして驚くオレガノを見てローリエが嬉しそうに笑みを浮かべる。
「今回は剥製の依頼がありましたから高いですが、普段は一頭辺り14,000エンになると考えていただければと」
「それでも30,000エン近くいくのじゃな。ローリエ、見事な働きなのじゃ!」
報告を受けて満面の笑みでローリエを褒めちぎるオレガノは、クミンとサフランを見る。
「クミンとサフラン。二人の活躍も見事じゃったのじゃ」
オレガノの褒め言葉にクミンとサフランも少し遠慮がちに笑みを浮かべる。
「よーし! 今日はお祝いなのじゃ! 美味しいものをいっぱい食べるじゃ!」
二人と一羽の表情を見て満足気な笑顔を見せたあと、オレガノは立ち上がって拳を上げ宣言する。
「いえ、無駄遣いはダメでしょ」
「もう少しお金を貯めてからにしましょう」
「まずは返済分の金貯めろ」
テンション高いオレガノに対し、冷静に堅実な言葉を言う二人と一羽を前にオレガノは拳を上げたまま固まってしまう。
「ちょっともダメかえ?」
恐る恐る尋ねるオレガノの目には涙が溜まってウルウルしている。
「ま、まぁちょっとなら……ね、ローリエ?」
「え? あ、はい。活力を得るという意味ではご褒美も大事ですよね? サフランさんもそう思いますよね?」
「お、俺? う、まあな。ちゃんと借金返してくれるなら俺は文句ないぞ」
潤んだ目で見るオレガノの姿に罪悪感を感じた二人と一羽の言葉を聞いたオレガノが、泣き顔から一変喜びを爆発させぴょんぴょんと跳び回る。
「わーい! やったのじゃ! やったのじゃ!」
体全体を使って喜びを表すオレガノの姿を見てクミンたちは、目を合わせて笑う。
***
町にあったお菓子屋で買った紙袋を両手に抱えたオレガノはニコニコ笑顔で歩く。その足取りは軽く、今にもスキップしそうなほどである。
町の中心から少し離れた街路樹の下にあるベンチに座ると、オレガノが紙袋を開けて中に手を突っ込む。
「これはクミンの分じゃ。こっちがローリエ、これはサフランなのじゃ」
紙袋から取り出した四角いお菓子は間にクリームを挟んだウエハース。それをクミンたちに配り終えると自分の分を取り出して天に掲げる。
「オレガノ様、別にケーキを買って食べてもよかったのになぜウエハースなのですか?」
クミンの質問にオレガノは掲げたウエハースをクミンに向ける。
「予算内で買えるのがこれじゃったからじゃ」
即答するオレガノに今度はローリエが話しかける。
「私たちの分は買わなくても良かったんですよ」
「そうだぜ! そもそも俺なんかにまで買う必要はないだろ」
ローリエの言葉に続くサフランだが、オレガノはウエハースをチッチッチと横に振る。
「皆で得た成果なのじゃ。余は皆で祝いたいのじゃ」
満面の笑みでそう答えるオレガノを前にして、クミンたちはそれ以上なにも言えなくなってしまう。
オレガノが再びウエハースを天に掲げる。
「余たちの勝利に乾杯なのじゃ!!」
晴天の空に向かって放たれたオレガノの宣言を皮切りに、全員がウエハースを口にする。
サクッと軽やかな音が青空に響く。
「うっ、口の中がパサパサに……」
「み、水が欲しいです……」
「ボソボソするのじゃ」
オレガノたち三人がウエハースに口の水分を奪われ苦しむ姿を、少し離れた場所からサフランが呆れた表情で見ている。
いまいち締まりの無いお祝いの会は、水を求める会へと変わるのだった。




