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ごくあく魔王 と あんさつメイド の た・て・な・お・し?  作者: 功野 涼し
ダンジョン経営してみます

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8

「ふぅ~」


 テストプレイを終えたクミンは、目の前に浮かんだ『ゆっくりとゴーグルを外して下さい』の文字に従いゴーグルを外して、満足気に息を吐く。


 スタッフに手伝ってもらいながら、手袋やブーツを脱ぐクミンの元へオレガノがやってくる。


「クミン、余の作ったダンジョンじゃが……」


「オレガノ様、うち思い出しました!」


「な、なんじゃ唐突に……」


 いつも冷静な雰囲気をまとうクミンが、目を輝かせ興奮気味にオレガノの手を握る。その圧にオレガノは、思わず言葉を飲み込んでしまう。


「うちがまだ弱かったころ、先生に力任せにいくな! 相手の力を利用して敵を倒せ! ってよく言われてたんです。今回、弱体化したことで、うちが日頃力任せに戦っていたことを痛感しました。今日のことで強くなれた気がします!」


「そ、そうかそれは良かったのじゃ。だが今は、覚醒するときではないと思うのじゃが……」


 オレガノの言葉がクミンに届く前に、アンジェリカが割り込んでくる。


「クミン、あなた中々才能あるわね。たしか暗殺部隊にいたって言ってたわよね。あなたにその気があれば仕事を紹介するけど、どうかしら?」


 アンジェリカの提案にクミンは少しだけ悩む素振りを見せるが、オレガノを見てふと笑うと首を横に振る。


「暗殺業は実行するまでの潜伏期間が長くなりますし、顔も晒せなくなって自由が利かなくなるのでやめておきます」


「あらそう。冒険者になれない訳ありの人間がやる傭兵業なんかも斡旋できるけど……無理そうね」


 クミンの後ろで不安そうな表情をするオレガノを見て、アンジェリカは諦めた表情でため息をつく。


「今日はダンジョン経営の契約に来たので、申し出は嬉しいですけど、お断りします。申しわけありません」


 クミンが謝ると、背後にいるオレガノがホッと胸をなでおろす。その様子を見たアンジェリカが、ふっと笑うとクミンに三枚綴りの紙を差し出す。


「これは?」


「ダンジョン経営の契約書よ。サインをしてもらうの。それと……」


 受け取ったクミンに説明しながら、アンジェリカはスタッフが持ってきた別の紙をクミンに手渡す。


「こっちが借用書」


「いっ、1,300万……」


 借用書の額面を青ざめた顔で見つめるクミンに、ペンが手渡される。動揺で震える目で契約書の文字を読むクミンが、ふっと目を離しアンジェリカを見る。


「ここに毎月定めた金額を払うと書いていますが、このお金はどうやって払えばいいんですか? 毎月ここまで持ってくるとかです?」


「ああそれは、あなた方にこのミニガーゴイルの一種である、徴収(ちょうしゅう)バードをつけるわ」


 タイミングよくやってきたスタッフから鳥カゴを渡されたアンジェリカが、カゴの中にいる体が石でできた鳥を見せてくる。徴収バードと呼ばれた鳥は、見た目はフクロウだが、ガーゴイルらしく石の灰色をベースに黒い毛が差し込み、大きくてまん丸な目は白目ではなくオレンジ色に真っ黒な瞳、そして頭には猫耳のように見える羽角が特徴的な可愛らしいフォルムをしている。


「徴収バードってなんです?」


「名前の通り、あなた方の借金を回収して運んでくれる鳥よ。徴収日が近づいたらお知らせしてくれるし、もちろん回収もバッチリ! それだけでなく、借入残高照会や新しい商品の宣伝なんかも教えてくれるのよ。おまけに目覚まし機能も付いているわ」


 カゴの中にいる徴収バードを覗き込んで、目を輝かせているオレガノをクミンは呆れた顔で見ながら説明を聞く。


「ようは、取り立て、回収と監視役ね。もちろん徴収バードを手にかけたらどうなるかは……言わなくても分かってるわよね?」


「ええ……分かっています」


 笑顔で脅しをかけるアンジェリカに、クミンがぶっきらぼうに答える。


「アンジェリカ、コヤツの名前はなんていうのじゃ?」


「その子の名前は、サフランよ。可愛がってあげてね」


「おぉ〜、お前はサフランと言うのじゃな。よろしくなのじゃ」


 オレガノが声をかけるが、サフランはつぶらな瞳のまま首を傾げ、石の翼をくちばしで撫でて毛づくろいを始める。


 そんな様子を横目に、借用書にサインを書こうとしたクミンが手を止める。


「いや、ちょっと待ってください。なんでうちが、ダンジョン作成費の借金をしているんですか? これはオレガノ様の借金ですよね」


 クミンが睨むと、オレガノは怯えた表情で目を潤ませる。


「オレガノは小さいからダメよ。可愛い娘のために保護者のクミンが借金するのは当然でしょ」


「いや、うちはオレガノ様の親ではなくて━━」


「分かってるわよ。でも今はあなたの方がオレガノを見守ってあげているんでしょ。それなら保護者で間違いないわよ」


 反論する間もなく言い包められたクミンは、心配そうな表情をするオレガノを見て、ため息を一つつき借用書にサインをする。


「金利が0.3パーセントなので総額13,039,000と。25年ローンで月々43,000エンのお支払だけども、初年度だけは、約54,575エンになるから気をつけてね」


「うう……頭痛が」


 具体的な数字を言われ頭を抱えるクミンの頭に、鳥かごから飛び出してきたサフランがとまる。そして借用書をジッと見つめたあと、くちばしを大きく開く。


「借入残高13,039,000! これから25年、ちゃんと働いて、耳揃え返済頑張ろな! よろしくな、クミン!」


「あぁ〜、なんか取り返しのつかないことしてしまった気がぁ……」


 徴収バードの初仕事である、一鳴きにクミンは頭を抱えブンブン振りまわす。

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