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ごくあく魔王 と あんさつメイド の た・て・な・お・し?  作者: 功野 涼し
小さく売って大きく儲けたい

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 魔王オレガノの住んでいたディザスター魔王城から出てサイハテ村を経て北上、キュイエールの町周辺にしばらく住みついたオレガノとクミンは、ローリエの提案を受け東にあるカセロール国へと向かうことにする。


「キュイエールからさらに北の町ソトゥーズにある魔王軍の物流倉庫で働いていたんですけど、人間によって壊され略奪されるのを見て必死に逃げてきました」


 街道を歩くローリエがオレガノとクミンを見て涙ぐみながら話し始める。


「私、戦闘はからっきしダメなので、道中魔物に追われながら、なんとか辿り着いた先でアルバイトで飢えを凌いました。でも詐欺にあってあげく捕まるというピンチにあいましたけど、おかげでオレガノ様とクミンさんに出会えてよかったです」


「カセロール国は人が多くて賑やかだと言ってましたけど、実際にローリエは行ったことないんですよね。貿易品の品揃えなどに詳しかったですが、その情報はどこから得たのですか?」


 目を擦って涙を拭くローリエにクミンが尋ねると、ローリエは少し赤くなった目でクミンを見る。


「私が働いていたソトゥーズは三国に挟まれた町でして、各国からの貿易品が集まってくる場所です。ですから特産品とその値段が大体分かるんです。魔物などの加工品を多く扱っているカセロールは、今の私たちにピッタリなのではないかと」


 説明し笑みを見せるローリエがオレガノに目を向ける。


「これも市場の流れを予測して、いち早くオレガノ様が物流拠点をソトゥーズに作ってくれたおかげです」


「お? おおう? そうなのじゃ、任せておけなのじゃ」


 戸惑いまがらも胸をドンと叩くオレガノにクミンがジト目を向ける。


「それよりもじゃ! 寝泊まりするところはどうするのじゃ? 道中に狩った魔物を売って久々にベッドで寝るのもよいのではなかろうか?」


 オレガノの提案にクミンとローリエが目を合わせて同時に口を開く。


「「野宿です。無駄遣いはできないんで」」


 重なる二人の声にオレガノはガックリと肩を落とす。


 ***


 魔王オレガノの住んでいたディザスター城より北東に位置するカセロール国は、南に森、東には海が広がる豊かな国である。


「はぇ〜あんな魚見たことないのじゃ。美味しいのじゃろうか? 食べてみたいのじゃ!」


 ぴょんぴょん跳びながら店に並ぶ魚を指差すオレガノの頭を、むんずと掴んだクミンが、そのままオレガノの手を引き魚屋から引き離す。


「いつかお金に余裕ができたら買いましょう。それよりも今はこれからどうするかを考えるほうが先です。ほらそんなに飛び跳ねると迷子になりますよ」


 駄々をこねるオレガノを引っ張るクミンを見たローリエがクスッと笑う。


「クミンさんはオレガノ様と仲がいいんですね」


「別によくありませんよ。迷子になったらめんどくさいからお世話してるだけです」


「余が迷子なんかになるわけないのじゃ」


「はいはい、そうですねー」


「むきぃー! その言い方は余を馬鹿にしておるのじゃ」


 文句を言い合いながらも手を引き、引かれる二人を見てローリエは笑みを浮かべる。


「お前ら、ちゃんと市場を見ろ!」


 クミンに手を引かれるオレガノの頭の上にサフランが着地して、くちばしで脳天を突っつく。


「突っつくでない! 痛いのじゃ! それにしてもサフラン、すぐどこかへ消えるがいつもどこにおるのじゃ?」


「ちゃんとついて来てるぞ。上空から監視してたから見えなかっただろうがな」


「一緒にいればよいのに、なんですぐに離れるのじゃ?」


「あ? 俺は借金を踏み倒さないようにする監視役だぞ。一緒にいたら面倒だろ」


 オレガノの言葉に意味が分からないと、頭の上で首を捻るサフランをむんずと両手で掴んだオレガノがサフランと向き合う。


「どうせ長い付き合いになるのじゃ。もっと仲良くしたいのじゃ」


 オレガノに見つめられた上に仲良くしたいと言われ、ポカンとくちばしを開けたサフランがカチンとくちばしを閉じるとふっと笑う。


「はー、お前変わってんな。まあ、いい。言っとくが俺と仲良くしたからって減額とか期待するなよ」


「しておらんのじゃ。どーせダンジョンはどんどん増築する予定じゃから借金は増えまくりなのじゃからな! 縁が切れることはないかもしれんのじゃ! ふっはっはっはっは!」


 豪快に笑うオレガノの頭をクミンが掴む。


「ちょっと待ってください。その借金ってうちの名前でする気じゃないですよね」


「あいたたっ! 余はちっこいからできんのじゃからクミン以外誰が借金できるのじゃ?」


「人の名前で勝手にぃ~! ん? そう言えば」


 クミンがローリエを見るが、ローリエは全力で顔を背ける。


「なんで目を逸らすのです! ローリエあなたも借金を背負うべきです! うちと分け合いましょう!」


「い、いえ私はそんな途方もない金額はちょっと……」


 目を血走らせて圧をかけるクミンに迫られるローリエの頭にサフランがとまる。


「アンジェリカから通信だ。繋ぐぞ」


 それだけ言ってくちばしを大きく開くサフランにほっとするローリエの頭上でアンジェリカの声が聞こえてくる。


「「いつの間にかサフランともそんなに仲良くなっちゃって、楽しそうね」」


「アンジェリカも入ればいいのじゃ」


「「あらら、嬉しいお誘いね。ちょっと考えさせてもらおうかしら。ひとまず、お近づきの挨拶ということで私からハヌマーン商会の一つ、武器防具を扱うアルムスの支店がカセロールにあるわ。私の方から話は通してあるからどんな素材が欲しいのか聞いてみるといいわ」」


「おぉ~! さすがアンジェリカなのじゃ!」


 ぴょんぴょんと飛び跳ねるオレガノが褒めるとサフランから「ふふふ」とアンジェリカの笑い声が聞こえてくる。


「「喜んでもらえたのなら嬉しいわ。そうそう私のところはそれでいいんだけど、他の場所を開拓するときは注意が必要よ。問屋と冒険者ギルドが関わってくるから調子にのらないようにね。その辺りは物流倉庫にいたローリエならなんとなく分かるでしょ。それじゃあ、頑張って」」


 ブツッとアンジェリカの通信が切れると、オレガノとクミンの視線は口を閉じたサフランの下にいるローリエに集中することとなる。

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