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巨大な魚の周りに木の枝を敷き詰め、クミンが指先から出した火で着火し魚を焼く。バチバチと音をたて、表面の皮を縮めながら焼かれていく巨大魚の近くでは、小さな魚に木を削って作った串を刺そうと奮闘しているオレガノの姿がある。
口を尖らせて必死に串を刺すオレガノをクミンはじっと見守る。やがて魚の口にぶすりと刺さると、ぶらぶらと不安定な魚を掲げて満面の笑みをクミンに向ける。
その笑顔に微笑み返したクミンは、不安定な魚を受け取ると、焚火の近くにそっと立てる。そして、クミンが串を通した残りの魚を近くに立てていく。
バチバチと音をたて焼ける魚を二人は膝を抱えて見つめる。
「これからどうしましょうか。ピッケルや釣竿を買ったせいで、所持金はもう二千エンしかありません」
「うむぅ……失った釣竿を探しに行こうにも、禁じられた漁法をしたせいで、警戒されている今、川に戻るのも危険じゃしのぅ」
「ふぅー」と大きなため息を二人は同時につく。
「もっと楽して、どーんとお金稼げませんかね」
クミンが魚の向きを変え焼き加減を調整しながらポツリと呟く。しばらく火と焼ける魚を見ながら無言の二人だったが、クミンがふとオレガノを見て口を開く。
「そう言えば、オレガノ様は魔王だったときどうやって稼いでいたんですか? やっぱり村や町を襲って人間から金品を奪っていたんですか?」
クミンの質問にオレガノは腕を組んで思い出すような素振りを見せる。
「余が直接やっていたわけではないが、基本は貿易や商売。つまりは人間と同じじゃ。まあ、魔族として人間に圧をかけて有利に差し向けることはあったと聞いてはおるのじゃ」
「はぁ~、今の現状、貿易とかそんなこと言えるレベルじゃないですものね。明日食べるものすら怪しいのに」
クミンは肩を落として落ち込む。
「そもそも、村や町を襲っても一瞬だけお金が入るかもしれんが、持続性がないのじゃ。軍を出すのもタダじゃないし、人間全員から恨まれ通常の業務もままならん。だからそんなことしては生計なんて立てれんのじゃ。人間から奪うなら……」
話しの途中で言葉を切って、なにかを思い出したオレガノがポンと手を叩く。
「そうじゃ! よくよく考えたら余たちは魔族なのじゃ。人間の稼ぎ方に合わせる必要はないのじゃ!」
突然立ち上がったオレガノをクミンは見上げる。
「なにかいい方法があるのですか?」
「ダンジョンじゃ! ダンジョン経営というものがあっての。ダンジョンに眠る宝を求めてやって来た人間どもの金品や装備を奪って稼ぐちょろい商売があるのじゃ」
「え? ダンジョンって自然にできるものじゃないんですか?」
「あんなもの自然にできるわけないのじゃ。100パーセント人工物なのじゃ。もちろんこれは一部の者しか知らんのじゃがな」
はじめて知ったと驚くクミンに、両手を腰に当て胸を張るオレガノがニンマリと笑う。
このときクミンは、はじめてオレガノに魔王らしさをほんのり感じたのだった。




