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ごくあく魔王 と あんさつメイド の た・て・な・お・し?  作者: 功野 涼し
甘い誘惑は罠でしかない

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2

オレガノが満面の笑みでお腹をポンポンと叩く。


「おいしかったのじゃ~。ここを行きつけの店にして毎日来たいのじゃ!」


「そんなことしたら、破産します」


「なんじゃ、どうせすぐにダンジョン経営のお金がガッポガッポ入ってくるから安心なのじゃ」


自信満々にお腹をポンと叩いたオレガノをクミンは呆れた顔で見る。


「ダンジョンができるのは一カ月後です。それにしばらくは稼げても借金返済に使いますから贅沢はできません」


「えー、行きつけにしたいのじゃ。したいのじゃ!」


クミンは1,000万もの借金を背負っているので発言が慎重になるが、そんな気も知らないオレガノはくねくねしながら、尖らせた口で文句を言う。


オレガノの態度に苛立つクミンの代わりに、サフランがオレガノの頭を突っつく。


「お前ら借金あるんだ。贅沢は程々にしろ! 毎日食べるなお子様め!」


「お子様とは失礼なのじゃ! それに、おいしいものは毎日食べたいのじゃ!」


「毎日食べたら飽きる。たまに食べる方がおいしさ倍増! そっちのが贅沢! そんなことも知らないからお子様なんだ!」


お子様呼ばわりされ両手を挙げて憤慨するオレガノだったが、サフランの言葉を聞いて手を下ろす。


「ふむ、一理あるのじゃ。久しぶりにハンバーグを食べたからこんなにも美味しかったのかもしれん」


呟きながら考え込んだオレガノはやがて大きく頷いてクミンを見上げる。


「じゃあ、この店を余のお気に入りにしたいのじゃ。お金が溜まったらまた行きたいのじゃ」


「そうですね、ハンバーグ美味しかったですからまた来ましょう」


その言葉を聞いてクミンも大きく頷いて答える。にっこりと微笑むクミンに満面の笑みを向けるオレガノが向き合う。


「ちょっといいかな?」


二人の間に流れる和やかな雰囲気に見知らぬ声が水を差す。二人が同時に振り返ると中年の男が一人立っていてにこやかに笑みを浮かべている。


「誰じゃお前は?」


「突然声をかけて驚かせてしまったようで、ごめんね。ちょっと話を聞いて欲しいんだけど時間いいかな?」


オレガノが尋ねると男は、細い目をさらに細くし頭をかきながらへこへこする。


「さっき食堂で話が聞こえたんだけどさ。君たちってどこかの高貴な出身なんだろ? でも今はわけありで、こうして二人で見知らぬ土地にいるってことであってる?」


「なにが言いたいのです。たとえそうであったとしても、あなたになんの関係があるのでしょうか?」


「そう怒らないでくれよ」


クミンに睨まれ体を小さくして謝る男はへらへらしたまま、懐から一枚の紙を取り出す。


「いや~色々と大変な世の中だからさ。その、お金に困ってるだろうなって思ってね。そこでこういう美味しい話があるんだけど、どうかなって思ってさ」


男が差し出した紙を手にしたクミンが、鋭い目のまま視線を紙に落とす。


「会員を紹介するだけでお金が手に入る……冒険の片手間に人を幸せにして、お金も稼いであなたもお金持ちに!……愛のギフト・コーアコアの説明会近日開催……これは?」


オレガノにも分かるように、紙に書いてある内容をゆっくりと抑揚なく読み上げたクミンは男に視線を向ける。


「書いてある通りさ。実は明日この町のチューラ酒場で説明会があるんだ。本当は初めての人は参加できないんだけど、僕はコーアコアの幹部でね。特別に君たちを紹介しようと思って声をかけたんだ」


ウインクする男にピクリと眉を動かし怪訝そうな雰囲気を醸し出すクミンだが、男は構わず言葉を続ける。


「僕は自分だけ儲けようなんて考えは嫌いなんだ。富を得るチャンスは平等にあるべきだと思っているんだよ。この説明会にでれば詳しい稼ぎかたが分かるから興味あったらおいでよ。チューラの酒場のマスターに僕の名前、ラッハの紹介だって言えば会場に案内してくれるから」


警戒の表情をするクミンに笑顔で言うラッハと名乗った男は、呆けた表情で見上げるオレガノに目を向ける。


「お嬢ちゃんも今の生活大変だろう? 分かるよ僕もずっと大変だったからね。でも、この稼ぎ方で僕は今の生活を手に入れたんだ。それこそ、この食堂に毎日通えるほどにね。だって好きなときにハンバーグを食べたいだろ?」


「う、うむぅ……」


先ほどたまに食べると言ったものの、いざ毎日食べれると言われると心が揺らぎ唸ってしまうオレガノの頭にクミンが手を置く。


「今ここで答えを出さなくてもいいのですよね? 二人で話し合って興味があればお伺いします」


「そうだね、それがいいよ。絶対に損はしないからオススメってことと、説明会へのご招待は今回だけ有効だってことを教えておくよ。じゃあ、また明日」


そう言ってラッハは手を振ってその場を去っていく。その背中が見えなくなるまで見ていた二人が目を合わせる。


「どうするのじゃクミン」


「どうするとうちに言われても困りますね」


クミンは手に持っている紙に視線を落とすと、もう一度『冒険の片手間に人を幸せにして、お金も稼いであなたもお金持ちに!』の文字を目で読む。

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