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アンジェリカは目をつぶって額を押さえる。
「なんで6000エンで、ダンジョン経営をしようとしたのか聞きたいものね」
ごもっともな意見にクミンは小さくなってしまう。
「バーンと儲かりそうだったからじゃ! なにより楽しそうじゃし、余もダンジョン経営してみたかったのじゃ!」
クミンとは対照的に、胸を張って答えるオレガノにアンジェリカは、顎に手を当て考え始める。
「う〜ん、ポテンシャルはいいのよね。そうね、『魔王の真核』を取り出せる? それを担保にすれば2000万くらい差し引いて、約800万の借金でダンジョン作るってことにしてもいいわよ」
「わーい、やるのじゃー」
「かるっ!?」
アンジェリカの提案にあっさり乗るオレガノに、クミンが呆れた声を上げる。
「いやちょっと待ってくださいよ。そもそも『魔王の真核』って大事なものじゃないんですか? 動いてないとはいえ、二千万もの価値があるならその2000万をもらった方がいいのではないでしょうか?」
「あまいのじゃクミン。2000万をもらってホカホカご飯やフカフカのベッドを手に入れたとしても、あとは使ってただ減るだけじゃ。だが2000万を使ってさらなる富を生み出せば、もーっとご飯はホカホカ! ベッドはフカフカになるのじゃぞ‼」
「いや、それはただ熱くなったり、柔らかくなってるだけでは……」
熱く語るオレガノに冷静にクミンが突っ込むと、オレガノは指を人さし指を立ててチッチッと言いながらニンマリと笑う。
「クミンはロマンがないのじゃ。余の持っている『魔王の真核』でダンジョン経営ができる、ならやるしかないのじゃ!」
「……それは目的と手段が入れ替わってませんか?」
激しく言葉を交わす二人にアンジェリカが割って入る。
「ちなみにだけど、『魔王の真核』をその値段で担保にするのは私だからこそよ。確かにそれ自体に価値はあるけど、2000万も出すのは私が、魔王オレガノのファンだったから。ってのを伝えておくわ」
アンジェリカの言葉にクミンが固まる。
「つまり『魔王の真核』を別の場所に持っていってもその金額は出ないと」
「それに、余しか『魔王の真核』は取り出せんから、最終決定権は余にあるのじゃ」
「まぁ、所有者に決定権はあるのはそうなんですけど……分かりました。反対ばかりしても仕方ないので、うちもダンジョン経営を手伝います」
クミンの宣言を受けて、両手を上げてぴょんぴょん飛びながら喜びを露わにするをオレガノを、クミンは優しさの混ざる呆れ顔で笑う。
「ところで、アンジェリカ様はなぜオレガノ様を魔王だと言い切れるのですか? うちたちが嘘をついている可能性もあるわけじゃないですか」
「様とかやめて、アンジェリカでいいわ。そうね、この世に魔王は数人いて、その中でも最強四人の一人であり、極悪魔王のオレガノ。でも実態は純粋に力を求め無邪気かつ、仲間思いな魔王だと昔見たとき私は感じたわね」
アンジェリカはオレガノを手招きして呼ぶと、オレガノの頭を撫でる。
「なんじゃ、余は子供ではないのじゃ」
怒りながらも、頭を撫でられ気持ち良さそうに目を細めるオレガノを見てアンジェリカは微笑む。
「うまく言えないけど、今のオレガノからもそれを感じるのよね。それに、この幼さで『魔王の真核』を持っているのも元魔王だと言える証拠となるんじゃないかしら?」
「う、うむぅ……確かに」
納得してしまったクミンが腕を組んで唸っていると、オレガノが自分の胸に手を当てる。
黒い光がポンと弾けると、オレガノが自分の胸の前でグッと手を握る。その握った手を差し出すと、アンジェリカの掌の上に置く。
オレガノが小さな拳をそっと開いて手をのけると、掌に残されたものをアンジェリカは見つめる。
涙、または雫のような、ドロップ型にカットされた宝石のようなものをじっと見つめるアルシテクトは、ふと笑みを浮かべる。
「綺麗な形をしてるわね。形に性格が出るって噂もあるけど、嘘じゃなさそうね。これだけ綺麗なら2000万の価値はあるわね。それじゃあ早速、ダンジョンの作成にとりかかりましょうか」
アルシテクトが立ち上がると、オレガノは全身をぴょこぴょこさせ喜びを露わにする。
「クミン、早く行くのじゃ!」
自分のスカートを引っ張るオレガノを見て、クミンはふと笑みを浮かべる。
「ええ、行きましょう」
クミンとオレガノは、アンジェリカの案内で施設の地下へと向かう。




