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ごくあく魔王 と あんさつメイド の た・て・な・お・し?  作者: 功野 涼し
小さく売って大きく儲けたい

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1 相場を見極め買い取りルートを作るのじゃ!

 丸テーブルを囲む三人と一羽はおもむろに見つめ合う。


「じゃあ、うちから」


 クミンがテーブルの上に袋から取り出したお金を並べる。


「3,150エン。次ローリエ」


 サフランが金額を読み上げると、そのままローリエを翼でさす。


「は、はい。では!」


 ローリエが財布からお金を取り出すとテーブルの上に並べる。


「2,500エン! よってクミン、オレガノの勝ち!」


「やったのじゃ!」


「ま、負けてしまいました。さすがオレガノ様です」


 サフランがクミンをさすと、オレガノが両手を上げ喜びを爆発させ飛び跳ねる。ローリエは悔しそうにはしているが、オレガノを讃えて手を叩く。


「ふっふっふふ~ん、余の力を思い知ったか!」


 腰に手を当て胸を張るオレガノの頭をクミンがつかむ。


「オレガノ様はなにもしていないでしょ。それよりもここからどうするかを考えないといけません。三人になったからって稼ぎが増えるかといえばそうでもなさそうですし」


 クミンの発した言葉に現実が見え、クミン自身も黙ってしまい、三人がテーブルの真ん中にあるお金をじっと見つめる。


「そういえばローリエは、なんのアルバイトをしていたのですか?」


 沈黙を破るクミンの質問に下を向いて考えていたローリエが慌てて顔を上げる。


「仕事ですか? えっと主にポスティングと、ケーキの上にイチゴをのせ続けるアルバイトをしていました」


「ケーキにイチゴをのせる? そんなアルバイトがあるんですか?」


 クミンにとっては馴染のない仕事内容に、クミンは興味深そうに尋ねる。


「はい、流れてくるケーキの上にイチゴをポンっとのせるんです」


「おおっなんだか面白そうなのじゃ! それなら誰でもできそうじゃし、余もやってみたいのじゃ!」


 話に割って入ってきたのをオレガノにローリエは笑顔で頷く。


「そうです、誰でもできちゃうんです。できちゃうから皆辞めていくんです」


 ローリエの言葉にオレガノとクミンは首を傾げる。


「考えてみてください。自分の目の前にケーキが流れてきて、その上にイチゴをのせるんです。一個のせたら次が流れてきて二個目。そして三個目……それをただずーと続けるだけです。他になにをするわけでもなく、流れてきたらポン。永遠に続くような時間の中、途中から自分がなにをやっているのか分からなくなってきて、ケーキの上にイチゴを二個のせたり、上下反対にのせたり意味の分からないミスを始めるんです」


 イチゴをのせるアルバイトのことを思い出したのか、ローリエが頭を抱えて苦悶の表情を見せる。


「そのうち自分の名前も忘れそうになるくらい頭が退化していき、最後にはなにも考えられなくなり無の状態に。それが日常にも浸食していく感じが恐ろしいのです……」


 苦悶の表情で頭を抱えて首を振るローリエにオレガノたちは哀れみの視線を向ける。


「ま、まあケーキにイチゴがのっていないと、悲しむ人もいるのじゃ。いろいろな人の苦労の上で世界は回っておるということなのじゃ」


 なんとなくその場をまとめたオレガノがクミンに目を向ける。


「となるとクミンの狩りが一番稼げるということになるわけじゃ」


「ええ、ですが三人に増え、聞いた話だとローリエは戦闘力は皆無らしいのでダンジョン完成まで凌げるかどうか」


 ローリエが申し訳なさそうにしょんぼりするが、両手をぐっと握って自分を奮い立たせるとクミンを見上げる。


「あ、あのぉ、クミンさんは狩った獲物をどのようにしてお金に変えているんですか?」


「解体屋に渡して、食べれる部位だけもらってあとは売っています」


 答えを聞いたローリエは唇を人差し指で押さえてなにやら考え始める。


「たとえばですけど、一角ウサギがいますよね。本体の買い取り価格が4,000エンとして……手数料、解体料が合わせて3,500エン。そこから各部位の買い取りを得て肉の部分を除くと、大体1,200エンくらいが買い取り価格でしょうか?」


