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ごくあく魔王 と あんさつメイド の た・て・な・お・し?  作者: 功野 涼し
小さく売って大きく儲けたい

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3

 オレガノとクミンのアンジェリカが言った意味を、説明してくれるであろう期待の視線を受けて、うろたえながらもローリエは一生懸命に説明を始める。


「多分ですけど、ギルドの資金源は依頼主が出す報奨金の7パーセントと手数料の1,000エンです。それと、たとえば一角ウサギの角が10本早急に欲しいという依頼があった場合。角10本は依頼主に渡りますが、残りの部位についてはギルドが所有します。そしてその部位を専門に卸す問屋がいるんです」


 なんとなく理解しているようなクミンと、ぽけぇ~っとしているオレガノを見て不安そうな表情になるローリエの頭をサフランが突っつく。


「つまりだ、クミン! お前は強いから魔物を乱獲して一気に素材を店に持っていくと需要と供給のバランスが崩れる。あくまでも個人的な範囲で売却しろってことだ。あんまり目立つ行為をすると、問屋に目をつけられゆくゆくはギルドにマークされる可能性があるぜって言いたいんだ」


「サフランさん補足をありがとうございます。えっと、カセロールの市場を観察して私がおおよその必要数を算出しますから、それに沿って狩りを行ってくれれば大丈夫です」


 ローリエとサフランの説明を聞いたオレガノがビシッと人さし指を天に向ける。


「つまり、ローリエに任せておけば大丈夫なのじゃ!」


「いや、絶対に分ってないですよねそれ」


 クミンのツッコミなど、どこ吹く風のオレガノはふふんと胸を張る。そんな二人を見て笑うローリエと、呆れてため息をつくサフランの三人と一羽は市場の調査するため、まずはアンジェリカのハヌマーン商会関連の武器屋を探す。


 ***


『武器屋 アルムス』の看板が掲げられた店の戸を開けオレガノたちは中へと入る。


「オレガノ様ご一行ですね、お待ちしておりました。私、ジンジャーと申します。以後お見知りおきを」


 武器屋に入ったオレガノたちを笑顔で迎えてくれたジンジャーと名乗る男性が頭を下げる。黒い髪に混ざった白髪が目立つジンジャーは、立派な口ひげを上下に動かしながら口を開く。


「なんでも、私の店に直に魔物の部位や鉱石を卸してくれるとのこと。個人で冒険者業をする者はほぼいないので、フリーの存在というのは私も初めてですがこれからよろしくお願いいたします」


 笑顔を崩さない商売人のジンジャーの言葉にクミンが首を傾げる。


「フリーは儲からないと聞いたことがありますが、武器屋お抱えの冒険者などを作れば供給はもっと安定するのでは?」


「そこはギルドの存在が大きくて難しいのです。主要な狩場や採掘場はギルドが管理していますし、冒険者登録をした方が冒険者は稼ぎやすいですからね。それに市場の品が飽和状態にならないように管理しているのもギルドですから、それによって武器屋をはじめとした店が高値で冒険者に提供できているのも事実です」


「ほぇ~、なんだか難しい話じゃの。だけどもこの間別の町で鉱石高価買取なんてやっておったが、あれは問題ないのかえ?」


 感心した表情のオレガノの質問にジンジャーは笑顔で答える。


「実はそういうのもギルドの許可が必要です。ときにはギルドからお願いされたりもします。市場のバランスを整えたりその素材が必要な事象、つまりは有効な魔物の存在や害獣、害虫の駆除、災害による復興など。他には新たな採掘場が発見されたときそこの情報が欲しいときなど冒険者に積極的に行ってほしいのでそのようなキャンペーンをおこないます。この度の契約では、オレガノ様たちについては、ある程度の供給に対応するように申し付けられておりますから、上限表に基づいて対応してもらえれば大丈夫です」


 笑顔を崩さないジンジャーに、ここまで何やら考えていたローリエが話しかける。


「物流に素材そのものがあまり流れないのはギルドが関係しているなんてことを同僚から聞いたことがありますけど、聞けば聞くほど裏側が見えてきますね。ところで私たちにそんなことを教えても大丈夫なんですか? ジンジャーさんは武器屋ですからギルドとの関係は深いんじゃないんですか?」


「みなさん魔族ですよね、だったら大丈夫です。私も魔族ですから。人間に対して過剰な配慮をするほどできた魔族ではありません」


 ジンジャーの発言に三人が目を丸くして驚く。


「といっても年老いたアークデーモンですので、強い力は持っておりません。前線を引退しこうして前々から興味のあった商売のチャンスをいただき、自身で店を切り盛りさせてもらっております」


 そう言ってジンジャーは笑みをオレガノに向ける。


「大昔ですがオレガノ様と戦場で出会ったことがあるんですよ。私が一方的に負けましたが」


「なんと⁉ 余は全く覚えておらんぞ」


 笑うジンジャーに驚きつつも必死に思い出そうとするオレガノが首を捻る。


「あっさり負けましたから印象にも残ってないでしょう。混沌とした戦場の中で真っ直ぐぶつかってくる南の魔族には苦労させられましたが、羨ましくもありました……と、話が逸れましたね。こちらが私たちが納品して欲しい品の上限リストになります。変動があればお知らせしますので対応してもらえると助かります」


 笑いながらジンジャーがリストの紙を手にするとローリエに手渡す。


「それと、ローリエ様にはこれを」


 ジンジャーがカウンターの下から黒い厚紙が表紙のノートをローリエに渡す。


「これは……帳簿ですか?」


「ええ、社長からの贈り物になります。オレガノ様をよろしくと伝言を預かっております」


「はい、任せてください!」


 ローリエは帳簿をぎゅっと抱きしめて気合の入った返事をすると、横でうんうんと満足気に頷いているオレガノに帳簿を見せる。


「オレガノ様、私頑張ります!」


「期待しておるのじゃ」


 オレガノに期待の言葉をかけられ嬉しそうにするローリエと、それを笑顔で見るジンジャーにオレガノの頭の上で翼を広げるサフランを、少し離れた場所から見ていたクミンが呟く。


「こうも人が集まってくるのは、小さくなっても魔王ってことなんですかね……」


 小さなオレガノが胸を張る姿を見てクミンはふっと笑う。


「魔王……そんな風には見えないんですけどね。不思議です」


 クミンは嬉しそうに呟く。

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