[EPISODE2]CHAPTER3-RAID
雨は降る。
いつまでも降る。
◇
〔THE CITY|中央島|北区|モードル一丁目|バーネットアパートメント401号室書斎|PM 11:56|ハッケン〕
「こっちは何もない、そっちはどうだ?」
「こっちもよ」
二階堂とフィリスは本棚、ラック、デスクトップパソコンなどを調べたが一向に何かしらの証拠の発見には至らなかった。
「となるとあとは机だけだな……」
二階堂は書斎に鎮座していた机に目を向け、引き出しを一つ一つ確認していく。
「……ん?」
「どうしたの?」
二階堂は引き出しの一つで何かに気づいた。
「この引き出しだけ……微妙に底が浅い」
二階堂はより注意深く観察し、そして引き出しの裏側に小さな穴があるのを見つけた。
「なるほど……昔の漫画にあった二重底の手法を取るとは」
二階堂は机の上に置かれていたボールペンを手に取ると、すぐさま分解し、ボールペンの芯のプラスチック側を穴に差し込む。引き出しの底が上がった。
「その漫画、私も読んだことあるわ。まさか実際にやる人がいるなんて」
フィリスは呆れながらも底の上がった引き出しを見る。
「ニカイドー、大当たりよ」
フィリスは底の下に隠されたファイルを手に取る。
「よし、署に持ち帰るか」
「ええ」
◇
〔THE CITY|中央島|北区|モードル一丁目|フィンクス通り|AM 00:00|キョウシュウ〕
フィリスが運転する警察用の防弾車の中で、二階堂はふとバックミラーを見る。バックミラーには黒いワゴン車が追ってきていた。
「フィリス、気づいているか?」
「ええ、隠れ家から出てからずっと追いかけてきてるわね……」
二階堂は素早くG18を準備する。
「いざってときは俺が迎え撃つ、フィリーはそのまま運転を頼む」
「了解」
直後、黒いワゴン車のパワーウィンドウが開かれ、中から短機関銃【MC10】を乱射し始めた。
「やっぱり! フィリー、そのまま署まで逃げてくれ。俺は反撃に出る」
「もちろん」
二階堂はG18のセレクターを単発から連射に切り替え、黒いワゴン車に向かって乱射して応戦する。
「やっぱ片手じゃ制御しづれぇ。フィリー、確か車に散弾銃が備えられていたな?」
「後部座席の下に備えているわ。散弾も一緒にね」
二階堂はそれだけを聞くや素早く後部座席に潜り込み、自動散弾銃【FSP12】を手に取る。
「悪いが使わせてもらう!」
「気にしないで!」
FSP12に散弾を込め、後方からくる黒いワゴン車のタイヤに目掛けて引き金を引く。
放たれた弾丸がタイヤに着弾し、タイヤは大きな音を立てて破裂した。そしてバランスを崩した黒いワゴン車は、そのまま転がり爆発炎上した。
「一台潰したがまだ来るぞ!」
「しつこい連中ね!」
爆発炎上した黒いワゴン車の後方からさらに二台の黒いワゴン車が追いかけてきた。
その時、警察用の防弾車に備え付けられた無線機の赤いランプが点滅する。
「こちらマーキュリー、どうぞ」
『こちら北署本部、そちらの姿を視認した。これより支援に入る、どうぞ』
「こちらマーキュリー。了解したわ、アウト」
通話を切った直後、銃声と共に後方にいた黒いワゴン車のフロントガラスにヒビが入った。次の瞬間には大きくスピンしてもう一台の黒いワゴン車を巻き込んで盛大に激突した。
「さすが、北署の狙撃部隊。相変わらずの腕前ね」
だめだ、全然進まない……