 金額を聞いたオレガノとクミンが驚きつつ頷くと、ローリエが嬉しそうに微笑む。


「一角ウサギの角は程よい硬さと加工のしやすさから、武器だと持ち手に使われますし、ペンダントや指輪などの小物やボタンなどの生活品にも使われます。他に後ろ足は幸運をもたらすとされ毛と爪をまとめてアクセサリーにされます。あとは後ろ足の肉を食べると足が速くなるという迷信もあって、足が速くなりたい子供に食べさせるなんて風習もあります」


 ローリエの説明になにが言いたいのか理解が及ばないと、やや死にかけた目をする二人を見たローリエが慌てて結論を口にする。


「つまりです、角は武器屋や雑貨屋。後ろ足の毛や爪はアクセサリー屋、肉は食堂やレストランに持っていくとそれぞれが高く買い取ってくれ全体的な買い取り価格が上がり手もとにやって来るお金が増えます。えーっと」


 そこまで言ってローリエが唇をトントンと一定のリズムで叩くと、その指をくるくるっと回す。


「この町の買い取り相場は分かりませんが、大体角が1,000エン、足の肉が500エン、爪と毛が500エンで売れると思います。これらの部位を解体屋に買い取ってもらわず、毛皮のみを売ることで手数料と解体料を相殺して300エンほど解体屋からお金がもらえるはずです。全てを合計すると、2,300エンとお肉が手に入る計算になります」


「毛皮はなんで解体屋へ渡すんですか? それももらって別の場所に売った方がよさそうじゃないですか?」


 クミンの質問にローリエは頷いて答える。


「部位の中で毛皮はラビットファーといって一番高く売れます。そして一番安定して売れます。そこは、解体屋に譲ることで華を持たせることが大切になります。それに毛皮を売る前には洗浄しないと買い取り価格が落ちますから解体屋に任せた方が無難です。それにそもそも毛皮を売らないと3,500円を払うだけになってしまいます。手元の資金がないのにそれは危険かと思います」


 眉間にしわを寄せ目をつぶって黙って聞いていたオレガノが目をかっと開き、ローリエを凝視する。


「つまり、儲かるってことじゃな!」


「はい、さすがオレガノ様です」


「あんまり甘やかさないでください。すぐ調子に乗るので」


「なんじゃとー! 余は甘やかされたいのじゃ!」


 両手を挙げて怒るオレガノの頭を掴んで突進を阻止するクミンがローリエを見る。


「ですが、入ってくるお金が増えるといっても高く買い取ってくれる場所を探さないといけないってことですよね?」


「はい、そうなります。自分たちのルートを開拓する必要があります。そこで、提案なのですが今いるキュイエールから東に行くと、カセロール国があります。人も多く近くには大きな森とダンジョンもあると聞きます。そこへ移住してみるのはどうでしょう?」


 ローリエの提案を聞いてクミンが考え始める前にオレガノが声を上げる。


「面白そうなのじゃ! 余はそこへ行ってみたいのじゃ」


「ったく、もう少し考えてから発言してください。人が多いということは成功の可能性もありますが、失敗する可能性も大きくなるということですよ。物価も上がるんでしょうし、宿生活も遠のいていきますよ」


「考えてもそこでどうなるかなんて分らんのじゃ! ならば突進して成功すれば儲けもの、ダメだったら全力で撤退なのじゃ! それにどうせ野宿生活なのじゃからこれ以上悪くなることはないのじゃ」


 元気よく宣言するオレガノは、額を押え呆れつつも笑うクミンと拍手するローリエを見てふふんと胸を張って自慢気に笑うのだった。

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