[EPISODE2]CHAPTER4-READY
悪意の雨が降る中、反撃の狼煙が上がる。
◇
〔THE CITY|中央島|北区|ヴァレス三丁目|都市警察CPD中央島北署三階・ラウンジ|AM 00:30|ゴウリュウ〕
ガチャリと音を立ててラウンジの扉が開く。
「遅かったかな?」
アルフィンがラウンジの中に入ってくる。
「いや、問題ない」
二階堂は気にしない様相で答える。
「アルフィン捜査官、久しぶりね」
「フィリーちゃん、久しぶり。そんなにかしこまらなくてもいいわよ。それにもう捜査官じゃないから」
◇
アルフィンにこれまでの経緯を伝え、今後の方針を話し合うことになった。
「隠れ家から発見したファイルには複数のCD-Rが入っていた。だが中身は暗号化されていて俺たちじゃお手上げだ」
二階堂はテーブルの上に隠れ家から発見したファイルと中に入っていたCD-Rを並べる。
「ディスク媒体すらレアものな現代だけど、幸いにも都市警察は備品にUSB接続が可能なディスクドライブが残存していたわ」
フィリスはノートPCとUSB接続が可能なディスクドライブをテーブルの上に置く。
「奇跡的ね。私が居た頃と変わってないわね」
アルフィンはノートPCにディスクドライブを接続し、CD-Rを入れる。
「あー。これ、特別捜査部隊専用の復号化ソフトが必要なタイプだわ。この復号化ソフトは捜査員ごとに専用で用意されるから私たちじゃお手上げね」
アルフィンは両手を挙げて降参のポーズを取る。
「なるほどな。となると【メイベル】の奴に連絡を入れるか」
二階堂はリングフォンを操作し、馴染みのハッカーである【メイベル・リン】に電話をかける。
◇ー◇
メイベル・リン / Mabel Ling
性別:女
年齢:20代
職業:情報屋 兼 ハッカー
特記:元・台華国軍情報部情報官
◇ー◇
『メイベルよ』
「俺だ。要件を手短に言う」
二階堂はこれまでの経緯をメイベルに説明する。
『分かったわ。これから仕事を始めるわ』
そういうな否や、テーブルの上に置かれたノートPCの画面が勝手に動き出した。フィリスはそんな状況にただただ驚いていた。
「IPアドレスを教えてないのに何で警察のノートPCに侵入できるんだか毎回不思議に思うぞ」
『そんなに不思議でもないし難しくもないわよ。リングフォンもPCもこの街で使われている通信機器は全て【都市ネットワーク】に繋がれている。ニカイドーのリングフォンから近くのノートPCに繋げるなんて造作もないわ』
二階堂の疑問にメイベルはサラリと答える。
『はい、接続完了。ちょっとダウンロードに時間がかかるけど……復号含めて二時間前後って所かしらね?』
「わかった、あとは任せる」
『終わったらまた連絡するね』
◇
〔THE CITY|中央島|北区|ヴァレス三丁目|都市警察CPD中央島北署三階・ラウンジ|AM 00:57|ホウシン〕
「さて、メイベルの奴が復号化を進めている間に方針を決めておきたいが――」
「出所に関する情報が出た場合は【SWEEP】と特別捜査部隊の合同作戦で行くことになる可能性は高いわ。そうなった場合だけどアルフィンさんとニカイドー君にはバックアップを頼みたい」
フィリスはテーブルに人差し指をトントンと叩きながら二階堂とアルフィンに頼む。
「――了解、アルもいいな?」
「もちろん。元だけど都市警察特別捜査部隊捜査官として見過ごすわけないわ」
進まない……話が進まない……